2、3年前から独身の友人の間で話題になっていました。ただその当時は、「卵子凍結なんてものがあるのだな」くらいの感覚で、具体的な検討には至りませんでした。また半年くらい前にパートナーとの将来をイメージし始めたので、卵子凍結は見送ろうかと思っていたのですが…

なにか、卵子凍結を意識するようなお気持ちの変化があったのですね。

体のことで、たまたまパートナーと私の両方に検査が必要になったことがあったんです。そちらは幸い大丈夫だったのですが、「自分の意志だけではどうにもならないことがあるのだな」という発見があって。
ふと、今できることをしておくことの大切さを意識するようになりました。

「今できることを」。その発想が卵子凍結の検討を進めたのですね。

40歳が見えてきたタイミングでしたし、やはり将来が予測できないことを実体験をもって意識し始めたのが大きい。今やっておくべきことの一つに思え、あまり迷わず決断しました。

クリニックと保管方法の二つを検討する必要があり、そのパターンはさまざまなのですが、どのように決めていきましたか？

私の場合は、先に保管方法を決めました。卵子凍結をする意志を固めた時、すでにいろいろと調べていた友人からグレイスバンクを勧めてもらったんです。その友人の検討プロセスには納得感があったので、グレイスバンクに決めました。

ご友人を信頼されたんですね。あまり迷われなかったのでしょうか？

正直、他の選択肢とじっくり比較したわけではありません。ただ、友人の人間性はもちろん、まだあまり情報がないなかでシェアしてくれた内容は信頼できましたね。あとは、人によって状況や価値観が異なるなかでいうと、多方面にわたって調べすぎると躊躇したのではないかと思います。

グレイスバンクでの保管を決めたあと、クリニックはどのような観点で検討されましたか？

不妊治療の実績と「通院のしやすさ」です。そこで二つに絞りました。結果的には両方に伺う前に、一つめのクリニックに決めてしまったんですけどね。

費用面の比較はされたのでしょうか？

ある程度は調べましたが、最終的には割り切りです。オプションの有無なども考慮すると細かな違いはあれど、どのクリニックを選択しても極端に異なるものではないと思われました。
仕事も忙しいなかで短期間に数回通院することを考えると、コストパフォーマンスを追求するよりも利便性を優先した方が、私には合っていたんです。

クリニックに相談に行かれてから実行まで時間を開ける方もいますが、どうされましたか？

相談に行ってからは、すぐに実行しました。それこそ先々の予定まで完全に予測できないので、一度決めたら、できるタイミングでしておこうと。
生理周期に合わせておこなうことですから、機会は1ヶ月ごとにしか訪れません。仕事がより忙しくなったり旅行に行くなどとなると、あっという間に半年後とか、どんどん先送りになってしまいますよね。

一つめに相談に行かれたクリニックで即決したのはどうしてですか？

相談時にとても丁寧にサポートいただけたからです。卵子凍結をいざ実行するうえで最も気にしていたのが、「スケジュールをこなせるかどうか」でした。そんな中で看護師さんがさまざまなパターンのスケジュールを作ってくださったので、行動に移す覚悟ができました。

お仕事がお忙しい中で懸念されていた、スケジュールの調整はうまくいきましたか？

年末年始の休暇期間を利用できたのは大きかったと思います。先に卵子凍結をした友人によると、その方はゴールデンウィーク期間にかぶせたことで仕事がある日に通院する回数が減らせてよかったという話もあったので、参考に。仕事が始まってからは有休とリモートワークを活用してやりくりしました。

検討中の方が気にされるポイントの一つに「自己注射」がありますが、いかがでしたか？

私もやる前はとても怖いと思っていたのですが、蓋を開けてみると私にとってはそれほど怖がるものではなかったです(笑)。注射を保冷しておく必要や、私の場合は注射を打つ時間も決められていたので、そういった制約はありましたが、痛みは大丈夫でしたね。

副作用や、採卵後の体調はいかがでしたか？

採卵手術後含め、期間を通じて体調は良好でした。一つあるとすれば、採卵前後はお腹が張って、空気が入っているような感覚に。いつものズボンが入らなくなりました(笑)。私の場合はAMH(※)値が高めなこともあって卵子が比較的多く育ち、卵巣が大きくなっていたとのことです。

卵子凍結を終え、お気持ちの変化はありましたか？

卵子凍結が将来を確実にするものではないことを差し引いても、今回やれて良かったと思っています。例えばパートナーとの結婚や妊活を含め、あらゆることは自分だけで進められるとは限りませんが、卵子凍結ではそれができた。自分のために決めたことを、周囲の影響を受けずに実行できたという意味での、自己効力感があります。

排卵誘発などの医療がネックになり見送る方も実際周囲にいますし、しないという判断も全然アリですよね。ただこればかりは後でやりたいと思っても元に戻れないので、「少しでも未来の自分がやってよかったと思いそうか」という観点で一度検討してみると良いかと思います。

そのうえでもし、自己注射への恐怖やスケジュール調整の手間“のみ”がハードルなのだとしたら、どんどん先送りにしてしまうのはもったいないかもしれません。

たしかに卵子凍結には事前に詳細を知ることで“おっくう”になる要素がいくつかあります。だからこそ、私には今回のようなスピード感が必要でした。どのタイミングで誰を信頼するかの見極めが肝心なのではないでしょうか。