卵子凍結の「メリット・デメリットは?」「費用は?」「痛みは?」…気になるアレコレや、ご質問の多い内容についてご説明をさせていただきます。実際に卵子凍結をされた方の痛みについてのアンケート結果や感想もご紹介しますので、ぜひ卵子凍結を具体的にイメージするのに役立ててください。
目次
今、大変注目を集めている「卵子凍結」のメリット・デメリットは?
卵子凍結とは、若く妊孕性の高いうちに卵子を凍結保存し、将来の妊娠(体外受精)確率を高める方法として注目を集めています。
参考)Grace Bank「卵子凍結の意義と可能性とは(動画)」
参考)公益社団法人 日本産婦人科学会 ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ
卵子凍結のメリット
卵子凍結のメリットは2点考えられます。
- 将来の妊娠確率(体外受精の成功率)アップ
- 不妊治療より費用が抑えられる可能性が高い
将来の妊娠確率(体外受精の成功率)アップ
まず、「将来の妊娠確率(体外受精の成功率)アップが期待できること」があげられます。これは、卵子が若ければ40代の体外受精による出産率は20代と変わらないこと(米CDC 2021)が下記の表からも分かります(※1)
※1 自社HPより抜粋(https://gracebank.jp/guide/#p_guide03)
不妊治療の費用が抑えられる可能性が高い
また、「不妊治療の費用が抑えられる可能性が高い」ということです。卵子が若い方が流産率も低いため、結果として妊娠・出産に至る確率も凍結卵子を使用した不妊治療の方が高くなるからです。
卵子凍結のデメリット
次に、卵子凍結のデメリットは3点あげられます。
- 費用が全額自己負担で経済的な負担がかかる
- 採卵などの医療行為で身体的な負担を伴う
- 年齢制限がある
費用が全額自己負担で経済的な負担がかかる|東京都では卵子凍結の助成を開始
卵子凍結は基本的に全額自己負担となっていて、採卵・凍結費用は『麻酔なし、成熟卵9個を凍結・保管した場合』に約40万円+保管費が1年あたり3万円ほどかかります。
ここ数年で、卵子凍結にかかる費用を、国や自治体が助成する動きが活発化しています。2023年9月、東京都は、健康な女性が将来の妊娠に備えるための卵子凍結(=社会的卵子凍結)にも助成金を出す方針について発表し、卵子凍結費用を1人あたり30万円程度助成することを発表、令和6年度も継続が決定しました。
採卵などの医療行為で身体的な負担を伴う
身体的な負担については、不安に寄り添ってくれる医療機関を選ぶといった方法も可能です。卵子凍結の痛みは主に4つです。
- 各種検査
- 排卵誘発
- 採卵
- 体外受精の胚移植
排卵誘発では本人の意思を尊重して注射や内服薬を選べる、採卵では痛みの少ない細い採卵針の使用、などの負担の少ない処置を心掛けている医療機関もあります。
グレイスバンクユーザー71名に行ったアンケート調査では、痛みレベルを5段階(※1)で評価する設問では、レベル2と答えた方が最も多く、1~3と評価した方が約6割となりました。痛みが原因で卵子凍結を躊躇されている方も多いなか、実際は小~中程度の痛みと感じられた方が半数以上でした(痛みの感じ方は個人差があります)。
(※1)1が痛みを感じなかった、5が痛みを感じた、の5段階での選択式
年齢制限がある
卵子の凍結保管自体は半永久的に可能と言えますが、加齢による卵子の質の低下や母体の妊娠出産のリスクを考えて制限があります。卵子凍結の年齢制限は採卵が40歳前後、保管できるのが50歳前後までとなっています。
年齢制限については、卵子の質や母体の健康のために設定されたものなので、1歳でも若く卵子凍結をした方がよいと捉えてください。理想は20~30代前半までの卵子凍結をおすすめします。
また凍結卵子を使用した体外受精は、母体や胎児の妊娠出産リスクを考えて、45歳前後までに行う方が良いでしょう。
卵子凍結の流れは?
大きな流れとしては、以下のとおりです。
- 診療・検査
- 排卵誘発
- 採卵
- 卵子凍結・保管
これらは、不妊治療クリニックで行うのが一般的です。以下、具体的にみていきます。
診療・検査
採卵前の検査には、血液検査、超音波検査、尿検査などがあり、ホルモン値、卵巣機能、卵管の通り、卵子の数(AMH値※2)などを調べます。また、生理周期(月経期・卵胞期・排卵期・黄体期)にあわせて、さまざまな検査を複数行います。
※2 AMH(アンチミューラ管ホルモン)検査とは、卵巣の中に卵子がどのくらい残っているかを調べるための血液検査のこと。「卵巣年齢を計る検査」ともいわれる。AMHが高いと、これらが育つ卵胞が卵巣内にまだたくさんある状態、値が低いと卵胞が少なくなってきている状態ということ。
排卵誘発
質の良い卵子を複数採取するため、排卵誘発剤を使用して、多くの卵子を成熟させます。方法は、注射や内服薬など様々ですが、年齢、卵巣機能、体への負担や希望なども考慮して、その人に合った方法により行われます。
一例として、グレイス杉山クリニックSHIBUYAでの、排卵のやり方を抜粋してご紹介いたします。
「卵胞の大きさと(18~20mm程度)、女性ホルモンの値、の値を考慮して総合的に判断し採卵日を決定します。排卵日が決まったら、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)を注射もしくはGnRHアゴニスト製剤を点鼻して人為的にLHサージを起こし、卵子を成熟させ排卵を促します」
※参考HP
採卵
膣に超音波機器をいれて超音波画像を見ながら、卵巣のなかの卵胞に針をさし、卵胞液とともに卵子を吸引・採取します。クリニックにもよりますが、一般的に、排卵誘発の注射後約34時間から37時間以内に卵子を採卵します。採卵は時間にしては10分から15分くらいで終了します。
卵子凍結・保管
耐凍剤濃度の高い溶液に卵子をひたし、マイナス196℃の超低温で凍結します。液体窒素タンクのなかで保管するため、何十年も状態変化なく保存ができます。
卵子凍結までにかかる通院回数や期間は?
卵子凍結の採卵のスケジュールは、下記の5つのプロセスに分かれます。
- 卵子凍結の説明会への参加
- 初診での問診や検査
- 月経開始後、採卵に向けて注射を開始
- 採卵日を決定
- 採卵し、卵子を凍結保存
卵子凍結には2週間程度の時間がかかります。採卵までの検査のために1回は事前に来院していただく必要があります。排卵誘発から採卵までにかかる期間は卵胞の育ち方などによって異なるため人それぞれですが、早い方ですと10日程度、遅い方で14日程度です。1回の採卵に必要な通院回数は約3~4回です。採卵の日は半休取得もしくは全休をお勧めしております。
回数 | 所要時間 | 時期・内容 |
初回 | 約1時間 | 月経の3日目以内にご来院いただき、採血と超音波で卵巣の状態を確認し、卵胞の刺激方法の選択を決定します。 |
2回目 | 約1時間 | 月経7~9日目頃です。採血と超音波で卵胞の発育具合を確認して薬剤の量を調整します。 |
3回目 | 約1時間 | 月経10~12日目頃です。採血と超音波で卵胞の発育具合を確認して採卵日を決定します。 |
4回目 | 午前中いっぱい | 月経12日目頃に採卵日となります。 |
実際に凍結卵子保管サービスのグレイスバンクを使って卵子凍結をされた方のスケジュールをご紹介します。
プロフィール
- お名前:Aさん(都内在住)
- 採卵時の年齢:34歳
- 職業:会社員(職種:IT系企業の会社員、フルタイム・フレックス制度あり)
Aさんの採卵スケジュール(期間24日間、通院回数4回)
主に半休やフレックスを使用しました。卵子凍結をすることを会社の上司にも伝えたうえで、リモートワークを利用してスキマ時間に通院しました。職場から近かったお陰で、お昼休憩中にパソコンを持って移動し、診察待ちのときに仕事をする、診察が終わればすぐに職場に戻る、ということができたので良かったです。
卵子凍結をするのはできるだけ若い時の方が良いと、30歳くらいのときに参加したセミナーで聞いていたので、34歳になることを期に卵子凍結をすることを決意しました。安い買い物ではないので私も躊躇しましたが、お金はまた頑張って稼げば返ってくる、と割り切って実施することを決意しました。実際、卵子凍結をしたことで気持ち的にも余裕が生まれ、よりやりたい仕事ができたり、結果的に収入が増えるといったことにも繋がりました。
卵子凍結したからといって誰しもが良い方向に物事が進むわけではないと思いますが、私は何よりも精神的な余裕が持てるようになったことが最大のメリットでした。
来院時に必要な持ち物は?
本人確認のための顔写真付きの公的身分証明書や健康保険証を持参する必要があります。
卵子凍結は原則、自由診療となりますが、診療するうえで保険診療が必要となった際に提出する必要があります。
また未婚かどうかの確認のために戸籍謄本の提出を求められるクリニックもあります。
卵子凍結にかかる費用は?
費用についても、大きな関心事であると思います。だいたいの相場は、1回の検査・採卵・凍結費用は30~50万円、また保管費用は年間3~5万円が相場といわれています。
ご参考までに、弊社で卵子をお預けいただく場合の料金をご紹介いたします。
クリニックへのお支払い
1回の検査・採卵・凍結にかかる費用:30~50万円程度(*クリニック毎に変動あり)
採卵できた卵子の個数で費用は変わるの?
卵子凍結は、①採卵準備⇒②採卵⇒③凍結⇒④保管⇒⑤出庫のステップに応じて費用がかかります。
各クリニックによって異なりますが、採卵準備から凍結の費用は、卵子の個数によって料金が変わるようです。
渋谷駅から徒歩4分、宮下公園向かいのcocotiビル5階にあるグレイス杉山クリニックSHIBUYAでは、各種検査、排卵誘発剤、局部麻酔、採卵・凍結費用を含む未受精卵凍結(卵子凍結)について、凍結する卵子の数に関わらず、一律38万円(税込価格41万8千円、初回採卵時)のパッケージ料金で提供しています。
さらには、2023年12月1日より凍結個数に応じた返金プランがスタートし、採卵終了後、凍結個数が5個以下だった場合には、採卵日に5万円の返金があります。
料金はこちら⇒https://grace-sugiyama.jp/price
※凍結する卵子の数で金額変更はありません。
※初回の採卵費用。2回目以降の採卵料金は、卵子5個以下の凍結で25万円(税込27万5千円)、6個以上で30万円(税込33万円)
※ 採卵時に全身麻酔を行う場合は、別途5万円(税込5万5千円)
Grace Bankへの年間保管費用
初回の採卵で十分な数の卵子が採れた場合には、初年度費用(採卵・凍結にかかる費用と保管費用)でおよそ43~53万円程度、次年度以降は毎年33,000円〜49,500円の保管費用(税込、卵子15個まで)がかかることになります。なお、2回目以降の採卵の場合には、上記初期費用以外の採卵・凍結にかかる費用(およそ30~40万円)と毎年33,000円〜49,500円(税込)の保管費用が追加で発生することになります。
- 初期費用:55,000円(税込)
- 保管費用:月額3,850円または年額38,500円(税込、卵子15個まで)
卵子凍結Q&A
卵子凍結について、よくあるQ&Aをご紹介します。
Q1:独身ですが、将来の妊娠出産にそなえて卵子凍結保存はできますか?結婚していないとできないのでしょうか?
将来に備えた卵子凍結保存は、独身でも可能です。妊娠確率を高めるためには、1歳でも若く妊孕性(妊娠できる力のこと)の高いうちに卵子を凍結保存しておくのがおすすめ(理想は20~30代前半までの卵子凍結)です。
Q2:妊娠に必要な卵子の数は?1回の採卵で目標の数が取れなかったら?
卵子の状態は実際に採卵しないとわかりません。採卵した直後の卵子は以下の3つに分類され、このうち卵子凍結できるのは成熟卵子のみです。
成熟卵子 | 35歳以下の場合、採取された卵子の90%程度が成熟卵と予想されます。 (個人差があり、未成熟卵も成熟卵と同様に多く取れてしまう方もいます。) |
未成熟卵子 | 採卵した卵子の10~15%程度が未成熟卵子です。 採卵後、数時間で成熟卵子になれば凍結保管が可能です。 |
変性卵子 | 受精能のない変性した卵子です。変性卵子は凍結保管できません。 採卵した卵子の5%以下ですが、38歳を越えると変性卵の割合が著明に増加します。 |
続いて、凍結卵子を使用した際の妊娠率を見てみましょう。
◆凍結卵子を融解した時の卵子生存の確率
- 融解後の卵子生存の確率・・・80〜95%
- その後、精子を注入した場合の受精率・・・60〜80%
◆未受精卵融解後に、卵子が生存、受精し、質が良好な受精卵が確保できた場合に、卵子10個あたりで妊娠できる確率
こちらは、採卵時の年齢により割合が異なります。
- 30歳以下・・・80%程度
- 31〜34歳・・・75%程度
- 35〜37歳・・・53%程度
- 38〜40歳・・・30%程度
- 41歳以上・・・20%以下
卵子凍結によって保存した卵子を使って妊娠・出産するためには、卵子と精子とを身体の外で受精する体外受精が必須となります。凍結した卵子は融解の過程で5~20%の割合で変性することもあります。また、融解後、精子と受精すると受精卵(胚)になりますが、その受精卵が良好胚に発育するとは限りません。良好胚が子宮に着床してはじめて「妊娠」となります。
卵子の生存率とその後の着床率を考えると、なるべく若い年齢で卵子凍結を行い、10個以上~できれば20個以上の未受精卵を凍結保存しておくことが望ましいということがわかります。
もし1回の採卵で目標の数が取れなかった場合は、採卵を1~2周期以降で再度行う事が可能です。
※参考:https://grace-sugiyama.jp/about_freezing
Q3:東京都に住んでいません。助成金以外に費用を抑えるポイントはありますか?
少しでも費用を抑える方法としては福利厚生制度の利用が挙げられます。
アメリカでは大手企業19%が「卵子凍結」を福利厚生にとりいれています。2014年のFacebook(現:Meta)での導入を皮切りに、卵子凍結費用の福利厚生としての補助制度の普及が進み、2020年には社員数2万人以上の企業の19%が導入しています。
また、日本受精着床学会のアンケート調査によると、将来に妊娠・出産をする可能性を考えて卵子凍結(社会的卵子凍結)を行った数は、2021年に全国で1,398件。同アンケートでは、がん治療や不妊治療のために行う医学的卵子凍結回数より、将来に備えて行う社会的卵子凍結回数の方が多いこともわかったとのことです。このことより、日本で「卵子凍結」の件数は増加していることがわかりますし、先ほどの東京都の動向なども踏まえますと、今後もますます普及する兆しを感じます。
データ出典:日本受精着床学会「日本受精着床学会会員の皆様へ(卵子凍結に関するアンケート調査に関しまして)」
グレイスバンクを利用し「卵子凍結」を福利厚生制度として導入した企業様の事例はこちらからご確認ください。
その他、グレイスバンクではベネフィット・ワンやリロクラブの会員様向けのご優待がございます。
【グレイスバンク体験談】となりの卵子凍結
Grace Bankでは、卵子凍結をした方の体験談を紹介しています。ここでは、卵子凍結の痛みに絞って、体験談を2つみていきましょう。
体験談1:痛みがとても苦手な方の体験談
35歳で卵子凍結を決断されたあすかさん。痛みが大の苦手とのことでしたが、豪華なランチなどでモチベーションをアップさせ、卵子凍結の痛みを乗り切られたそうです。
Q:痛みが大の苦手とうかがっております。卵子凍結で痛みを感じるとすれば、どのプロセスが該当しますか?
はい。それはもう、健康診断すら憂鬱なくらい苦手です(笑)。なので初診時に細かく質問し、結果、痛い可能性があるのは通院時の採血と、自己注射、採卵の3点だとわかりました。
このなかで採血だけは経験がある分ハードルは低いのですが、通院のたびに必要なので、通院日は少し豪華なランチをとってモチベーションを上げていました。
https://gracebank.jp/tonatama03/
体験談2:婦人科トラブル未経験の方の体験談
婦人科トラブル未経験の状態から、AMH検査の結果をきっかけに卵子凍結を決断したはみるさん。痛みは想像以下とのことでした。痛みの感じ方は個人差はありますが、こういった体験談は、これから卵子凍結するにあたり、励みなります。
Q:自己注射と採卵手術は大きなハードルだと思うのですが、感想はいかがでしょうか。
やる前はかなり怖かったのですが、どちらも痛みは想像以下でした。
自己注射については、「本当にできるのだろうか」と全く自信がなかったのですが、杉山産婦人科で処方されたものはかなり細く短い針。緊張はしたものの、ほとんど痛みは感じなかったです。針については、鍼灸のものをイメージしておくといいと思います。
採卵手術は間違いなく人生最高に緊張しました(笑)。局所麻酔で臨みましたが、こちらも結果として緊張の方が大きかったという感想です。今思えば採卵は体外受精と同様なので、先生がたは百戦錬磨なんですよね。そのことを意識できていればもっと緊張せずにすんだと思います。
https://gracebank.jp/tonatama01/
まとめ
現在は仕事を優先したいから、今のところ妊娠や出産を予定していなくても、いつかは…とお考えの皆さんにとって、ひとつの大きな選択肢となるのが卵子凍結保管です。妊娠力の高い良質な卵子を凍結保存しておくことは、将来の妊娠に備えた方法として効果的です。
Grace Bankでは、有名不妊治療クリニックとの連携、安心の保管システムを採用し、皆様の選択肢を大切にお守りいたします。ご質問、ご不明な点はGrace Bankまでお問い合わせください。
名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)
杉山産婦人科の医師・培養士による技術を用いた質の高い診療を提供。
将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
スタッフは全員女性。明瞭な料金設定も人気!