卵子凍結の準備中、パートナーとの性交渉は避けるべき?
採卵が終わったら、すぐに普段通りの生活に戻っていいの?
卵子凍結を始めると、生活のあらゆる場面で「これは大丈夫かな?」と不安になるものです。特に性交渉については、デリケートな話題ゆえに、クリニックの先生や看護師さんに詳しく聞きそびれてしまったという方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、採卵周期(刺激開始から採卵後数日まで)の性交渉には、医学的なリスクがいくつか存在します。 せっかくの卵子凍結を安全に、そして確実に成功させるために知っておきたいポイントを詳しく解説します。
目次
採卵前(卵巣刺激期間):なぜ性交渉を控えるべきなの?
採卵に向けて排卵誘発剤を使い始めると、卵巣の中では複数の卵子が同時に育ち始めます。この時期に性交渉を控えるべき主な理由は2つあります。
① 卵巣捻転・破裂のリスク
普段は親指大ほどの卵巣が、複数の卵子が育つことで数倍〜10倍近くまで腫れることがあります。この状態で激しい運動や性交渉による衝撃が加わると、大きくなった卵巣が根元でくるりとねじれてしまう「卵巣捻転」や、卵巣が傷つく「卵巣破裂」を起こす危険があります。これは激痛を伴い、緊急手術が必要になることもある重大なリスクです。
② 予期せぬ妊娠(多胎妊娠)のリスク
採卵は、排卵する直前の卵子を針で回収する処置です。しかし、刺激の影響で予定より早く排卵が起きてしまう(自然排卵)可能性や、採卵時に回収されない小さな卵胞から採卵後に排卵が起こる可能性があります。このタイミングで性交渉があると、意図せず自然妊娠してしまう可能性があります。しかも、複数の卵子が排卵されている場合、双子や三つ子といった多胎妊娠になるリスクが非常に高く、母体への負担も大きくなります。
採卵後:いつから性交渉を再開していいの?
無事に採卵が終わった後も、すぐに性交渉が「解禁」というわけではありません。
感染症のリスク
採卵は、腟壁を通して細い針を刺し、卵子を回収します。つまり、術後の腟内には小さな傷がある状態です。傷口が塞がっていないうちに性交渉を行うと、そこから細菌が入って「骨盤内感染」や「腹膜炎」を引き起こす恐れがあります。
性交渉再開の目安
一般的には、「採卵後、最初の月経が来てから」を再開の目安とするクリニックが多いです。
- 傷口の回復:数日〜1週間程度
- 卵巣の腫れの改善:次の生理が来るまで ※痛みの強さや卵巣の腫れ具合には個人差があるため、必ずかかりつけ医の指示に従ってください。
パートナーへの伝え方と心のケア
パートナーに「今はダメ」と伝える際、ただ拒絶するだけでは角が立ってしまうこともあります。
今は、将来の私たちの子供になるかもしれない大切な卵子を育てている大切な時期なの。卵巣が腫れていて、万が一捻転したら手術が必要になるかもしれないから、安全のために今は控えたいな。
このように、「自分の体を守るため=将来の二人のため」であることを具体的に伝えてみてください。現在、男性の妊活知識もアップデートされていますが、女性の体にかかる具体的なリスクまでは知らないことが多いものです。
まとめ:安全な卵子凍結が、未来の安心に繋がる
卵子凍結中の性交渉については、少しの間だけ「お休み」が必要です。それは、あなたが今、自分の未来のために一生懸命取り組んでいる「卵子凍結というプロジェクト」を、最高の形で完了させるための大切なステップです。
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名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)
杉山産婦人科の医師・培養士による技術を用いた質の高い診療を提供。
将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
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