卵子凍結を「やろう」と決めてから、実際にクリニックへ通い始めるまで。そこには、想像していなかった戸惑いや、思いがけない足踏みもありました。
第1弾では、大手メーカーでのキャリアを経て人事部で働く35歳女性・まきさんの決意の背景を。第2弾では、一度“見送り”となった紆余曲折のクリニック選びをお届けしました。
今回の第3弾では、いよいよ始まった自己注射の日々から、仕事の合間を縫って挑んだ採卵当日の裏側、そして12個の卵子を凍結保存した後に見えてきた「新しい自分」について伺います。揺れ動く体調と向き合いながら、納得のいく結果を手にするまでの、まきさんの等身大の記録です。
目次
「スケジュールの遵守」が一番のハードル。自己注射と向き合った日々

担当者
いよいよ自己注射の期間に入りました。痛みや精神的な負担はどうでしたか?
一番の不安だった自己注射ですが、実際にやってみると「思ったより痛くないんだな」というのが率直な感想でした。ただ、打つ場所によって感覚が違い、太ももは少し痛みを感じたので、私は主に痛みの少ないお腹に打つようにしていました。


それよりも苦労したのが、決まった時間に薬を飲むという徹底したスケジュール管理です。仕事中もスマホのアラームをセットし、飲み忘れがないよう常に気を張っていました。








生活面では、本来は身体を労り制限すべき時期だとは分かっていたのですが、どうしても外せない会食でお酒を飲んだり、週末にゴルフをしたりといった場面もありました。決して推奨される過ごし方ではありませんが、主治医と相談しながら、自分の責任で今の生活とのバランスをどう取るか、常に模索していた期間でしたね。
「数を狙うか、負担軽減を取るか」。医師との診察で得た納得感
担当者
診察のなかで、印象に残っていることはありますか?


岡田先生が私の身体の様子を細かく聞きながら、その都度、薬の処方を柔軟に変えてくださったのがとても心強かったです。








特に印象的だったのが、採卵に向けた方針の相談です。「お腹の張りが強く出るリスクを取っても、最大限の採卵数を狙うか」。それとも「採卵数はそこそこでも、身体への負担(張り)を抑えるか」。
先生がそれぞれのメリットとリスクを丁寧に説明してくださり、私の希望を汲み取った上で最適な処方を選んでくれました。
「ただ処置を受ける」のではなく、自分の身体の状態を知った上で、納得して選択できた。このプロセスがあったからこそ、その後のプロセスも前向きに乗り越えられたのだと思います。
「一生、同じ場所にいるとは限らない」。保管先にグレイスバンクを選んだ理由
担当者
今回、卵子の保管先として「グレイスバンク」を選ばれましたが、決め手は何でしたか?








採卵するクリニックだけでなく「どこで保管し続けるか」は、私にとって非常に重要なポイントでした。まず、将来的に「引越し」をする可能性がゼロではないと考えたからです。グレイスバンクなら全国の提携クリニックで凍結卵子を使えるネットワークがあるため、住む場所が変わっても安心だと思えました。





もう一つは、やはり「安全性」です。25年以上無事故という実績や、安全な移送方法、災害時も含めて最高水準の管理体制が整っていると知り、ここなら自分の大切な未来を預けられると確信しました。クリニックは「採るプロ」、グレイスバンクは「守るプロ」と、それぞれの強みがあることが大きな信頼に繋がりました。
採卵当日。直前までWeb会議、そして静脈麻酔の手術へ
担当者
採卵当日のスケジュールは、かなり仕事と密接だったと伺いました。





そうなんです。仕事でどうしても外せない会議があったので、直前まで自宅からWeb会議に参加していました。会議が終了してすぐにクリニックへ向かい、そのまま手術室へ。このスピード感で治療と仕事を切り替えられたのは、アクセスの良いクリニックを選んだ大きなメリットだと実感しました。



手術自体は静脈麻酔だったので、痛みは全くありません。眠っている間に終わっていて、まさに「あっという間」という感覚でした。目が覚めたあとにリカバリールームで出していただいたお茶菓子が本当に美味しくて、張り詰めていた緊張がようやく解けたのを覚えています。
「12個凍結」という確かな安心感と、身体の変化
担当者
採卵後の体調や、結果について教えてください。


採卵後もしばらくは投薬が続き、この時期がお腹の張りのピークでしたね。いつものタイトなパンツが苦しくて、ワンピースなどの「ゆるめファッション」を心がけて乗り切りました。



結果は14個採卵できて、最終的に12個を凍結することができました。実は1個、採卵時は未成熟だった卵があったのですが、夕方には成熟卵になったと聞いて……。目標にしていた10個を上回る数を保存できたことで、言葉にできないほどの達成感と安心感に包まれました。
「子供が欲しいか」はまだわからない。でも、未来が楽しみになった
担当者
卵子凍結を終えて、心境に変化はありましたか?








劇的に「今すぐ子供が欲しい!」と思うようになったわけではありません。今でもまだ、自分の未来に子供がいるかどうかは、正直よくわからないんです。





でも、この経験は「自分の人生をどう生きたいか」を真剣に考える大きなきっかけになりました。卵子凍結で「時間の猶予」を手に入れたことで、焦りからではなく、純粋に自分のアップデートに時間を使えるようになった気がします。「どんな人生になっても全力で楽しめる自分でありたい」と思い、最近は新しい資格の勉強も始めました。私にとって卵子凍結は、一人の女性として力強く生きていくための「最高のお守り」になりました。
卵子凍結を考えている人へのメッセージ
担当者
最後に、卵子凍結を考えている人へメッセージをお願いします。








卵子凍結を検討している皆さんの多くは、仕事と両立できるのか、身体への負担はどの程度なのかと、尽きない不安を抱えていることと思います。私自身、自己注射の期間中や採卵当日のスケジュール調整など、一つひとつのプロセスに緊張感を持って向き合ってきました。








この決断は決して「今すぐ答えを出すこと」を自分に強いるためのものではありません。「将来、子供が欲しいかどうかが今はまだ分からない」という素直な気持ちのままでも、未来の可能性を今のうちに凍結して守っておくことは、自分に対する最大の「優しさ」であり、未来への備えになります。





「可能性を残している」という確かな安心感は、焦りからくる不安を拭い去り、私に新しい挑戦への意欲をくれました。資格の勉強を始めるなど、どんな未来になっても人生を全力で楽しめる自分でありたいと思えるようになったのは、卵子凍結という選択を通して、自分自身の人生を主体的にデザインし始めたからだと確信しています。もし今、迷いの中にいるのなら、まずはAMH検査を受けてみて、自分の体を知ることをおすすめします。
全3回にわたってお届けしてきた、35歳・まきさんの卵子凍結ストーリー。いかがでしたでしょうか。
キャリアの真っ只中で「いつか」を「今」に変える決断をしたまきさん。12個の卵子という「未来へのお守り」を手に入れた彼女の表情は、どこか晴れやかで、新しい挑戦へと向かう力強さに満ちていました。
「子供を持つかどうか」の答えを、今すぐ出す必要はありません。 ただ、「選べる権利」を未来の自分に残しておくこと。それは、日々を懸命に生きる自分への、最高のギフトになるはずです。
もし、あなたが「まだ早いかも」「仕事が忙しいし」と迷っているのなら、まずは第一歩としてAMH検査(卵巣予備能検査)から始めてみませんか?
自分の体の現在地を知ることは、決して怖いことではありません。それは、誰のためでもない、あなた自身の人生を主体的にデザインするための「確かな地図」を手に入れること。
あなたの未来には、まだたくさんの選択肢が眠っています。その可能性を信じて、まずは小さなアクションから一歩を踏み出してみませんか。



