ドクターズインタビュー

【前編】岡田有香医師インタビュー|まず、自分の体をしっかり知ってほしい

6組に1組が不妊治療を受けると言われる日本。

妊活や不妊治療の現場の医師たちは、どんな想いを持って最前線に立っているのでしょうか。

普段は語られることがない、ドクターのパーソナルストーリー、第6話(前半・後半)は、2022年4月に開設される「グレイス杉山クリニックSHIBUYA」の院長就任予定の岡田有香医師です

岡田医師は、数々の不妊治療に挑む中で、大事に至る前の予防の大切さを訴えています。インスタグラムでも医師から見た正しい情報を積極的に発信中。(アカウント:dr.yuka_okada)

そんな岡田医師が、「しっかりと体の状態を知ることが大切」と話す思いを聞きました。

岡田有香医師
日本産科婦人科学会の専門医。2014年 順天堂大学医学部 卒業し、聖路加国際病院の産婦人科で8年勤務する。2020年、内視鏡手術支援ロボット「ダビンチ」first assistant認定資格を取得。2022年4月より、渋谷の「グレイス杉山クリニックSHIBUYA」で院長に就任予定。現在日本産婦人科学会、日本産科婦人科内視鏡学会、日本生殖医学会、婦人科腫瘍学会、日本女性医学会、NPO法人日本子宮内膜症啓発会議に所属

一人一人を助けたい

私は遺伝子に興味があって、遺伝子工学を学ぼうと思って理工学部に入りました。

しかし、入学してみると本当に研究職が向いているのか、悩む時期があったのです。そんな思い悩む時期に祖父が亡くなりました。自分は何もできず、本当に無力感に襲われました。

遺伝子工学で目指していたのは、がん治療の創薬で多くの人を救いたいという思いから。祖父が他界した経験で、目の前の人をケアしていくことが、自分にとってやりたいことなのだと気がつきました。

入学した理工学部を半年で休学して、順天堂大学の医学部に入り直したのです。

唯一「おめでとう」という場所

医学部に入学したものの、初めは基礎医学の学習ばかりで、すぐに知識を実践できるわけではありません。

暗記が多くなるのですが、私はそれまで数学、物理が好きで、暗記は苦手でした。なかなか最初は慣れませんでしたね(笑)

4年になると、病院で医師の後ろについて勉強するようになります。そのあたりからとても面白く感じるようになって、産婦人科に魅力を感じました。

というのも、出産が行われるところで、病院の中で唯一、「おめでとう」と言える場所だったのです。とてもハッピーな雰囲気があり、自分もこんな場所で働きたい、女性の体の一生に寄り添え、内科・外科を同時にできる科であることも魅力でした。

医師を目指す場合、大学を卒業してから2年間の初期研修に入ります。私はそこで、しっかりとした初期研修医のプログラムがある聖路加国際病院を選びました。

この研修が終わっても聖路加国際病院に残ったのは、ここでは産婦人科全般について満遍なく学べ、早くから腹腔鏡手術に携わることができるから。腹腔鏡を使って、今後の妊娠を考える人に対して、子宮内膜症や子宮筋腫の手術をすることに一番興味を持っていました。

腹腔鏡手術とは

腹部に3~4ヵ所の小さな穴を開けて、そこから腹腔鏡(カメラ)やメスなどを挿入。カメラからの映像をモニターで確認しながら、卵巣嚢腫や子宮筋腫などを取り除くことができます。皮膚切開が小さく、術後の経過が良いのが特徴です。

腹腔鏡の手術をする医師は、不妊治療に携わって、良性疾患の子宮筋腫や子宮内膜症を担当するのか、悪性疾患の卵巣や子宮がんなどを専門にするのか別れてきますが、私は子宮内膜症、子宮筋腫などで不妊治療に携わる方に興味がありました。

不妊治療に進みながら、腹腔鏡の手術もしていこうと思ったのです。

予防の大切さ

腹腔鏡は、テレビ画面という二次元のものを見て3次元で操作します。

鍛錬が必要で、手の感覚と目の感覚をすり合わせないといけません。それができるようになると、小さい傷で治療することができて、患者さんにも喜んでもらえる。

でも手術を続けていくうちに、子宮内膜症や、子宮筋腫になる前に治療できたり、気が付いたりすることが本当は大切なのではないかと思いました。

腹腔鏡で手術しないといけないレベルになると、手術によって卵巣が傷ついてしまったりします。

卵巣嚢腫(卵巣の腫れ)の大きさから手術をしなければならず、子宮内膜症を取ったのはいいけれど結局妊娠できないという現実はあまりにも辛い。できる限り卵巣にダメージを与えないような手術をしても、すでに妊娠が難しい状況になっているのは変わらないのです。

そこまでの大きさにならなければ、手術もしなくていい。不妊でも困らないかもしれない。

子宮内膜症という病気は、予防する方法があるのに知らない人が多い。手術に至る前に、予防的な知識を広められないか。そういった知識の啓蒙活動も含めて、私は不妊治療をやっていきたいと感じたのです。

自分も内膜症になったかも

私自信、23歳くらいから生理が重くなる経験をしました。

ちょうど研修医になるくらいの、25歳あたりからは痛みもひどくなってきたのです。長時間の手術に入ったり、緊急処置で手が離せないことも多い職場。痛みで仕事がはかどらないのも嫌だなと思っていました。

生理痛がある人の実に約70%は子宮内膜症になっているといわれています。また、それを放置すると子宮内膜症と診断された人の半分が不妊になってしまうのです。

私は、おそらくこのままでは内膜症になると思い、25歳からピルを飲み始めました。

ピルは避妊目的より、生理痛が重い人にとって、内膜症という病気の予防になるという認識があったのです。

また、自分の体の状態からすると、妊娠出産に関しても遅くない方がいいと思っていました。そこで、専門医試験の1ヵ月前という切羽詰まったタイミングで、出産することになりました。ちょうど私が30歳の時でした。

私は医師として、毎日患者さんを見ています。

28歳あたりで、内膜症の手術をして妊娠が難しくなった方を、何人も見てきました。友人でも内膜症が見つかって、不妊治療に入る人もいます。

自分を振り返ってみても、ギリギリ妊娠できた方なのだと感じるのです。

おそらく医者でなかったら、何も対処法を知らずに内膜症になって、不妊になっていた可能性があります。私たち産婦人科医が知っている知識を、産婦人科の外来に来なくともできる限り多くの人に知って欲しい、強くそう思っています。

後半に続く──

※プロフィール写真提供:mederi Inc.

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