毎月の生理が正常にくるということは、女性にとって全身的に健康であることの証拠です。正常な生理周期は視床下部、下垂体、卵巣を中心とした規則的なホルモン分泌機能とそれに呼応した子宮内膜の機能形成的変化など全ての調和のもとになりたっています。毎月の生理の量が少ない、生理の期間が短い場合、何らかの月経異常が起きている可能性が考えられます。今回は生理の量や回数が少ない原因、それが及ぼす健康や不妊への影響、生理不順の治療法などについて解説していきます。
目次
生理の量が少ない「過少月経」「過短月経」とは
生理周期日数は、生理開始日を生理周期の第1日とし、次の生理の開始前日までの期間を表しますが、その正常範囲は25〜38日の間にあり、変動は6日以内とされています。また、生理の日数は3~7日間、平均5日間で、1周期あたりの生理の総出血量は20~140mLとされています。
生理の経血量が極端に少ないものを過少月経といい、生理期間が短いものを過短月経といいます。
経血量が少ない「過少月経」の症状
過少月経では、1周期あたりの生理の総出血量が20mL以下と非常に少なくなります。生理初日~2日目でも、ナプキンに茶色の経血が付着する程度で、おりものシートで吸収が間に合ってしまうこともあります。
生理期間が短い「過短月経」の症状
過短月経では、経血量が少なく、生理期間が2日以内に終わってしまいます。過少月経と併発しやすくなっています。
生理の量が少ない「過少月経」「過短月経」の原因
過少月経や過短月経の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
ホルモンバランスの乱れ
生理が少なくなる原因としてホルモンバランスの乱れが挙げられます。偏った食生活、ストレス、睡眠不足などが原因で子宮内膜増殖を促すエストロゲンの分泌量が低下すると過少月経が起こりやすくなります。ホルモンバランスの乱れは排卵障害にもつながります。
ピルの服用
生理痛や生理不順の治療でピルを服用している場合、経血量が少なくなることがあります。治療薬による副作用なので、心配のない過少月経といえます。
子宮や卵巣の病気
卵巣機能不全、黄体機能不全、PCOS(多膿胞性卵巣症候群)、先天的な子宮の発育不全など子宮や卵巣の病気が原因で生理が少なくなることもあります。これらは生理が少なくなる原因だけでなく、生理が長引く原因にもなります。
甲状腺ホルモンの病気
甲状腺ホルモンは卵胞の成長や黄体機能のために必要なホルモンです。バセドウ病や橋本病など、甲状腺ホルモンの病気が原因で生理不順が起こることもあります。
生理の量が少ないときの対策と治療法
まずは、バランスの良い食生活、十分な睡眠、適度な運動、リラックスなどを意識してホルモンバランスを整えてみましょう。ホルモンバランスが整うことで生理不順が解消される場合があります。
早めの婦人科受診も大切です。婦人科では漢方薬の処方やホルモン療法など、年代や妊娠希望の有無などによって、適切な治療を受けることができます。婦人科を受診することが思わぬ病気の早期発見につながり、早期に適切な治療を受けられる場合もあります。
生理の量が少ないことが続くと不妊の原因にも
生理の量が少ないということは、ホルモンバランスが乱れているサインかもしれません。また、子宮や卵巣の病気が隠れている可能性も考えられます。生理不順を放置していると、子宮や卵巣にダメージが蓄積し、不妊リスクが高くなります。今現在の自分自身の健康のためにはもちろん、将来妊娠や出産を考えている人は、将来の自分のために早めの治療が大切です。
将来妊娠を考えている人に知ってほしい「卵子凍結保存」
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まとめ
生理の経血量が少ない「過少月経」や生理期間が短い「過短月経」は、ホルモンの乱れやピルの服用によって起こることがあります。また、生理が少ない原因に子宮や卵巣の病気、甲状腺ホルモンの病気が隠れていることもあります。生理のトラブルは食生活、睡眠、運動など生活習慣を見直すことでホルモンバランスが整い、改善されることもありますが、放置すると不妊のリスクにつながる恐れもあります。気になる症状が続く場合には早めに婦人科を受診し、相談するようにしましょう。
▼参考文献
- 知っておきたい月経異常の診断と治療 田中 忠夫 編著
- わかりやすい女性内分泌イラストで読む性周期の仕組み 武内 裕之 著
- おとなも子どもも知っておきたい新常識 生理の話 髙橋 怜奈 監修
名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
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