赤ちゃんを迎えるために不妊治療を続けているけれど、身体にも気持ちにも負担が大きいですよね。年齢を重ねることで妊娠する確率も低くなると言われているなかで、さらに費用の面も加えると不妊治療は無限にできるものではありません。
不妊治療が効果的なのは何歳までなのか、いつまで続けるべきなのか迷っている人へ。今回は年齢別の不妊治療の妊娠確率や卵子凍結に関する助成金についてご紹介します。
妊娠できるまで挑戦し続けたいというのはもちろんですが、医学的に金銭的に不妊治療を何歳まで続けるべきかという検討材料にしてください。
目次
【年齢別】不妊治療による妊娠確率
不妊というのは、子どもを迎えたいと思っている夫婦が避妊をしないでいるにも関わらず1年以上妊娠しないことを言います。
しかし、そもそも不妊でなくとも自然妊娠する確率は高いわけではありません。20代でも妊娠の確率は1周期当たり25〜30%という事実があります。その低い確率は年齢とともにさらに下がっていきます。以下にデータを示しますが45歳ともなるとその妊娠確率はわずか1%にもなってしまいます。
1周期当たりの妊娠率(※1)
- 25歳:25%~30%
- 30歳:25%~30%
- 35歳:18%
- 40歳:5%
- 45歳:1%
1年間避妊しないで性交渉をした場合の年代別妊娠確率(※2)
- 20歳~24歳:86%
- 25歳~29歳:78%
- 30歳~34歳:63%
- 35歳~39歳:52%
- 40歳~44歳:36%
- 45歳~49歳:5%
- 50歳以上:0%
※1、※2 M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition よりデータ引用
不妊治療にかかる費用
厚生労働省が2020年度に「不妊治療の実態に関する調査研究」を公表し、不妊治療にかかるそれぞれの費用の平均が明らかになりました。
「一般不妊治療」※それぞれ1回あたり
- タイミング法 約数千円〜2万円
- 排卵誘発法 約数千円〜2万円
- 人工授精 約1万円〜3万円
「特定不妊治療」※それぞれ1回あたり
- 体外受精 約20万円〜60万円
- 顕微受精 約30万円〜70万円
- 凍結融解肺移植 約10万円~20万円
- 顕微鏡下精巣内精子採取術 約25万円~40万円
東京都が卵子凍結に係る費用の助成を開始
東京都の「卵子凍結に係る費用助成」とは、将来の妊娠に備える選択肢の一つとして、「卵子凍結・保存費用」及び「凍結卵子を使用し、卵子融解・授精・胚培養・胚凍結・胚移植・妊娠確認をする費用」を補助する助成制度です。卵子凍結に係る費用の助成額は合計で30万円(最大)、凍結卵子を使用した生殖補助医療の助成額は、凍結卵子を融解し受精を行った場合に1回につき上限25万円支払われます。
これまで東京都では、がんの治療のために女性が妊娠するための力(妊孕性:にんようせい)を温存する方法として、卵子凍結への支援をしていましたが、健康な女性の将来への備えとしての卵子凍結を支援するのは初めてです。
対象は東京都に住む18歳から39歳までの女性※です。(※採卵を実施した日における年齢)すでに不妊症の診断を受けており、不妊治療を目的とした採卵・卵子凍結を行う方は対象外となります。東京都若年がん患者等生殖機能温存治療費助成事業(小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業)の対象となる方も対象外となります。
東京都では凍結卵子を使用した生殖補助医療への助成も
東京都では、妻の年齢が43歳未満の夫婦で凍結卵子を使用した生殖補助医療を受ける方の卵子融解・授精・胚培養・胚凍結・胚移植・妊娠確認に助成金が支給されます。
助成金額は、凍結卵子を融解し、受精を行った場合に1回につき上限25万円、「以前に凍結卵子を融解し作成した凍結胚」を融解して胚移植した場合に1回につき上限10万円です。
対象要件など詳しくは、東京都福祉局のHPをご確認ください。
年齢にとらわれず、不妊治療による妊娠確率を高めるには
赤ちゃんを迎えたいけれど本当に不妊治療に踏み出すべきか悩んでいるうちにも、体の加齢は進んでいきます。悩んでいる今が1番若い時ですから、今のうちにできることを考えてみましょう。
男女とも早めに検査を受ける
少しでも若いうちに検査を受けることが重要です。これは男女ともに言えることで、加齢によって妊孕力が低下することは明らかなので、妊孕力が高いうちに原因を突き止めましょう。早めに原因を突き止めることで適切な治療を開始することができます。
卵子凍結保存をする
卵子は女性が生まれた時すでにその元になる細胞を持っていて、成長とともに減っていく一方なので数の上限があります。さらに加齢とともに老化、減少していくと妊娠しにくくなる事実は変えられません。
しかし現在の医療では、卵子が若いうちに自分の卵子を凍結保存するという選択肢があります。卵子凍結により将来体外受精をした際の成功率を高めることができます。
もしも若い卵子を用いて体外受精をした場合は、40代でもその出産率は20代と大きく変わりません。(米CDC、2021)
卵子が若ければ、母体の妊娠適齢期と言われる35歳くらいをすぎても、妊娠出産率が高いということです。
卵子は安全に採卵し、マイナス196℃の液体窒素で半永久的に保管することが可能です。国内最大級の卵子凍結保管サービスを行なっているGrace Bankは、確かな実績を持った経験豊富な有名不妊治療クリニックと提携しています。
凍結した卵子は、さい帯血バンクであり、20年以上無事故を誇るステムセル研究所と提携し、専用大型タンクで一括管理をしています。保管施設は地震や津波に強いエリアに設置され、停電対策も万全、安心のシステムで大切な卵子を保管します。
「採卵」の年齢制限は40歳未満
卵子の元となる卵胞細胞は、年を重ねると細胞質が老化し、妊娠する力が急激に低下します。排卵が行われても染色体異常があったり、着床しても流産してしまったりという事が多くなってしまいます。残念ながら、卵子の質低下は、35歳頃から加速するといわれています。 40歳くらいまでが妊娠可能性があるとされる年齢なので、 採卵の年齢制限を40歳未満または40歳前後とするクリニックが多くなっています。 「Grace Bank」では、基本的には採卵をするご年齢を満40歳の誕生日までとさせていただいておりますが、それ以上のご年齢でご希望される場合でも専門医の判断により実施できることもありますので、お気軽にご相談ください。
「保管」の年齢制限は50歳未満
年齢のリスクを考慮して若い卵子を凍結保存し、体外受精の確率アップに備えても、妊娠・出産に耐えられる母体年齢には限りがあります。妊娠することが技術的に可能でも母体への負担を考慮してのことです。 そのため、母体や胎児のリスクを考慮して、卵子凍結の保存期限を45〜50歳までとするクリニックが多くなっています。 「Grace Bank」では、本人の意向により満50歳の誕生日まで凍結した卵子を保管することができます。ただし、実際に融解して使用する際には、母体の安全を考慮した上で専門医が実施の可否を判断しますので、50歳まで体外受精が行えることを保証するものではございません。あらかじめご了承ください。
まとめ
現在、不妊について検査をしたり治療をしたことのあるカップルは5.5組に1組といわれています。一度治療を始めると、もちろん赤ちゃんを授かるまで続けたいものですが、女性男性ともに加齢によって妊孕力の低下が見られることは事実です。
思い立ったら早めに行動し、検査や治療を受けることが大切です。若いうちに卵子凍結保存をするという選択肢もぜひご検討ください。
名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)
杉山産婦人科の医師・培養士による技術を用いた質の高い診療を提供。
将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
スタッフは全員女性。明瞭な料金設定も人気!