WEHealth 2023トークセッション「未来の自分のために”今”知ろう 産婦人科医と話す、卵子凍結」
WEHealthは、毎年3月8日の国際女性デーに合わせて開催される女性のためのヘルスケアイベントです。
3回目の今年のテーマは「ご自愛」。グレイス杉山クリニックSHIBUYAの岡田院長が産婦人科の観点から、卵子凍結やプレコンセプション・ケアについて、お話いたしました。
対談のお相手は、ご自身も30代のIMALUさん!「産婦人科に行くのは抵抗感があるんだけど…」「卵子凍結っていくらくらいかかるの?」などなど、同じく30代のモデレーター・山田真以さんとともに、女性たちが「未来の自分のために、まさに今、それが聞きたかった…!」と思うような質問をたくさん岡田先生にしてくださいました。
「未来の自分のために今何ができるの?何をすべき?」と悩んでいる方、「卵子凍結って最近よく聞くけど、実際どうなの?」と思われている方、「女性の健康について一緒に考えたい」という方にぴったりの対談をレポートします!
レポートの前半では、女性がかかりつけの産婦人科をもつことの大切さを中心にふりかえります。
IMALU
タレントとしてマルチに活躍される33歳。2009年ファッション誌でモデルデビュー。プライベートはお酒、映画、音楽、旅が大好き。昨年からは、東京と奄美大島での2拠点生活を発表!
岡田有香
グレイス杉山クリニックSHIBUYA院長。不妊治療に多くの方が苦しむのを見て、不妊治療に進む前から定期的に婦人科にかかり、不妊予防を行う重要性を発信している。
目次
日常生活の中で身体のケア気にしていますか?
山田:早速ですが、IMALUさん、日頃身体のケアって結構気にされてますか?
IMALU:そうですね。今33歳なんですが、30代に入ってからすごくケアするようになりました。とくに生理や女性ならではのいろんな身体の知識は、もう少し勉強した方がいいかなと、30代に入ってから気づきましたね。あまりにも自分の身体のことを知らないということに気づいて。なので、デリケートゾーン用のソープを使い始めてみたりとか、そういうのは少しずつやっています。
まだいろいろ学び中ですけどね。
山田:今回のイベントもそうですが、最近フェムケアとかフェムテックみたいなものがフォーカスされてきていることもあって、気にしやすくもなりましたよね。
IMALU:そうですね。少しずつしゃべりやすくもなってきたのかなとは思います。
山田:30代に差し掛かるとより、そういう人も増えてくるのかなと思いますが、岡田先生、印象的にはどうですか?
岡田:そうですね。ようやく、「フェムテック」というところから婦人科に目が向き始めたなという印象はあるのですが、それでも婦人科にかかられたことがないという人も結構いらっしゃるんじゃないかなと思います。できればそのハードルをもう少し下げていきたいですね。
山田:先生ご自身は知識もおありの中、普段からどういったケアを心掛けていらっしゃいますか?
岡田:そうですね。わたしは生理痛が結構ひどかったほうなので、25歳くらいから低用量ピルを飲んで、生理痛からなる病気を予防していました。避妊が目的ではなく、、病気の予防のために低用量ピルを飲んでいました。まずはそういった知識を知っていただくことが必要かなと思ってます。
ピルに関するイメージの変化
山田:ピルについては、最近ようやく人前で友だちに「わたしピル飲んでる」っていう話もできるようになってきた印象はありますよね。
IMALU:わたし高校時代とかピル飲んでると、「え!ピル飲んでんの⁈」っていうリアクションが多かった…ですよね!(客席を見て、うなずく)
「ピル飲んでるのびっくり」とか、「ちょっといやらしい子」みたいなイメージを持っている人が、15、6年前とかは多かったのかなという印象ですね。今はもっと普通のことですよね。
山田:そうですよね。だいぶ変わってきたかなって。
岡田:だいぶ変わってきたと思います。
山田:どうしてですかね。やっぱり教育的な部分なのでしょうか。
岡田:そうですね。身近でピルを買えるようになってきたというのも背景にはあるんじゃないでしょうか。
かかりつけの婦人科がない女性が多い日本
山田:少しずつこういう話はしやすくなってきたものの、かかりつけの婦人科があるという人はまだ少ないのかなという印象でしょうか。
岡田:そうですね。定期的に行くかかりつけの婦人科がある方は本当に少なくて、かかりつけの婦人科がない人は70%といわれています1。
IMALU:多いですね…!
岡田:婦人科に行ったことがないという方は27%もいるともいわれています2。まずは、足を運んでいただくことが大事なのかなとは思うんですけど、行って嫌な思いをした方もいらっしゃいます。
IMALU:あります、嫌な思いしたこと!
山田:ありました?
IMALU:はい!ありますよね?皆さん、どうですか?(会場を見渡す)
山田:すごく「うんうん」ってうなずいてる。結構皆さんうなずいてる人が多い!
一同:(苦笑)
IMALU:やっぱり産婦人科に行くって、怖いんですよ!あの台(内診台)に乗って、足を広げることがまず怖くて(苦笑)。カーテンが閉まっていて、先生の顔が見えず、何をされるのかわからない状態で診察をするというのも。まず行ってみても「こういう診察怖い」というところから始まりますよね。しかも、ここ良いよって言われる産婦人科は、混んでいることが多くて、一日中待ってやっと診察されたと思ったら、流れ作業のように診察された気持ちになった経験もあります。
岡田:そうですよね…。
IMALU:検査のためだったんですけど、不安なまま行って、「それってどういうことですか?」と聞いても、先生がばばばばーってしゃべるのがすごく速くて。でもお忙しい方だから、しょうがないと言えばしょうがないんですけど、やっぱり不安が残ったまま。あと、先生の言葉もきついなと思った経験が何回かあって、未だに「これだ!」という産婦人科には出会えていません。本当にいろんな病院に行って、やっと出会えるのかなっていう印象はありますね。
山田:確かにかかりつけ医を探すって難しいですよね…。
岡田:そこまで何回も行こうって思ってもらえる方って少ないと思うんですよね。
IMALU:そうですよね。
岡田:1回目2回目でちょっと嫌だった体験があると、もう行きたくないという気持ちになってしまう。
IMALU:そうなんですよ、1回経験してしまうと。でも、岡田先生からするともう少しがんばって、いろいろと自分に合う先生を見つけたほうがいいでしょうか?
岡田:本当はそれがおすすめです。そもそも婦人科のかかりつけがないというのは、日本の特徴です。
IMALU:そうなんですか!
岡田:アメリカですと、生理が来たら婦人科のかかりつけを持とう、とが言われています。
IMALU:そうなんですね。
岡田:生理が来たばかりの年齢は内診台に乗らないことも多いです。ただ行って、生理の調子や痛みについて相談したり、経血の量をチェックして終わり、みたいな感じでいいんです。「内診台怖い!」という方でも、本当は来ていい場所なんですよ。
IMALU:あと、カーテンの向こうは先生の足しか見えないのですが、たまに先生の後ろに3人くらいメモを取ってるインターンか研修医のような方がいて…。
岡田:大学病院などは、そういう可能性がありますね。
IMALU:あれも「ひとこと言ってほしいな」と思うんですよ。「4人も誰かわからない人がいる…」という気持ちになります。
山田:それは嫌ですね…。
岡田:基本的にクリニックでは、そういうことはあまりないかなと思いますね。大きい病院ですと、そういう方がいらっしゃる場合はゼロではないと思います。
IMALU:何人か(客席で)うなずいてくれていた方がいたので、もしかしたら同じ経験をした方がいるかもしれないですね。
1. 働く女性の健康増進調査 2018
2. 働く女性の健康増進調査 2018
https://hgpi.org/wp-content/uploads/1b0a5e05061baa3441756a25b2a4786c.pdf
婦人科にどんな感じで行ったらいい?
山田:婦人科に行くとしても、何をどう言って行ったらいいですか?
岡田:そうですね。わたしたちとしては、「症状があるから行かなくては」ということではなくて、定期的なチェックとして来ていただければいいなと思っています。例えば、病院で「今日どうしました?」と言われて、「あ、チェックに来ました」みたいな感じでもいいんですね。まずは、普通にかかれる病院を見つけることがファースト・ステップだと思います。
今はネットのサイトにも病院の情報がまとまっています。例えば、「おしえて生理痛」3のように製薬会社さんがやっているサイトなどです。症状や「思春期」のようなキーワードで検索してもらえれば、診療できるクリニックが一覧で出る場合があります。お住まいに近い場所の病院から詳細を見ていただくのが、まずはよいと思います。
山田:なるほど。ありがとうございます。では、定期的に産婦人科に行っていると、子どもがほしいとなった場合にも、より良い方向に導いてもらえるということでしょうか?
岡田:はい!検診に来ていただいている場合、大体妊活する半年くらい前には「この項目をチェックしてほしい」というものがあるんですね。なので、どのタイミングでどういった検査をするかというようなこともすべてお伝えできますので、少なくとも1年に1回は婦人科に来ていただきたいなと思います。
山田:ちなみにどういった項目をチェックしていくことになるんでしょうか?
岡田:まず、すでに性交渉されていて卵巣と子宮の様子を診るということですと、子宮頸がん検診やエコー検査といって子宮を画像で見る検査を婦人科ではやっていきます。あとは、「会社の検診でやってます」という方も多いと思うのですが、その検診では子宮頸がん検診と内診という、お腹と膣から手を挟んで指でチェックするものしかやっていない方も多いです。
でも、超音波の検査をやっていないと初期の段階の子宮筋腫や子宮内膜症はわからないので、まずかかりつけの産婦人科で超音波の検査もできればやりましょう。ただ、もし性交渉の経験がない場合は無理にやらなくてもいいですし、経腟的なものではなくお腹からのエコー検査もできます。
IMALU:でもできれば超音波検査がいいですか?
岡田:はい。ただそれは内診台になってしまうので、問診だけでもよいです。内診台にあがる検査をやってみてもよいかなと思える方でしたら、ぜひやっていただくとよいと思います。
IMALU:では、最初に「少し怖いんですが…」と言えばいいですか?
岡田:はい、言っていただいて大丈夫です。
IMALU:「外からできる検査だけがやりたいです」と伝えるのがよいということですね。
岡田:そうですね。最初は本当に問診だけでもいいと思います。「今日はまだ検査は嫌です」と言ってもらえれば大丈夫です。
3. 日本新薬株式会社、https://seiritsu.jp/
「プレコンセプション・ケア」って知っていますか?
山田:「実際にそろそろ子どもがほしい」となった場合は、検査もしつつ、どのようなケアをしていけばよいのでしょうか?
岡田:そうですね、お伝えしているのは「プレコンセプション・ケア」といって、将来いつか妊娠を考えるご自身、つまり女性やカップルが健康的な生活をするのがとても大事と言われています。厚労省からも不妊予防として、プレコンセプション・ケアの考えが大事と言われています。20代や30代だと皆さん仕事が忙しくて、ご自身の健康は少し後回しというようなところがあると思うのですが、まずはその年代から自分の健康に向き合っていこうということです。具体的に何すればよいのかというと、女性にとっての一番は、かかりつけの婦人科を持っていただくことですね。
山田:やはりそこなのですね。
岡田:はい。それ以外に食生活や睡眠も重要になってくるので、かなり幅広いことがプレコンセプション・ケアの定義には入っていますが、一番は「かかりつけの婦人科をつくる」ということです。
山田:やはり健康的な身体になっておくということなのですね。
岡田:そうなんです。早い段階で病気が見つかる場合、そこからの進行をくい止めることができます。でも、いつか「いざ妊娠!」と思ったときに、すでに手術が必要なレベルの症状が見つかって、「先に手術をしてから妊娠しなくては」という状態の方もいらっしゃるので、それを防いでいくことですね。
山田:なるほど、プレコンセプション・ケアはIMALUさんご存じでしたか?
IMALU:プレコンセプション、…ケア。知らないです!
山田:初めて今日お聞きになりましたか?
IMALU:はい。
岡田:実は去年、一般の方はあんまりご存じないと思うのですが「不妊予防支援パッケージ」4と呼ばれるものが厚労省でも定義されています。例えば、ブライダル・チェックというサービスがありますよね。
IMALU:はい、聞いたことがあります。
岡田:結婚する段階で血液検査をやったり、婦人科に行ったりということがあると思うのですが、ブライダル・チェックは「結婚するからそういうことをやる」という感じですよね。もちろん、その段階での血液検査は必要ではあるんですが、エコー検査などもっと前からできることがありますので、プレコンセプション・ケアは、そういうことを結婚よりもっと前の段階でやるというイメージです。
ブライダル・チェックは、「ブライダルというから結婚しないと行けない」と思われやすいです(苦笑)。
IMALU:そういうわけではないですよね?結婚しない人でもブライダル・チェックは可能なのでしょうか?
岡田:そうです。
山田:ブライダル・チェックの具体的な中身は、どういったものなのですか?
岡田:クリニックによっても違います。性感染症などをチェックしたり、先ほどのエコー検査で卵巣・子宮を画像で見たり、あとはワクチンが必要な抗体を持っているかをチェックしていくのがブライダル・チェックですね。
IMALU:そのうえで先ほどのプレコンセプション・ケアというのは、ブライダル・チェックとどう違うのですか?
岡田:もっと前の段階から卵巣・子宮の状態を定期的に診るというだけではなくて、食事や睡眠も含めて生活全部を定義しているのがプレコンセプション・ケアです。なので、20代、10代からでもいいですし、結婚していなくてもやりましょうというものです。
IMALU:食事などについて「こういう生活をしてます」と先生に話すということですか?検査をすることもありますか?
岡田:そういうことです。検査をすることもあります。
IMALU:そこで、「こうするといいですよ」と教えてもらうのですね。これは子どもが欲しい方向けですか?
岡田:本当は全員ですね。
IMALU:今子どもはほしくないよ、という方でも?
岡田:将来の健康のためにということになります。
山田:なるほど。みんなにとって大事ということですね。
岡田:今子どもが欲しいかどうかわからないという方もすごく多いと思うので、そこはいつかの妊娠のためにというよりも、それがわからなかったとしてもご自身の将来の健康のために重要だと思っています。
4. 2021年7月9日に厚生労働省より公表された、ライフステージに応じた女性の健康推進策のこと(厚生労働省、https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_19753.html)。
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何となく気になってはいても、仕事や日々の生活に忙しい女性たちは自分の身体は後回しにしがちですよね。IMALUさんが代弁してくださったように、産婦人科自体への抵抗感や馴染みの無さを感じている方は会場の中、そしてこのレポートの読者の方にも多いのでは無いでしょうか。
ですが、岡田先生がおっしゃっていたように、どのようなライフプランの方でも、まず1年に1回定期健診のつもりで婦人科に行ってみることから始めることが大切、ということがわかりました。
後半は、いよいよ卵子凍結について気になる質問を伺っていきます。レポート後編もぜひご覧くださいませ。
*ピルについてはこちらの記事も
☞「グレイス杉山クリニックSHIBUYA岡田院長に聞く!【Q&A7問】AMH検査とピル」https://gracebank.jp/qapillamh-testgracesugiyamaclinicshibuyayukaokada/