ドクターインタビュー

まるたARTクリニック 丸田英医師|夜遅くまで診療も 仕事との両立を本気で応援

愛知県名古屋市・千種区のまるたARTクリニックは、2020年に開業された不妊治療の専門クリニックです。名古屋市営地下鉄 東山線の池下駅から徒歩1分。院長の丸田英医師に、不妊治療専門クリニックを開業された理由をうかがいました。

――不妊治療専門クリニックを開業されたきっかけについて教えてください。

勤務医ではできないことをやりたい、と思ったことが理由です。不妊治療に特化した理由については、確実にニーズがあること、また、(産科と分けて)不妊治療に特化したクリニックのほうが、患者さまにとっては居心地がよいのではないかと考えました。お子さまを連れて不妊治療に取り組まれたい患者さまには、3Fに専門の託児所を併設し、待合室へのお子さまの入室はお控えいただくなどの配慮もしています。

――まるたARTクリニックが大切にしている方針や、理念について教えていただけますか。

患者さまのニーズにどう応えるか、という点を最も重要視しています。基本的に「当院に通われているすべての患者さまに妊娠していただきたい」というのが大きな目標です。

――まるたARTクリニックの患者さまは、どのようなニーズが多いのでしょうか。

例えば仕事と不妊治療の両立ですね。まず、物理的に両立させるところから治療が始まります。仕事が終わった後に通院治療ができないと、働く女性に対する不妊治療は成り立ちません。治療をしたいとおっしゃる方にできる限り寄り添いたいと思って当院は夜遅くまで診療することもあります。できる限り患者さまのご要望に応えるようにしています。

理由としては、当院は体外受精の患者さまが多く、採卵が多いのです。そのため、スケジュールを事前に調節するのですが「日曜が仕事休みなのでこの日に採卵してほしい」「主人がいる日に採卵してほしい」といったことを実現するスケジュールを組みます。仕事の邪魔にならないように合わせていると、どうしても休日や夜遅くになるというケースもあるということです。

――そのように、きめ細やかな対応はどのようにしたら実現できるのでしょうか。

患者さまの背景をよく知ることですね。例えば、月経周期が28日と40日の患者さまとを、同じようにスケジューリングすることはできませんよね。仕事や生活の背景を知り、身体の特徴を知り、1か月くらい前にこの日に採卵、と慎重にスケジュールを立てるようにしています。

保険診療の開始で負担が増える人も

――日本の不妊治療について、感じている課題があれば教えてください。

2022年4月から、不妊治療の保険適用が開始されました。確かに、保険診療は費用面で患者さまにとってありがたい点はありますし、行政には感謝しています。しかしその一方で、保険の枠組みにはまらない、当てはめることができない治療があるという点はお伝えしておきたいです。

もともと、不妊治療は個々人に合わせたオーダーメイドで計画を立てていく、というのが一般的な考え方です。その点では、一律に条件が定められている保険診療は、真逆の方向になります。要は、一律にエビデンスのある治療をやると、条件に当てはまらない人が出てくる。何かトラブルがあった時に、保険診療に含まれない薬でしか対処できないケースなどもあるわけです。

――具体的にはどのようなケースがあるのでしょうか。

卵巣機能が低下しているケースや不育症が挙げられます。保険診療は移植回数に制限がありますので、こうした症状や状態がある人に対しては、保険診療では難しいケースが多くなります。

要は、保険制度で高確率で妊娠できるのは、条件が良い人なんですよね。

年齢についても、30代後半になってくると、獲得卵子数が妊娠率に直結してくるようになります。どうしても、年齢が上がると卵子そのものの質は落ちる傾向にありますので、たくさん卵子を採らないと妊娠できません。

AMHが低ければ、そもそも一度の採卵で10個採るのは難しいです。条件が悪くなってくると、少しでも若い卵子を獲得する必要があるためスピードが一番重要です。

――ある程度の年齢から不妊治療を検討している場合、保険診療はなかなか厳しい面もあるのですね…知りませんでした。

そうです。混合診療は禁止されていますので、若いうちに卵子を採りたいならば自費にするのか、という話にもなりかねません。

そうすると、問題は助成金の廃止です。保険診療が始まったばかりに、不妊治療に関する助成金が廃止されている、ということです。これまで、助成金をもらって自己負担を減らしていたのに、保険制度が始まったがゆえに自己負担が多くなってしまうというケースが出てきています。※自治体独自の助成金が始まっている市町村もあります。

こうした不妊治療現場の現状から考えると、保険制度はありがたいのですが、それゆえに困る人が出てきたことも目を背けてはいけないと思っています。

――保険診療になったばかりに、デメリットが増えてしまうケースもあるとよくわかりました。今後、どのように対処していくべきだと思われますか?

保険で妊娠できる人と、保険の枠組みでは苦戦してしまう人を明確に分けることだと思います。その上で、保険外で治療しないといけない人が一定程度いるということを理解する。「保険がだめなので自費でどうぞ」ではなく、行政にできることはどういうことなのか、という点は引き続き検討していただきたいと思っています。

卵子凍結は本来、20代がベスト

――グレイスバンクの卵子凍結について、今後どのような可能性を感じていらっしゃいますか?

先見の明があると思います。卵子の年齢が妊娠率を左右しますから、少子高齢化が進み、女性も活躍する社会を目指す中で、キャリアアップを重要視する女性は当然増えてくるでしょう。その反面、妊娠しにくい条件が増えているともいえます。

卵子凍結は、仮にパートナーがいなくても、自分の卵子が若いうちに採卵しておいて将来に備えることができますよね。安心してキャリアもアップできる。自己卵子があれば妊娠のチャンスは高めることができますので、先進国になればなるほど必要な選択肢ではないかと思っています。

――本来は、何歳くらいで卵子凍結をするとベストなのでしょうか。

20代前半でできるのがベストですが、現状は30代後半の方がほとんどです。やっと「卵子凍結」というキーワードがインターネット検索されるようになったくらいだと思いますので、まだまだ20代でやろうという雰囲気はないですね。少なくとも名古屋の20~30代の比較的若い方はあまり感じていないと思います。

なので、クリニックとして啓蒙活動をしていきたいと考えています。不妊治療から感じる卵子の質の限界は、どうしてもあるわけです。将来のキャリアと自分の出産を考えて、若いうちに自分のことを知った方が良いと思います。

「自分の体は永久に妊娠できるわけでない」ということを知っていくべきですね。そのためにAMHなどをパラメータとして、若いうちに知っておくことも大切です。そうすると、「自分の卵巣の余力があまりないんだな」とか「今のうちに凍結しないと、歳を取ったら不妊治療で大変かもしれないな」という予測も立てられるようになってくる。

自分を知る、という教育があって初めて、20代から卵子凍結を検討できるような社会が生まれるのではないでしょうか。

不妊で悩む人をなくしたい

――最後に、グレイスバンクと提携した理由や、グレイスバンクに期待していることをお聞かせ下さい。

卵子凍結と不妊治療の違いは、卵子凍結は凍結期間のピリオドが長いという点です。20年後に凍結卵が使われるケースもありえますので、となると、クリニック単体では僕が病気をしたらどうなるのか、とか、どうしても不安があります。

その点、グレイスバンクはステムセル研究所と提携しており、長期的に信頼できる保管体制をとってくれるので、僕にとって安心感があります。

また、キャリアがある女性は一つの都市にとどまっていないですよね。当クリニックの患者さんでも「転勤したら、凍結した卵子はどうなるんですか」という質問がとても多いのです。「グレイスバンクのシステムは、どの都市にも、海外にも凍結卵を移動できますよ」とお答えすると「じゃあ安心ですね」という言葉をいただくことが多いですね、

――今後、まるたARTクリニックとしてグレイスバンクと実現していきたいことをお聞かせ下さい。

理想論で恐縮ですが、不妊治療を専門にしてますが、究極には不妊で悩む患者さまをなくしたいんです。

それを実現できそうな手段は、卵子凍結だと思っています。大きな意味でいうと、卵子凍結からの体外受精は不妊治療ではないですから、凍結保存していた卵子を使って妊娠をのぞむことができる世の中を作っていけたらいいなと思いますね。

世の中に卵子凍結の情報を発信していきたいですし、メリットをもっと知っていただきたいです。

東京都が助成金をはじめますね。波は東京から始まりますが、名古屋でも卵子凍結の機運を広げていって、民が知れば行政が動き、助成金にもつながると思います。結果的に、将来に不妊治療で悩む人が減る社会の実現を目指して、グレイスバンクさんと一緒にこの事業をやらせていただきたい。一クリニックの情報発信力には限界がありますから、グレイスバンクさんと一緒に実現していけたらいいなと思っています。

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