「広尾かなもりクリニック」の金森院長は、産婦人科、内科の幅広い症状や悩みに、時間をかけた丁寧な診療を行っています。20代の頃は音楽家として活躍しており、医師となった現在でも、国内外のコンサートでのヴァイオリンの演奏や名古屋フィルハーモニー交響楽団をはじめとするオーケストラの指揮者などの音楽活動を続けられています。
勤務時間以外は、飛行機の操縦やヨットも楽しむという穏やかながらパワフルな金森院長に、音楽家から医師への転身の経緯、「健康に勝る財産なし」を合言葉としたクリニックの特徴や工夫などのお話をおうかがいしました。
音楽家から産婦人科の医師に
私は三重県出身で、高校までは三重で過ごし、幼い頃からヴァイオリンを習っていましたが両親は医師でも音楽家でもありませんでした。親戚に東大医学部の小児科の助教授から杏林大学の主任教授になったチェロを弾く医師がいましたが、三重と東京で離れていたので特段影響を受けたということもなく過ごしてきました。
高校卒業後は外交官に憧れ慶應義塾大学法学部政治学科に入学しました。学内の学生オーケストラの他、各大学の選抜メンバーが集まる日本青少年音楽連合のジュネスオーケストラや、各国の選抜メンバーが集まる世界青少年音楽連合の世界ジュネスオーケストラにも度々参加し、言語や宗教や政治を超えて音楽の力で外国人と色々な交流が出来た経験により、外交官志望から音楽家志望へ考えを変えました。
慶応義塾大学卒業の際、指揮を学びたいという強い想いで指揮科の尾高忠明先生のいる桐朋学園大学指揮専攻と東京芸術大学のヴァイオリン専攻を受験しましたが、桐朋学園大学には縁がなく、合格した東京芸術大学へ進学しました。
東京芸術大学時代にスタジオミュージシャンの仕事で知り合ったNHK交響楽団のヴァイオリニストの方から誘われた事がきっかけで、私もN響でヴァイオリンを弾くことになりました。巨匠と呼ばれる名だたる指揮者の方々を目の前に演奏をしていると、やはり指揮者になりたいという夢を諦めることができず、再度、桐朋学園大学を受験しました。今度は晴れて合格をいただき、憧れの尾高教授のもとで指揮を学ぶことができました。それ以来尾高先生には公私ともに大変お世話になりました。
以上のように20代はN響でヴァイオリンを弾いたり、アマチュアオーケストラの指揮をしたり、指揮コンクールを受けたりと、職業音楽家として邁進していましたが、同時に、第一線で活躍する指揮者仲間との差も感じていました。
そんな時に、私が指導していた医学生オーケストラの合宿等で、医学生たちから「先生は医者に向いている」と何度も言われたのです。言われたときは驚きましたが、家族が病気になったこともあり、30歳のときに先の人生も考えた末、医学の道にチャレンジし、帝京大学医学部へと入学しました。音楽活動の他、夏休みには渡米して飛行機やヘリコプターの操縦免許を取得したりしましたが、授業は疎かにせず、6年間ひとつの単位も落とす事なく卒業しました。
医学部に入学した当初は音楽家と医師との両立を考えて、当直に呼ばれることの少なそうな科も考えていましたが、やはり、「おめでとうございます」と言えるハッピーな瞬間に立ち会え、全身を診ることができ、手術もできる、何でもできる科に進みたいという想いから卒業後は東京大学医学部付属病院産婦人科に研修医として入局しました。何でもするというのが大変なことはわかっていましたが、難しいところから始めて、仕事をしていくうちに段々と方向性が定まっていくとも思ったのです。
研修医、勤務医時代の糧を持って開業へ
東大病院では子宮頸がんで若くして亡くなる患者さんも多く、私が研修医時代に担当して、20代の若さで亡くなっていった子宮頸がんの患者さんの事は今でも忘れられません。今でこそ、子宮頸がんワクチンもありますが、20代30代で子宮頸がんのピークがあるということを研修医1年目で嫌というほど思い知りました。
私が研修医だった時代は当直じゃなくても病院に泊まり込むのが当たり前で、ずっと産婦さんに付きっきりという過酷な労働環境でしたが、ハッピーな瞬間があるからこそ、研修を終えることが出来たのだと思います。
大学病院の当直は上級医、中級医、研修医の毎日3人体制でしたが、研修後に大学の医局からの派遣という形で勤めていた総合病院では、当直医は一人体制でした。非番の日もオンコールで呼ばれることも多く、月の半分以上は当直かオンコールという病院もありました。夜勤中お産や緊急手術で寝ていないのにそのまま翌朝手術をしたことや、怪我をしても休めず松葉づえをつきながら診療したこともあります。
さすがに、このまま続けるのは心身ともに負担が大きすぎるので、自分の健康も考えてマイペースに診療を行える開業という道を選択しました。
開業後は、東京都港区医師会の理事なども仰せつかり、行政との仕事もやり甲斐を持ってやっています。
今も、音楽活動は続けていますが、あくまでも患者さんの医療が勿論第一です。ヴァイオリンの演奏や指揮などの音楽家としての活動や、飛行機の操縦などは余暇にやっています。
今年の9月にデンマークで開催される世界約60か国、約1800人が登録しているワールド・ドクターズ・オーケストラの公演では今回もコンサートマスターとして参加します。楽器演奏は軽度認知障害から認知症への移行を予防できるというエビデンスもあり、音楽に携わる身として嬉しくも思います。
今までお世話になった先生や同僚、今まで携わってきた音楽活動を通じて知り合った方々は、今でも公私ともに親しくさせていただく関係を築いており、こうしたご縁に心より感謝しております。
少子化対策には結婚・出産に対する社会の意識改革を
現在の日本女性は世界一の平均寿命を誇り、周産期死亡率は世界トップレベルの低さです。私自身、医療を通じて日本の女性の健康に関わっていることを誇りに思っています。
ただ、日本の社会的な問題として、少子化の問題に触れないわけにはいきません。女性の就業率の上昇に伴い、婚活・妊活をする年齢が以前に比べてどんどん上がってきています。昭和40年代ぐらいまでは、殆どの人が20歳代で結婚していたのに、今は20代男女の未婚率が非常に高くなっています。
理由として、収入の低さなどが挙げられていますが、戦争直後は収入が低いどころか食べ物にも事欠いたのに出生率はとても高かったわけです。ですから、若いカップルの方たちには、結婚できない理由を連ねる前に、「戦後の何もない時代の出生率の高さに目を向けて考えてください」とお伝えしたいです。
一生添い遂げる自信がないから結婚をためらうという理由もわからなくもないですが、結婚するときに好きだった相手と一生連れ添うかどうかは実は誰にもわかりません。人の気持ちや環境は変わるものですので、離婚する人もいるでしょう。縁があってその人と親しくなったのだから、とりあえず結婚して妊娠してみるのもひとつの選択肢だと思います。
欧米では正式に結婚していなくても出生率が高いですが、日本では未婚のままで出産することが少ないのが現状です。私自身は日本も欧米のように結婚せずに妊娠・出産をする人がもっと増えても良いと思っています。
婚活・妊活を若いうちから進めると、出生率も上がりやすくなりますし、経済的な費用も抑えられます。子宮頸がんの予防にはワクチンと検診の両輪が必要と言われるように、少子化に対しても、卵子凍結などの先進技術や不妊治療と共に、結婚・出産への意識改革の両方を進めていくことが重要だと考えます。
身体も心も軽くなるような診療を提供
現在、私が院長を務める広尾かなもりクリニックでは「健康に勝る財産なし」という合言葉を掲げ、日々の診療にあたっております。診療時間はおひとりに対して30分単位でお取りして、患者さんのお話をすべてお聞きすることを心がけています。
私が医学部を卒業したのは36歳の時でしたので、指導医は私よりも若いケースが殆どでした。そのような環境で過ごしてきたため、誰に対しても敬語で丁寧な対応が自然と身につきました。ですので、対応面で患者さんが嫌な思いをすることはあまりないと思います。
院内は、診察室と待合室を分けてプライバシーに配慮しています。診察室では周りを気にすることなく、リラックスしてお話しください。
クリニックでは、お産は扱っていませんが、妊娠9カ月までの妊婦検診やタイミング法や排卵誘発剤による不妊治療も行っており、例えば45歳の方2名が当院の不妊治療により、妊娠分娩に至っています(2023年7月末現在)。そのほか、出産後の相談や生理痛などの月経に関するお悩み、子宮・卵巣・乳房の超音波検査、一般内科や小児の予防接種まで幅広く対応しています。
ホットフラッシュをはじめとする更年期症候群のさまざまな辛い症状に対してのホルモン補充療法も、私の専門分野として力を入れている治療の一つです。勤務医時代に私が赤ちゃんを取り上げた妊婦さんが、私のことを調べて、更年期障害の治療を行いに来院してくださることがあり、女性の生涯にわたる健康をサポートする産婦人科医として非常に嬉しく感じます。
心身の不調が改善されて、患者さんが喜ばれるのを見るのが私の生き甲斐のひとつです。患者さんへの経済的な負担も少ない治療ですので、更年期症状にお悩みの方や何かしらの不調を感じている方は気軽に相談にお越しください。
クリニックは東京メトロ日比谷線「広尾」駅3番出口から徒歩30秒とアクセス良好でとても便利な場所にあり、ホームページからの診療予約も可能です。ご予約優先で診療しておりますので、待ち時間の短縮や十分な診療時間の確保のために、ホームページからのWeb予約もご活用いただければと思います。
年齢に関係なく、皆さんの受診を歓迎しています。出産後のメンタルケアやお子さんの検診、予防接種などにも対応していますので、何か不安やお悩みがありましたら、ご来院ください。スタッフ一同、身体だけでなく心も軽くできるようなサポートに努めます。
クリニックでの診療以外に、高齢者施設での診療や大学での勤務、産業医、医師会の理事など、産婦人科診療以外の医療活動も行っております。これらの活動を通しても、皆さんのお役に立てることをありがたく思い、これからも尽力してまいります。
※この記事は2023年6月のインタビューを元にしています。最新の情報はクリニックHPをご覧ください。
※広尾かなもりクリニック公式HPはこちら:https://kanamori-clinic.com/