新型コロナで伸びるデジタルヘルス
新型コロナウイルスによって様々な業界で変化が生まれているなか、大きな追い風を受けて成長しているのが「デジタルヘルス」の分野です。
デジタルヘルス業界は、全世界で2020年に約962億ドル(11兆円)の市場規模になっていて、これは2028年には約2019億ドル(23兆円)に達することが見込まれています。
在宅でオンライン診察や検査が受けられるというメリットから、デジタルヘルスの中に含まれる「テレヘルス(遠隔診療・検査)」のスタートアップの成長も続いています。
2015年にテキサス州で誕生し、様々な検査キットを販売する「エヴァリウェル(Everlywell)」も注目株の一つ。
このサービスは自宅で、血液、唾液、尿などの検体を採取し、研究所に返送するだけで、数日後には医師の診断を含んだ検査結果をオンラインで受け取れるというもの。
種類は30以上、25ドルからの在宅キット
特徴的なのは、その検査キットの幅の広さです。
「健康全般」、「女性・男性特有の健康」、「体重」、「セクシャルヘルス(性の健康)」、「新型コロナ」というカテゴリーに分かれていて、なんと30種類以上もの検査キットを用意しています。
例えば、「Women’s Health Test(女性の健康テスト)」(199ドル:2万2700円)では、体調をベストにするためのホルモンバランスの検査をし、バランスの乱れがどんな症状を引き起こすのか発見することができます。
また、ホルモンのレベルを調べて、更年期に向かっているかどうかをチェックする「Perimenopause Test (更年期テスト)」(99ドル:1万1300円)のキットもあります。
エヴァリウェルは2018年3月に、在宅の「Women’s Fertility Test(妊娠力テスト)」(149ドル:1万7000円)を発売した最初の企業でもあり、女性の健康の分野に重点を置いたところからスタートしています。
そのため、女性関連のキットは品揃えも豊富。
価格は25ドル(2800円)〜259ドル(2万9600円)までと広く、平均的には、49ドルと199ドルのコースが主流です。
面白どころでは「ビタミンD欠乏症」(49ドル:5600円)、「睡眠&ストレス」(199ドル)をチェックするものもあります。
ちなみに、最も高い259ドルのコースは「食品アレルギー」の検査で、204種類の食品に対する体の免疫反応を測定し、避けるべき食品などの目安を知ることができます。
2020年には、新型コロナウイルス感染症の検査キット(109ドル:1万2400円)も開発し、食品などを取り締まるFDA(米食品医薬品局)の認可を取得しました。
ひと月約3000円のサブスクも登場
家で検査ができる手軽さが受けている一方、価格が高いという声も上がっており、月額24.99ドル(2800円)のサブスクモデルも導入。
定額料金を払うことで、14種類(49ドル)テストが一月に一度受けられ、医師のアドバイス込みの診断結果が得られるサービスも導入しています。
売り上げは2020年で2億ドル(約220億円)に達しているとみられ、企業価値は一年で、2倍以上の29億ドル(3300億円)に達しました。
創業者のジュリア・チークは、新型コロナがデジタルヘルス業界の成長を後押ししていると話します。
「新型コロナが少し落ち着いて、通常の診察が再開されてからも指数関数的に成長を続けています。300%という桁違いの成長を遂げているのです。パンデミック以降、医療は大きな転換期を迎えています」(ジュリア・チーク)
またエヴァリウェルは、2021年10月に女性向け医療機器メーカーの「ナタリスト(Natalist)」を買収。
ナタリストは、妊娠・排卵検査薬に加えて、サプリメント、セルフケア用品など、妊娠前から妊娠中までの女性をサポートする製品を展開していて、エヴァリウェルは検査キットを超えてサービスを拡大しています。
デジタルヘルス業界の成長に伴い、さらに需要が伸びていくと予想されるテレヘルスの領域、今後の進展に注目です。