不妊治療大国の日本、不妊に悩むカップルは6組に1人です。その主な原因は男性と女性、どちらにあるのでしょうか。
女性に原因があると思われる人が多いかもしれませんが、実は、男性側に原因があることも珍しくありません。結果から言うと、不妊の原因の約半分は男性側にあるのです。
今回は米国で成長を続けている、男性の「精子」に注目する妊活スタートアップ「レガシー(Legacy)」を紹介します。
不妊の原因は半分が男性
世界保健機関(WHO)の報告によると、女性にのみ不妊の原因があるという場合の割合は41%。男性にのみ原因があるという場合は24%で、男女ともに原因があるという場合が24%となっています。これを見ると、不妊の問題の半分は男性が原因になっているのです。
男性不妊の原因は、精子の数が少ない、運動率が悪い、精子がないといった精子をつくる機能に問題がある「造精機能障害」の割合が82%を占めています。
女性の妊娠できる力(妊孕力)が落ちることが大きく注目されていますが、男性にも原因がありながらも、その現状や理由について、あまり語られてきていないのが現状です。
卵子凍結ならぬ、精子凍結
男性も自分の精子の現状を把握して、妊活に生かしたい。そんな需要に応えているのが、2018年に誕生したレガシーです。
レガシーは男性の生殖を支援するスタートアップ。何ができるかと言うと、自宅に送られてきたキットで「精子の状態」をチェクすることができます。また必要であれば、精子の凍結をすることも可能です。
まずキットをオーダーすると、数日以内に自宅で精子を採取する容器が届きます。そこに精液を入れて、ラボに送る仕組みです。精子の状態は温度や時間で刻々と変化します。容器は、精液を採取した日にレガシーがピックアップして、即日検査に回します。
そこから数日すると、精子の分析結果がダッシュボードでチェックできるようになります。
グラフィクスが多く使われていて、精子の量、数、濃度、運動率、形態(精子の形)の状態が一目でわかるようになっています。
例えば、「精子の運動率」の項目を見てみます。どれくらいしっかり精子が泳ぐ力を持っているのかを示したもので、サンプルの32%が動いているという結果に。40%以上が正常とされるため、数値は「正常以下」だということがわかります。
自分の精子が正常なのか、または問題を抱えているのか。現状を把握するのは、妊活をする男性にとって重要なポイントです。
レガシーは、分析は米国でトップの生殖ラボの1つ、アンドロジー・ラボ(Andrology Labs)と提携していて、正確さは通常のクリニックで計測するのと同じだとしています。
また、ラボに送ったサンプルは1週間保存されます。ユーザーは、結果を見た後に精子凍結が必要だと思えば、そのまま凍結保存することができ、必要ない場合はレガシーが廃棄します。
価格は195ドルから
精子を凍結する理由は様々です。精子も年齢を経ると「加齢」して質が低下するので、若いうちに凍結して質を保存しようという人、ガンなどの治療に入る前に良質な精子を保存する人、また軍隊で危険な場所に派遣されるために、妊孕性を確保しておこうという人もいます。
価格は、精子の状態を調べるミニマルなキットが195ドル(凍結サービスは含まず)(約2万2000円)。その次は、40歳以上の男性を対象に、精子のDNA解析まで含めたキットが390ドル(約4万4000円)。精子の凍結まで含めたキットが995ドル(約11万4000円)。これら全てコミコミで、無期限の精子保存までつけたコースは3995ドル(約45万9000円)です。
レガシーが最も画期的なのは、これまでクリニックに行って検査し、部屋にこもって慣れない環境で精子を採取…といった煩わしさを一気に解消し、自宅で採取できるようにした点です。
このスタートアップは順調に成長していて、2021年4月には1000万ドル(11億5000万円)の資金調達に成功しました。
卵子については、卵巣年齢を計る「AMH検査」がここ最近注目を集めていますが、妊娠は女性の問題だけではありません。2022年は、男性の不妊に焦点を当てた「精子検査」にも注目が集まりそうです。