新型コロナのパンデミックにより、オンラインで手軽に医師の診察が受けられたり、自宅で健康のチェックができる検査キットの市場が拡大しています。
家庭用の検査キットで膣内の微生物を検査する「エヴィ(Evvy)」もパンデミックの間に資金を調達し、成長している企業です。
エヴィは微生物の状況からどのようなことを知ろうとしているのでしょうか。今回は、世界初の家庭用「膣内微生物キット」についてお伝えします。
「微生物」がなぜ大切?
毎年、膣を持つ人の30%以上が、膣内微生物のバランスが崩れることで苦しんでいるということを知っていますか。
バランスが崩れることで、細菌性膣炎、イースト菌感染症、尿路結石が引き起こされるのです。
エヴィはその膣の中の微生物(細菌類や菌類<イースト菌>)を調べることで、女性の体の変化を把握し、今起きている問題だけでなく、将来に起こりそうな問題を早く察知して対策が取れるようにしようとしています。
検査では、その膣内の微生物がどういった種類のものなのか、そしてその割合がどれくらいになっているのかを調査。
その情報から、どのような症状が出るのか、他の膣内の細菌とどのように影響する可能性があるのかということについて知らせてくれます。
膣内の微生物のバランスが崩れると、細菌性膣炎、イースト菌感染症というわかりやすいものだけでなく、不妊症、早産、子宮頸がんを含む婦人科のがんなどにも関係すると考えられています。
多くのユーザーのデータを集めていくことで、今後、微生物と不妊症、早産、婦人科のがんの関連性についても、より研究が進んでいくことが期待されているのです。
テストキットは129ドル
エヴィのキットの費用は約129ドル(約1万5800円)で、アメリカの50州で購入することができます。
オンラインで注文すると、キットが到着。中にある膣スワブを使ってサンプルを採取し、封筒に入れて研究室に送るシステムです。
結果が出るのは、2~3週間後。数値を受け取った後は、オンラインでエヴィのヘルスコーチと結果について、より詳しい内容を知ることができます。
また、定期的な膣内の状態を知りたい場合は、年に4回のテストが30%引き(一回の検査が99ドル)で受けられるサブスクリプションという選択肢も。
女性の実体験から生まれた
エヴィを創業したのは、プリヤンカ・ジェインとレーン・ブルゼックの二人の女性です。彼女たちは、カリフォルニア州のスタンフォード大学で知り合いました。
二人は「歴史的に見過ごされてきた女性たちを、支援するようなサービス」の開発を目指したといいます。
その中で、女性の健康、特に膣の健康というのは、偏見やタブー視されたりして見過ごされてきたのです。
膣を持つほぼすべての人が、一生のうちに尿路結石、イースト菌感染症、細菌性膣症、その他の膣の病気にかかり、多くの人が再発するものであるのにもかかわらず、誤診が絶えなかったと二人の創業者は語ります。
「私たち2人は、個人的に何年も感染症を繰り返して、誤診や過小診断を受けてきました。症状を「ストレス」のためと診断された経験があるのです。」(プリヤンカ・ジェインとレーン・ブルゼック)
また彼女たちは、誤診が続けられた背景には、医療現場の男女格差があると話します。アメリカでは1993年まで女性が臨床研究に参加することが義務付けられていなかったのです。
そのため二人によると、770以上の病気について、女性は男性よりデータがないために、平均4年も遅く診断される結果になっているといいます。
「医療制度におけるほとんどの意思決定が、中年の中堅の男性を中心としたデータセットに基づいて行われています。そして、女性の体については、まだ解明されていないことがたくさんあります。」(プリヤンカ・ジェイン)
女性の見過ごされてきた健康の分野のデータを集めることで、男女の健康の格差をもなくそうとしているエヴィ。今後、女性のヘルスデータがさらに求められる中で、重要な役割を担っていく企業になりそうです。