「PMDD」を知っていますか?
生理前にむくみや便秘、肌荒れや眠気など様々な体の不調が起こるPMS(月経前症候群)については最近よく聞かれるようになってきました。
PMDDも同様に生理前に不調が起こるという特徴があります。
今回は特にメンタルに症状の出るPMDDについても知っていただけたらと思います。
PMDDを知ることで対処したり治療したりすることもできます。生理前の不調に悩んでいる方はぜひご一読ください。
目次
PMDDとは?おもな症状と原因
PMDDとは Premenstrual Dysphoric Disorder 月経前不快気分障害 です。
PMS(月経前症候群)のうち精神症状が強く出ている状態のものがPMDDと判断されます。
月経のある女性の約70%で月経前の不調を感じ、約1.8〜5.8%がPMDDに当てはまると言われています。
ではPMDDの症状とその原因についてご紹介します。
PMDDの症状
PMDDはおよそ排卵日以降、生理の1〜2週間前から始まり、生理が始まるとともに症状が落ち着いていくという特徴があります。
気分の落ち込み、不安や緊張、イライラが激しく出てしまい人間関係や日常生活に支障が出る状態がPMDDの症状です。
PMDDの原因
PMDDの原因は女性ホルモンのバランスの乱れです。
PMDDの症状が出てくる排卵期から生理が始まるまでの間というのは黄体期と呼ばれ、プロゲステロンという女性ホルモンが増加する時期です。
この女性ホルモンのおかげで子宮内膜は厚くなり、受精卵が着床しやすいように準備をします。
さらに体温を上げたり、乳腺を発達させることで妊娠に備える大切な役割があります。
ところが、この女性ホルモンはむくみや眠気、胸の張りやイライラなど心身症状を引き起こしてしまいます。
これがPMS(月経前症候群)です。このうち、精神症状が重く出ているものがPMDDとなります。
PMSとPMDDとの違い
PMSとPMDDはよく似ていますが、PMDDというのはPMSの延長線上にあり、PMSが進行し特に重症になったものです。
PMSはリラックスをすることでのセルフケアや漢方薬、低用量ピルで治療ができます。
一方、PMDDは精神に強く症状が出るものなので、低用量ピルで生理をコントロールする治療の他に抗うつ薬を使用する治療が必要な場合もあります。
生理前のメンタル不調はPMDD?診断基準でセルフチェック
日本産科婦人科学会のガイドラインではPMDDの診断に以下の基準が定められています。
A.ほとんどの月経周期において、月経開始前最終週に少なくとも5つの症状が認められ、月経開始数日以内に軽快し始め、月経終了後の週には最小限になるか消失する
B.以下の症状のうち、1つまたはそれ以上が存在する
(1)著しい感情の不安定性(例:気分変動:突然悲しくなる、または涙もろくなる、または拒絶に対する敏感さの亢進)
(2)著しいいらだたしさ、怒り、または対人関係の摩擦の増加
(3)著しい抑うつ気分、絶望感、または自己批判的思考
(4)著しい不安、緊張、および/または“高ぶっている”とか“いらだっている”という感覚
C.さらに、以下の症状のうち 1 つ(またはそれ以上)が存在し、上記基準 B の症状と合わせると、症状は 5 つ以上になる
(1)通常の活動(例:仕事、学校、友人、趣味)における興味の減退
(2)集中困難の自覚
(3)倦怠感、易疲労性、または気力の著しい欠如
(4)食欲の著しい変化、過食、または特定の食物への渇望
(5)過眠または不眠
(6)圧倒される、または制御不能という感じ
(7)他の身体症状、例えば、乳房の圧痛または腫脹、関節痛または筋肉痛、“膨らんでいる”感覚、体重増加
D.症状は、臨床的に意味のある苦痛をもたらしたり、仕事、学校、通常の社会活動または他者との関係を妨げたりする(例:社会活動の回避、仕事、学校、または家庭における生産性や能率の低下)
E.この障害は、他の障害、例えばうつ病、パニック症、持続性抑うつ障害(気分変調症)、またはパーソナリティ障害の単なる症状の増悪ではない(これらの障害はいずれも併存する可能性はあるが)
F.基準Aは、2回以上の症状周期にわたり、前方視的に行われる毎日の評価により確認される(注:診断は、この確認に先立ち、暫定的に下されてもよい)
注:基準A~Cの症状は、先行する1年間のほとんどの月経周期で満たされていなければならない
参考:公益社団法人 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン-婦人科外来編2020」
PMDDの治療法
精神症状が強く出ているPMDDは婦人科の他に心療内科などのメンタルクリニックに直接受診することもできます。
漢方薬や低用量ピルも治療として考えられますが、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)という抗うつ剤を服用すると効果がよく出ると言われています。
抗うつ剤と聞くと不安に思うかもしれませんが、産婦人科学会でもPMDDの治療としてすすめられています。
SSRIは、うつ病や不安障害に対して効果が出るまで数週間かかるのと異なり、PMDDは服用してから比較的すぐ効果があらわれるとされています。
本当に悩んでいる方は一度メンタルクリニックに相談してみると良いでしょう。
PMSやPMDDを放置するとどうなる?
つらいPMSやPMDDを放置していても日々のストレスなどで乱れた女性ホルモンのバランスはよくなりません。
それどころか女性ホルモンのバランスの乱れは子宮や卵巣など妊娠するための重要な器官にダメージを蓄積させ、将来の不妊につながる可能性もあります。
いつか子供がほしいと思っている方は早めに婦人科を受診し、生理の悩みを解決しておくことをおすすめします。
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まとめ
生理前の一時期、極端な気分の落ち込みがあり悩んでいる方の中には「もしかしたらうつ病かもしれない」と考えている方もいたかもしれません。
しかし、これは女性ホルモンによる影響である可能性もあります。
つらい症状を我慢せず、まずは婦人科もしくは女性の症状をよく診てくれる心療内科を受診しましょう。
▼参考
日本産婦人科学会 https://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13
名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
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