女性は初潮を迎えてから毎月毎月卵子の元となる細胞から新しい卵子を作り、それが正しく排卵されることで妊娠できるようになっています。
しかし「卵子が育たない」「排卵が起こらない」といった排卵障害は女性の不妊原因として多くみられます。
実際に妊活中や不妊治療中にこの排卵障害を指摘された方も多いのではないでしょうか。
うまく卵子が育たない、排卵されないといった排卵障害で悩んでいる方はその原因と対策について正しく知り、妊娠確率を高めましょう。
目次
卵子が育たない主な4つの原因
卵子が育たない原因には、主に4つあります。
女性ホルモンバランスの乱れ
月経が起こりまた次の月経が起こるまでの1サイクルを4つにすることができます。
この4つの時期は全て女性ホルモンの影響を受けていて、卵子が育つためには脳にある脳下垂体から卵巣へのホルモンの指令が伝わることが重要です。
卵胞期 | 卵胞刺激ホルモン(FSH)によって卵胞内で卵子が成熟+卵胞ホルモン(エストロゲン)によって子宮内膜が厚くなる |
排卵期 | 卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌上昇+黄体化ホルモン(LH)によって、成熟した卵子1つが卵胞を飛び出す(排卵) |
黄体期 | 黄体ホルモン(プロゲステロン)によって、受精に備えて基礎体温上昇などが起こる |
月経期 | 受精が起こらなかった場合、子宮内膜がはがれて月経となる |
1サイクルの中で次々とホルモンの分泌が行われています。
そのため女性ホルモンバランスが乱れていると、上記のサイクルが乱れ、卵子が十分に育たない・排卵が起きないといった症状につながることがあるのです。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢(のう)胞性卵巣症候群というのは20代から40代の女性の5〜8%にみられます。
月経のサイクルの中で、排卵が起こるためにはいくつかの卵胞の中から、1つの卵胞が選ばれ、成長する必要があります。
多嚢胞生卵巣症候群では排卵するための卵胞がなかなか選ばれず、成長が滞り、たくさんの小さな卵胞が卵巣内にとどまってしまう結果、排卵がうまくいかないといった状態です。
排卵が起こらないとその後の黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されず月経がこないようになってしまいます。
多嚢胞性卵巣症候群は若い女性の排卵障害の一因として多く、その原因ははっきりとはわかっていませんが卵巣内での局所的な男性ホルモンの分泌過剰により起こると言われています。
高プロラクチン血症
本来「プロラクチン」という乳腺刺激ホルモンは出産後や授乳中に乳腺を発達させて母乳を出し、排卵を抑え月経が来ないように働くホルモンです。
高プロラクチン血症というのは、妊娠していないのにこのホルモンの数値が高くなって体内で働いてしまうので、排卵を抑制したり黄体の機能不全が起こり不妊の原因となります。
原因不明の場合もありますが、他の症状で服用している薬の影響や、プロラクチンが分泌されている脳の腫瘍、甲状腺の機能の低下などが考えられます。
卵巣機能の低下
加齢に伴って卵巣の機能も徐々に低下していきます。
特に上記のような症状がなくても、卵胞刺激ホルモンなどの数値に異常はなくても卵子が育たなくなる場合もあります。
卵子が育たない場合の治療法や対策
卵子が育たない4つの原因に対する具体的な対策や治療法をご紹介します。
女性ホルモンバランスを整える
多嚢胞性症候群や高プロラクチン血症などの明確な原因がない場合は、女性ホルモンのバランスを整えることが大切です。
まずは生活習慣の改善です。
仕事など忙しさに追われ、体を大事にできていないとホルモンバランスが崩れているかもしれません。
バランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動、ストレスの解消と自分に足りていないものを改善してみましょう。
その他には大豆イソフラボン、エクオール、ビタミンなどを意識した食生活や 温経湯(ウンケイトウ)、当帰芍薬散(トウキシャクヤクトウ)などの漢方薬で女性ホルモンの働きをサポートするのも良いでしょう。
女性ホルモンバランスは、疲労・ストレスなど些細なことで崩れやすいです。
たとえば風邪をひいて熱を出した、といった原因で翌月の生理周期が乱れることも多々あります。
意識して女性ホルモンバランスを整えることで、1ヶ月のサイクルが整い、次のサイクルから正常な排卵に至ることも多いです。
多嚢胞性卵巣症候群の治療
多嚢胞性卵巣症候群は長期間放置すると子宮体がんや耐糖能異常(糖尿病など)のリスクとなる場合があります。
妊娠を希望している場合で極端に月経周期が長い場合は、内服薬や注射薬によって卵子の成長と排卵を促す必要があります。
高プロラクチン血症の治療
ほかの病気での内服薬が原因の場合は該当薬剤の中止、脳の腫瘍が原因の場合はそれを取り除く手術、甲状腺の機能低下が原因であれば甲状腺ホルモンの補充など、そうでなければプロラクチンの数値を下げる薬により治療が行われます。
卵巣機能の低下への対策
加齢による機能低下は根本的な治療がありませんが、妊娠を希望する場合は排卵誘発剤などを使って卵子の成長や排卵を促す治療を行います。
しかしさらに加齢が進むと卵巣の中の卵子そのものが老化することで妊孕力(妊娠する力)が低下してしまいます。
そこで若いうちに妊孕力のある若い卵子を凍結保存しておくことも1つの選択肢になります。
ご自身の卵子を凍結保管できるGrace Bankでは若いうちに卵子を凍結保管しておき、妊娠したいというタイミングで融解し受精卵にして体内に戻すことができます。
卵子凍結保存ができる年齢は、凍結するのは40歳未満・凍結卵子の使用は45~50歳未満までが目安です。
もともと卵子凍結は悪性腫瘍などを患い抗がん剤治療や放射線治療を行う女性が将来妊娠できるように治療前に卵子を残しておけるためのものとして行われてきました。今では将来妊娠を望む健康な女性も保存できるようになりました。
安全に採卵し、マイナス196℃の液体窒素で長期間保管することが可能です。
Grace Bankは確かな実績を持った経験豊富な有名不妊治療クリニックと提携しています。
また従来の不妊クリニックのような小型の液体窒素タンクによる保管とは異なり、国内シェア99%の臍帯血バンクであるステムセル研究所と提携し、今まで20年以上無事故を誇る、同社の専用大型タンクで一括管理をしています。
まとめ
正常に卵子が育ち、毎月整ったタイミングで排卵されるためには女性ホルモンが関係し様々な過程があります。
生活習慣を見直して女性ホルモンのバランスを整えたり、受診して適切な治療を受けたりすることで妊娠確率を高めることが可能になります。
また近年の研究で、妊娠するためには卵子が育ち排卵されるだけでなく、卵子そのものの妊孕力が重要であることがわかってきています。
母体年齢が高くても、体外受精に活用した卵子が若い場合、妊娠率は若い人と大きく変わらないというデータもあります。(※米国CDC、2021)
卵子の妊孕力は、体の年齢とともに低下してしまうので、妊活中や不妊治療中の方は、若いうちに卵子凍結保存を検討するのもおすすめです。
不妊の原因は様々ですが正しく治療をし元気な卵子を育ててあげることで可愛い赤ちゃんに会える日が近づいてきます。
管理栄養士紹介:小林 れい子(こばやし れいこ) 管理栄養士 長野県生まれ、東京農業大学栄養科卒業。保健所の生活改善推進員として、講義と調理講習を行う。この活動が認められ農林水産大臣賞を受ける。その後墨田区公立保育所に勤務、平行して職場内研修の講師を務める。その後は、調理専門学校で講義を行う。長年の保育所での実体験に基づいた乳幼児期の食育活動をライフワークとしている。 |
名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)
杉山産婦人科の医師・培養士による技術を用いた質の高い診療を提供。
将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
スタッフは全員女性。明瞭な料金設定も人気!