女性の社会進出・晩婚化が進み、第1子の平均出産年齢は31.0歳(※)と年々上がっており、高齢出産も珍しくなくなってきました。有名人・著名人の高齢出産のニュースもよく耳にします。「きっと医療も発達してきているだろうからまだ妊娠を焦らなくても…」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。(※参考:令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況)
しかしながら、年を重ねるごとに低下する自然妊娠確率を食い止める方法はありません。また、現代医療をもってしても高齢出産のリスクの要因である「老化した卵子」を若返らせる術はありません。
特に、30代後半になると自然妊娠の確率が低下するだけでなく、流産や子どもの染色体異常、母体リスクの確率まで高まります。将来少しでも妊娠を考えるのであれば、1年でも若いうちに妊娠に向けたアクションが重要なのです。
今回は将来の妊娠に向けた具体的なアクションとして、「卵子凍結」についてご紹介します。また、30代後半でも「卵子凍結」は有効なのか、この点についても解説していきたいと思います。
目次
そもそも高齢出産とは?30代後半からの高齢出産でも自然妊娠はできる?
実は、「高齢出産」に明確な定義はありませんが、一般的に35歳以上の妊婦が初めて出産することを「高齢初産」と言います。(日本産科婦人科学会)では、続いて30代後半の自然妊娠確率を見ていきましょう。
1周期当たりの妊娠率(※1)
- 25歳:25~30%
- 30歳:25~30%
- 35歳:18%
- 40歳:5%
- 45歳:1%
1年間避妊しないで性交渉をした場合の年代別妊娠確率(※2)
- 20~24歳:86%
- 25~29歳:78%
- 30~34歳:63%
- 35~39歳:52%
- 40~44歳:36%
- 45~49歳:5%
- 50歳以上:0%
(※1、※2とも M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition よりデータ引用)
上記のデータのとおり、30歳の妊娠確率は1か月あたり25~30%に対し、35歳になると18%、40歳になると5%まで低下してしまいます。
1年あたりでみても、30代前半(30~34歳)の妊娠確率は63%に対し、30代後半(35~39歳)は52%と、年を重ねるごとに自然妊娠の確率は低下していき、特に30代後半・35歳を境に妊娠確率がガクッと下がってしまうのです。
いまどき高齢出産は珍しくない?
女性の社会進出・晩婚化が進み、第1子の平均出産年齢は31.0歳と年々上がっています。さらに、第1子の出産年齢は、35~39歳が全体の16.7%(※)にあたります。
※ 厚生労働省の人口動態調査 令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況より
このように初産年齢が年々あがっている現在、高齢出産は珍しいことではなくなりました。
ですが、30代後半になると自然妊娠の確率が低下するだけでなく、流産や子どもの染色体異常、母体リスク(妊娠高血圧症候群・前置胎盤・出産時の死亡リスクなど)の確率まで高まります。将来少しでも妊娠を考えるのであれば、1年でも若いうちに妊娠に向けたアクションが重要なのです。
将来の妊娠に向けた具体的なアクション「卵子凍結」とは?
今話題の「卵子凍結」は、出産を希望する女性が 将来の妊娠に備えて、「若く妊娠する能力の高い卵子を凍結保存する」方法です。凍結した卵子は将来、解凍して体外受精に使用できます。女性が年齢を重ねた時においても、採卵当時の若い卵子で体外受精ができるため、不妊治療の成功率を高められることが期待できます。
卵子が若ければ、母体が妊娠適齢期をすぎても、妊娠出産率が高いというデータがあります。(※米CDC、2021)
このように卵子凍結により「卵子の老化」を止めることができますが、卵子凍結においても、妊娠出産の際にかかる母体リスクも考慮して、早めに計画することが重要です。
30代後半でも卵子凍結はできる?卵子凍結の妊娠率は?
まず採卵できる卵子の個数には個人差があります。さらに年齢によって、1回あたりに採卵できる卵子の個数も変わってきます。
令和5年5月末時点で都内の医療機関104か所で実施した調査によると、実際に1回の採卵当たりで凍結できる卵子の数は、30~34歳で10.4個、35歳からはその数は7.8個、40歳以上では5個以下となりました。
卵子凍結によって保存した卵子を使って妊娠・出産するためには、卵子を融解したうえで体外受精を行う必要がありますが、融解の過程で5~20%の割合で卵子が破損してしまうこともあります。また、融解後、精子と受精すると受精卵(胚)になりますが、その受精卵が良好胚であるとは限りません。良好胚が子宮に着床してはじめて「妊娠」となります。
以上を踏まえた卵子凍結での妊娠率は以下のとおりとなります。
◆凍結卵子を融解した時の卵子生存の確率
- 融解後の卵子生存の確率 80〜95%
- その後、精子を注入した場合の受精率 60〜80%
◆未受精卵融解後に、卵子が生存、受精し、質が良好な受精卵が確保できた場合に、卵子10個あたりで妊娠できる確率(※こちらは、採卵時の年齢により割合が異なります。)
- 30歳以下 80%程度
- 31〜34歳 75%程度
- 35〜37歳 53%程度
- 38〜40歳 30%程度
- 41歳以上 20%以下
30代後半でも卵子凍結による妊娠率は30~53%ほどありますが、やはり少しでも早くアクションをするに越したことはないのが事実です。1年でも早く卵子凍結保存をしておくことが、2年後・3年後の体外受精の成功率を大きく左右する可能性があります。
30代後半なら間に合う可能性大!卵子凍結保存には年齢制限がある
卵子の元となる卵胞細胞は、年を重ねると細胞質が老化し、妊娠する力が急激に低下します。排卵が行われても染色体異常があったり、着床しても流産してしまったりという事が多くなってしまいます。残念ながら、卵子の質低下は、35歳頃から加速するといわれています。このことから採卵の年齢制限を40歳未満または40歳前後とするクリニックが多くなっています。
また、母体や胎児のリスクを考慮して、卵子凍結の保存期限を45〜50歳までとするクリニックが多くなっています。(※専門医の判断により採卵を実施できることもありますのでクリニックにご相談ください。)
また、卵子凍結の助成金や不妊治療の保険診療においても年齢制限があります。例えば、東京都の卵子凍結に係る費用の助成制度では、採卵を実施した日における年齢が39歳までの女性を対象としています。
また、体外受精(顕微授精)の保険診療は治療開始時において女性の年齢が43歳未満であることが前提です。さらに、40歳未満の場合胚移植は通算6回まで(1子ごとに)、40歳以上43歳未満の場合通算3回まで(1子ごとに)と年齢によって不妊治療の保険適用回数に制限があります。
このような年齢制限からも卵子凍結をするのであれば少しでも早いアクションが重要と言えます。
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名倉 優子 なぐら ゆうこ
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グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)
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