卵子凍結について

卵子凍結が可能な期間は?何年保存できるの?|費用・痛みについても解説

将来の妊娠に備えて若く妊孕性(妊娠する力)の高い卵子を凍結しておく「卵子凍結」ですが、凍結卵子を保管できる期間は決まっています。

近年の技術進歩により、長期間保存しても凍結卵子が劣化することはほとんどないと言われていますが、保存期間が決まっている理由は、凍結卵子を使って妊娠した場合の母体への負担を考慮してのことです。

自然妊娠の場合でも凍結卵子を使った体外受精の場合でも妊娠後に母体へかかる負担は同様です。そのため、母体が妊娠を維持継続できる年齢が卵子凍結の期間の目安となっています。妊娠出産年齢を考慮すると45歳までの凍結卵子の使用が勧められています。

凍結卵子の保存期間は数年間にも及ぶこともあるため、途中で災害などが起こるリスクを心配される方もいらっしゃるかと思います。

今回は卵子凍結の年齢制限、凍結卵子の保管が可能な期間、採卵・保管にかかる費用、痛みや副作用、起こり得るリスクや対策について詳しく解説していきます。

卵子凍結とは?

卵子凍結とは、将来体外受精することを見据えて、未受精の卵子を凍結保存することです。若いときに卵子を残しておくことが、将来の妊娠の可能性を拡げる選択肢の一つとなります。

まず、不妊治療クリニックでさまざまな検査を行ったのち、年齢や卵巣機能、体の負担や希望を考慮して、排卵誘発を行い採卵します。その後、耐凍剤濃度の高い溶液に卵子をひたし、マイナス196℃の超低温で凍結し、液体窒素タンクの中で保管します。さらに、不妊治療で使用する場合には、保管場所からクリニックまで移送し、使用することになります。

参考)Grace Bank「卵子凍結の意義と可能性とは(動画)」
参考)公益社団法人 日本産婦人科学会 ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ
https://www.jsog.or.jp/modules/committee/index.php?content_id=302

凍結卵子の妊娠率

卵子の状態は実際に採卵しないとわかりません。採卵した直後の卵子は以下の3つに分類され、このうち卵子凍結できるのは成熟卵子のみです。

成熟卵子凍結保管可能35歳以下の場合、採取された卵子の90%程度が成熟卵と予想されます。個人差があり、未成熟卵も成熟卵と同様に多く取れてしまう方もいます。
未成熟卵子採卵後、数時間で成熟卵子になれば凍結保管が可能採卵した卵子の10~15%程度が未成熟卵子です。
変性卵子凍結保管不可受精能のない変性した卵子です。採卵した卵子の5%以下ですが、38歳を越えると変性卵の割合が著明に増加します。

凍結卵子を融解した時の卵子生存の確率

  • 融解後の卵子生存の確率・・・80〜95%
  • その後、精子を注入した場合の受精率・・・60〜80%

◆未受精卵融解後に、卵子が生存、受精し、質が良好な受精卵が確保できた場合に、卵子10個あたりで妊娠できる確率

こちらは、採卵時の年齢により割合が異なります。

  • 30歳以下・・・80%程度
  • 31〜34歳・・・75%程度
  • 35〜37歳・・・53%程度
  • 38〜40歳・・・30%程度
  • 41歳以上・・・20%以下

卵子凍結によって保存した卵子を使って妊娠・出産するためには、卵子と精子とを身体の外で受精する体外受精が必須となります。凍結した卵子は融解の過程で5~20%の割合で変性することがあります。また、融解後、精子と受精すると受精卵(胚)になりますが、その受精卵が良好胚に発育するとは限りません。良好胚が子宮に着床してはじめて「妊娠」となります。

卵子の生存率とその後の着床率を考えると、なるべく若い年齢で卵子凍結を行い、10個以上~できれば20個以上の未受精卵を凍結保存しておくことが望ましいということがわかります。

参考)https://grace-sugiyama.jp/about_freezing

凍結卵子はどうやって保管するの?

採卵した卵子は、高濃度の凍結保護剤を利用し細胞内の水分を除去した上で、固体と液体の中間状態を保ちながら高速で凍結する急速ガラス化法により凍結します。急速ガラス化法により凍結した上で、マイナス196℃の液体窒素内に保存することにより、半永久的にそのままの状態を保つことができます。凍結保管には専用の容器を用います。1本のデバイスと呼ばれる容器に、最大3個の卵子が収容可能です。

凍結卵子の使用方法

凍結した卵子を使用する場合、パートナーの精子が必要となります。パートナーが決定した後の流れは以下のとおりです。

1卵子の融解凍結した卵子を溶かします
2受精融解した卵子とパートナーの精子を受精させます
3培養受精卵を胚移植ができる段階まで管理し育てます
4胚移植受精卵を子宮の中へもどします
5妊娠判定子宮にもどした受精卵が着床し、妊娠しているかどうか、血液中のhCGという着床後に胎盤になる部分から分泌するホルモンを測定し、判断します

凍結した卵子を使用して妊娠するまでの順調な流れは、上記のように進んでいきます。また、卵子の融解から胚移植までは、クリニックごとに決められた料金がかかります。

参考)https://grace-sugiyama.jp/posts/magazine-20230705aftereggfreezing

Grace Bank」で保管した凍結卵子を不妊治療で利用する場合は、マイページから凍結卵子移送申請をします。その後、「Grace Bank」が移送の手配を行います。東京都内であれば約1週間ほどで利用されるクリニックへ凍結卵子を安全な状態でお届けします。凍結卵子は、採卵したクリニックまたは弊社提携クリニックでの利用を推奨しますが、それ以外の希望の不妊治療クリニックでも利用可能です。

凍結卵子の破棄について

凍結卵子の破棄や保管を終了するには、更新料支払い前までに凍結しているクリニック等に連絡をします。「Grace Bank」では更新料の支払いの2ヶ月前までに手続きが必要です。

卵子凍結の年齢制限と推奨年齢

卵子の元となる卵胞細胞は、年を重ねると細胞質が老化し、妊娠する力が急激に低下します。排卵が行われても染色体異常があったり、着床しても流産してしまったりという事が多くなってしまいます。残念ながら、卵子の質低下は、35歳頃から加速するといわれています。40歳くらいまでが妊娠可能性があるとされる年齢なので、 採卵の年齢制限を40歳未満または40歳前後とするクリニックが多くなっています。国内最大級の凍結卵子保存バンク「Grace Bank」では、基本的には採卵をするご年齢を満40歳の誕生日までとさせていただいております。それ以上のご年齢でご希望される場合でも専門医の判断により実施できることもありますので、お気軽にご相談ください。

不妊治療で行われる一般的な体外受精(自己卵子=実年齢)は、卵子の老化などの原因で、年齢が高くなるにつれて妊娠・出産率が下がっていきます。(30歳以下では45%程度→40歳以上では15%まで低下) しかし、若いドナーから卵子提供を受けた場合(つまり若い卵子を提供された場合)、40歳でも出産率が大きく変わらないというデータも報告されています。 つまり、卵子の妊孕性(にんようせい:妊娠する力)の高い20~30代前半くらいまでに卵子凍結をしておけば、40歳前後になって体外受精をする際に、高い成功率が期待出来るということになります。 卵子が若ければ40代の体外受精による出産率は20代と大きく変わらないことがグラフから読み取れます。(米CDC、2013)

凍結卵子の保存期間は「1年更新」

凍結卵子の保存は、1年毎に更新を行っているクリニックが多いです。

また可能であれば、1年ごとの更新時に卵巣年齢ホルモン(AMH)検査および超音波検査を行い、未来の妊娠の可能性について受診いただくことが望ましいでしょう。

凍結卵子保管サービスを提供するGrace Bank」では、これまでクリニック内で小型のタンクに保管されてきた凍結卵子を、液体窒素の自動供給システムと24時間の温度センサーによるモニタリングと監視システムを備えた大型タンクに一括保管することにより、最新鋭の保管体制とコストの削減を実現しました。

凍結卵子の保存期間は最長「満50歳」まで

Grace Bank」では、ご本人のご意向により満50歳の誕生日まで凍結卵子を保管いただけます。ただし、実際に融解して使用する際には、母体の安全を考慮した上で専門医が実施の可否を判断しますので、50歳まで体外受精が行えることを保証するものではありません。

なお、原則として採卵をするご年齢は満40歳の誕生日までとさせていただきます。それ以上のご年齢でご希望される場合、専門医の判断の上で実施できることもあります。

医学的に卵子凍結はどれぐらいの期間可能?

技術の進歩により、卵子の質を劣化させないまま長期間の保存が可能になりました。過去には約14年間凍結保存した卵子から出産した事例もあります。

卵子凍結の費用

卵子凍結保存は不妊治療クリニックでおこなうのが一般的で、下記の流れで進みます。

  1. 診察・検査
  2. 採卵誘発
  3. 採卵
  4. 卵子凍結・保管

このプロセスごとに費用が発生し、不妊治療クリニックや卵子凍結保存バンクへそれぞれ費用を支払います。それでは、具体的に卵子凍結保存にかかる7つの費用についてみていきましょう。

検査費用約10〜30万円不妊治療クリニックなどでの初回の検査料(血液検査・ホルモン検査など)、排卵誘発剤などの処置費用、診察費用などです。
採卵費用約20万円採卵する個数にかかわらず、この金額になります。更に、麻酔希望の場合は、局所麻酔2万円、静脈麻酔5万円が加算されます。
凍結費用約3~12万円試験管1本あたり約3万円(試験管1本に3個まで凍結可)で、4~6個は6万円、7~9個は9万円、10~12個は12万円が目安です。
保存費用年間約5万円年間5万円~/1ケーン(1ケーンで試験管5本=凍結卵子15個)あたりの金額です。
出庫費用3万円程度(都内)保存施設からクリニックまでの移送について、専門業者による移送費用の実費(都内で3万円程度)がかかります。
体外受精費用約50万円/回不妊治療の場合、体外受精にかかる費用は約50万円/回と言われています。
その他の費用不妊治療クリニックによっては、初期費用が必要な場合があります。

渋谷駅から徒歩4分、宮下公園向かいのcocotiビル5階にあるグレイス杉山クリニックSHIBUYAでは、各種検査、排卵誘発剤、局部麻酔、採卵・凍結費用を含む未受精卵凍結(卵子凍結)について、38万円(税込価格41万8千円、初回採卵時)のパッケージ料金で提供しています。さらには、2023年12月1日より凍結個数に応じた返金プランがスタートし、採卵終了後、凍結個数が5個以下だった場合には、採卵日に5万円の返金があります。

国内最大級の凍結卵子保存バンクGrace Bankはこれまでクリニック内で小型のタンクに保管されてきた凍結卵子を、液体窒素の自動供給システムと24時間の温度センサーによるモニタリングと監視システムを備えた大型タンクに一括保管することにより、最新鋭の保管体制とコストの削減を実現しました。凍結卵子保管料は使いやすい価格でサービスを提供しています。

卵子凍結の助成金について

2024年3月現在で国や自治体から助成金(補助金)がでるケースは以下の2つです。

  1. 「小児・AYA世代がん患者等に対する妊孕性温存研究促進事業」
  2. 東京都の「卵子凍結に係る費用助成」

2021年度(令和3年)から厚生労働省より「小児・AYA世代がん患者等に対する妊孕性温存研究促進事業」が開始されました。

これは『将来子供を産み育てることを望む小児・AYA世代(思春期(15歳~)から30歳代までの世代)のがん患者が希望を持ってがん治療に取り組めるように、将来子供を出産することができる可能性を温存するための妊孕性温度療法に係る費用の一部を助成し、その経済的負担の軽減を図る』(厚生労働省HPより)というものです。

国は費用の負担軽減をすることにより、妊孕性温存研究の臨床情報を収集し「妊孕性温存療法」を高めていくことができます。この一環として卵子凍結をする場合は、国や自治体から補助金が出ます。

また2023年度から開始された東京都の「卵子凍結にかかる費用助成」は、将来の妊娠に備える選択肢の一つとして、「卵子凍結に係る費用」及び「凍結卵子を使用した生殖補助医療」を補助する助成制度です。

これまで東京都では、がんの治療のために女性が妊娠するための力(妊孕性:にんようせい)を温存する方法として、卵子凍結への支援をしていましたが、健康な女性の将来への備えとしての卵子凍結を支援するのは初めてです。

対象は東京都に住む18歳から39歳までの女性で、採卵準備までの投薬・採卵。卵子凍結費用に対し、最大で30万円の支援が受けられます。

卵子凍結の痛み・副作用

卵子凍結を行う場合、最初に診察や検査があります。その後、排卵誘発を行い採卵します。採卵によって得られた卵子を凍結し保管します。そして将来妊娠を希望する際に凍結卵子を融解し、体外受精を行ないます。このプロセス中で痛みが生じる可能性があるのは、検査、排卵誘発、採卵、体外受精のときの処置です。

(1)採卵準備の痛み

卵子凍結で採卵するまでには、準備が必要です。そのなかで行う注射は、痛みが伴う場合があります。この注射には、血液検査による注射、排卵誘発剤の注射があります。また、注射による痛み以外にも、排卵誘発剤による頭痛や卵巣が腫れることによる下腹部痛なども起こる可能性があります。

(2)採卵時の痛み

採卵では、超音波画像を見ながら、卵巣に採卵専用の細い針を刺します。卵子の周りの卵胞液とともに卵子を吸引するときに痛みがある場合があります。採卵による痛みは、麻酔を使用することで緩和できます。ただし、採卵後に針を刺したことで卵巣が腫れる痛みがある可能性があります。また、卵子の数が多いと、比例して採卵後の痛みが出やすくなります。

(3)術後の子宮・お腹の腫れ

女性の卵巣は親指大ほどの臓器ですが、その中の卵胞が排卵誘発剤に過剰に刺激されることによって、卵巣がふくれ上がり、お腹や胸に水がたまるなどの症状がおきることがあります。このような症状を卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と呼びます。OHSSが発症すると、採卵前や採卵後に下腹部に違和感や強い痛みを感じることがあります。

グレイスバンクユーザー71名に行ったアンケート調査では、痛みレベルを5段階(※1)で評価する設問では、レベル2と答えた方が最も多く、1~3と評価した方が約6割となりました。痛みが原因で卵子凍結を躊躇されている方も多いなか、実際は小~中程度の痛みと感じられた方が半数以上でした(痛みの感じ方は個人差があります)。

(※1)1が痛みを感じなかった、5が痛みを感じた、の5段階での選択式

卵子凍結の期間中に起こり得るリスク&2つの対策

卵子凍結の期間中に起こり得るリスクとして、人為的ミスによる保存失敗や災害による保管施設の損壊などが挙げられます。保存期間中のリスクに備える2つの対策をご紹介いたします。

高い保管技術をもつ施設に依頼する

Grace Bank」は20年以上無事故の、安心の保管システムを誇るステムセル研究所と連携しています。ステムセル研究所は約90%の株式を東証一部上場企業である株式会社トリムメディカルホールディングスが保有しており、経営基盤が非常に安定しています。

また、同社の保有する生体凍結保管施設は、突然の地震や津波にも強いエリアにあり、最新鋭の凍結保管技術を備え、液体窒素の自動供給システムを採用、バックアップ電源により停電対策も万全です。最新のモニタリング機器を用いてタンク内の温度や液体窒素量を24時間365日、常に監視・記録しており、厳重なセキュリティシステムにより、万が一のとり間違えや紛失を防ぎます。これらのシステムは、国内はもちろん国際レベルの評価も受けており、AABB(アメリカ血液銀行協会)及びISO9001(品質マネジメントシステムに関する国際認証規格)を取得しているほか、国内では一般財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)の審査を経て、保健医療福祉分野のプライバシーマークを取得しています。

ステムセル研究所の信頼性・安全性は凍結卵子保存期間中のリスクに備える対策のひとつとなります。

参考)https://gracebank.jp/system/

万が一のリスク補償が充実した施設に依頼する

株式会社グレイスグループでは、生殖医療の臨床の現場で活躍するトップドクターの団体である一般社団法人日本IVF学会と三井住友海上火災保険株式会社が共同開発した「生殖医療(凍結保管業務)賠償責任保険制度」に加入しています。この保険では、これまでの医師賠償責任ではカバーされていなかった、高度生殖医療に特有の事象、具体的には「凍結保存している精子・卵子・卵巣・受精卵の滅失、破損、汚損、紛失または盗難」が万一起こってしまった場合の損害に対して、保険金が支払われることになります。

お預かりしているみなさまの大切な卵子に万一のことが起こらぬよう、細心の注意を払って安全なオペレーションに努めていますが、転ばぬ先の杖として、このような保険体制をとっております。

凍結期間中のリスク(天災や人為的なミス等)に対する保険制度もリスクに備える対策のひとつとなります。

まとめ

最新技術により、凍結した卵子は保存期間の長さに応じて劣化することはほぼありません。医学的には、14年間保存した凍結卵子で出産した事例もあります。しかし妊娠時の母体年齢などを考慮し、卵子凍結の保存期間は決まっています。Grace Bankの場合、契約上は1年更新、最長満50歳まで凍結卵子をお預かりしております。妊娠出産年齢を考慮すると45歳までの凍結卵子の使用が勧められています。

そして、卵子凍結を保管する際は、安心して長期間の保管を依頼できる施設選びが大切になります。

卵子凍結は体外受精のプロセスの一部で、かつ将来の出産確率を大きく高めることができる安全性の確立された技術です。今の卵子をタイムカプセルで未来の自分に届けられます。卵子凍結で将来の不妊への不安を解消し、あなたらしいライフプランを実現してみてはいかがでしょうか。

監修者

名倉 優子 なぐら ゆうこ

杉山産婦人科 日本産科婦人科学会専門医


杉山産婦人科 (東京都新宿区)

70年あまりの歴史を持ち、過去10000人以上の患者様と向き合ってきた生殖医療専門クリニックのトップ施設。
不妊検診センター、内視鏡手術、体外受精など生殖医療に特化。
新宿駅至近の好立地で、19時まで診療しており、仕事と生殖医療の両立をサポート。

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