卵子凍結について

出産適齢期とは何歳?適齢期を過ぎても妊娠確率を高めることはできる?

将来妊娠をお考えのみなさんにとって「出産適齢期」は大変気になることですね。出産適齢期に生物学的な根拠はあるのでしょうか?出産適齢期を過ぎても妊娠確率を高める方法もご紹介します。

出産適齢期は25~34歳が一般的

出産適齢期に明確な定義はありませんが、25~34歳が一般的といわれています。

生物学的に上記の年齢が適齢と言われる理由は、まず妊娠するための能力である「妊孕性(にんようせい)」(※1)が関係しています。女性・男性の妊孕性に大きくかかわるのが、卵子と精子の年齢です。女性は、35歳をターニングポイントに卵子の老化が加速したり妊娠率が低下し、流産率が上昇します。また、妊娠してからも合併症のリスクが上がります。故に34歳を上限にした出産適齢期の考えが存在するのです。

(※1)妊孕性(にんようせい)とは
妊孕性とは、女性であれば子宮や卵巣、卵子の能力があるか、排卵がきちんとされているか、卵管が通っているか、また男性であれば、精巣や精子の能力があるかどうか、勃起や射精ができているか、とも言いかえることが可能です。

年齢を重ねるとともに、卵子は数・質ともに低下する

近年の研究で、実年齢とともに卵子も老化することで妊孕性が低下することがわかってきました。加齢は卵子そのものの「数」の減少と、妊娠にいたる卵子の「質」の低下、どちらの原因にもなるのです。

数の減少

そもそも、女性の生殖細胞である卵子の数は、母親の胎内にいるときから一生分が蓄えられていて、増えることもありません。加齢によって自然に減少していき、また月経毎に1,000~2,000個の卵子が消滅するといわれています。

卵子の数の自然減少

  • 生まれたとき:100~200万個
  • 10代:30~50万個
  • 20代:10万個
  • 30代:2~3万個
  • 閉経時:1,000個まで減少

質の低下

卵子の数が十分にあっても、妊娠にいたる良質な卵子の数が少ない場合もあります。女性の生涯のうち、卵胞で成長し、実際に排卵される良質な卵子は400~500個といわれます。また、加齢ともに老化した卵子は排卵に至るまで成長するのが難しくなるほか、排卵されても卵子としての機能を失っていることが多くなるようです。特に35歳がターニングポイントと言われていて、老化が加速するといいます。

男性の場合は?

近年の研究では、男性の精子も加齢にともなって数や質(受精卵の細胞分裂を促す機能・運動率・濃度など)が低下することが判明しています。精子のDNA損傷などの質低下は、30代半ば~40代ぐらいから始まると考えられています。DNAが損傷されたものは、卵子同様に、妊娠しにくくなったり流産しやすくなったりすることがあります。また、25歳未満と35歳以上の男性では、1年以内に妊娠へ至る確率が2分の1になるという報告もあります(出典:公益社団法人 日本産婦人科医会)。

日本で出産適齢期に出産した人はどのくらいいるのか?

厚生労働省の人口動態調査(※)によると、2022年に第1子を出産した女性約35万人のうち、25~34歳で第1子を出産している人が全体の約67%と過半数ということがわかります。

  • 19歳以下…1.1%(約4,000人)
  • 20~24歳…10.0%(約3万6,000人)
  • 25~29歳…34.3%(約12万2,000人)
  • 30~34歳…33.4%(約11万9,000人)
  • 35~39歳…16.6%(約5万9,000人)
  • 40~44歳…4.4%(約1万6,000人)
  • 45歳以上…0.2%(約700人)

※出典:令和4年 厚生労働省「人口動態統計月報年計(概数)」

出産適齢期を過ぎても妊娠確率を高める方法は?

男性の場合

精子検査を行う(不妊治療クリニックや泌尿器科で可能)ことで、ご自分の状態を知ることが大切です。また、精子の質の低下を招く生活習慣(ストレス、喫煙、過度な飲酒、長風呂など)を改めることが必要になります。

女性の場合

女性ホルモンのバランスを整えて、妊娠する力を高めておくことが必要です。男性同様、疲労回復、十分な睡眠、栄養バランス、リラックスを意識することで、自律神経を整えることを心掛けることが効果的です。また、近年大変注目を集めている「卵子凍結保存」があります。

「卵子凍結保存」について

卵子凍結保存は、卵子年齢が若く妊娠力の高いうちに質の高い卵子を凍結保存し、将来の体外受精などの成功率を高める方法として注目を集めています。卵子が若ければ、母体が妊娠適齢期を過ぎても妊娠出産率が高いというデータがあります(下図参照)。

また、卵子が若ければ、40代の体外受精による出産率は20代と大きく変わりません。(米CDC、2013)

Grace Bankホームページより抜粋(https://gracebank.jp/guide/#p_guide03

次に、卵子凍結保存の仕組みを簡単にご紹介します。
まず、不妊治療クリニックでさまざまな検査を行ったのち、年齢や卵巣機能、体の負担やご本人の希望を考慮して、排卵誘発を行い採卵します。その後、耐凍剤濃度の高い溶液に卵子をひたし、マイナス196℃の超低温で凍結し、液体窒素タンクの中で保管します。初診から卵子凍結までの通院回数は、状況により異なりますが、約5~6回と言われています。費用は1回の検査・排卵・凍結費用に30~50万、保管費用は、初期費用に加えて年間3~5万円かかります(状況、クリニックにより変動します)。

Grace Bankでは、全国に組織化された、国内最高峰の厳選クリニックのネットワークがございます。また排卵した後の卵子は、さい帯血の凍結保管システムを20年以上無事故で運用してきたステムセル研究所にて保管し、安心の保管システムを構築しています。

ただ、卵子の年齢は止められても、母体の年齢は止められません。妊娠・出産は、女性にとって体や心への負担が大変大きく、その後の子育ても考慮して、早めに計画することが大切かと思います。また、卵子凍結保存にも年齢制限があり、採卵は40歳未満まで・凍結卵子の利用は50歳未満が目安ですので、ご注意ください。

まとめ

出産適齢期は25~35歳といわれますが、この時期は社会的に活躍の幅が広がったり、大切にしたい仕事も増える頃です。自分を取り巻くさまざまな環境を考えると、出産適齢期に必ずしも出産できるとは限らないのが現実です。そんな折に、ひとつの選択肢として卵子凍結保存があることをご検討いただけると、何かのお役に立てるかもしれません。

より詳しくご案内がホームページにございますのでぜひご覧ください。

▼参考文献
誰も教えてくれなかった卵子の話 杉本公平・鴨下桂子 著 集英社
赤ちゃんがほしいときに読む本 宮内彰人・笠井靖代 監修 ナツメ社

監修者

名倉 優子 なぐら ゆうこ

杉山産婦人科 日本産科婦人科学会専門医


杉山産婦人科 (東京都新宿区)

70年あまりの歴史を持ち、過去10000人以上の患者様と向き合ってきた生殖医療専門クリニックのトップ施設。
不妊検診センター、内視鏡手術、体外受精など生殖医療に特化。
新宿駅至近の好立地で、19時まで診療しており、仕事と生殖医療の両立をサポート。

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