ドクターインタビュー

医療法人社団 生新会 木場公園クリニック 吉田淳院長|「人を診る」を信念に、女性不妊・男性不妊の連携した治療を提供

吉田院長は、不妊症を夫婦の問題と捉え、女性不妊症も男性不妊症も両方診療できるクリニックとして、医療法人社団 生新会 木場公園クリニックを1999年に開業しました。「とにかく前へ進んできた」とこれまでの歩みを振り返られる吉田院長は、開業してからもなお、患者さんへより良い診療と環境を提供するために、前へと進み続けています。

プライベートと仕事とはしっかりと分け、ストレスをうまく解消しているという吉田院長。趣味のトレイルランニングでは160kmの山道を41時間で完走するなど過酷なレースに挑まれています。仕事においては、採卵や精巣内精子採取術の実績を積み、開業当時に目標としていた件数を2022年末時点ですでに達成されました。多忙の中で、仕事にも趣味にも全力で取り組む背景には、空いた時間を有効活用するのが得意という優れたタイムマネジメント能力があってこそかもしれません。

吉田院長が生殖医療に携わるようになった経緯やクリニックの特徴についてお話を伺い、不妊治療を考えている方へのメッセージをいただきました。

人のつながりを深くするお産に魅せられて

医者をめざしたとき、最初は外科医になりたいと思っていました。しかし、大学の臨床実習で内科や呼吸器科、整形外科など、さまざまな診療科を経験したときに、病気ではないお産という新しい生命が誕生する瞬間に関わる産婦人科が、自分には合っていると感じたのです。今でこそ、私は生殖医療を専門的に行っていますが、生殖医療に携わりたくて産婦人科医になったのではなく、とにかくお産に関わること、妊婦さんに関わることが好きという気持ちがあって、産婦人科医になりました。

大学卒業後は東京警察病院産婦人科で5年間勤務し、日本産婦人科学会認定医(現・日本産科婦人科学会専門医)を取得後に、葛西にある池下レディースチャイルドクリニックで勤務しました。

東京警察病院時代に1人目のお産を取り上げた方の中には、2人目、3人目も私に診て欲しいといって、伊東市や藤沢市から葛西のクリニックまで足を運んでくださる患者さんもいらっしゃいました。そういった経験をすると、お産というものは、患者さんとのつながりが深いものだと改めて感じます。

あと、私が医師1年目のときに手術を担当させていただいた患者さんが、今でも私のもとへ通ってくださっています。現在は80代になられた患者さんと「お互い長生きしましょうね」なんて言いながら、長く診させていただけているのは、人とのつながりを大事にするスタンスを守り続けてきたからこそだと思います。

私は医師になったときから、「患者さんと同じ目線に立ち、寄り添う診療」をモットーとしてきました。患者さんを診させていただいているという気持ちは今でも変わりません。これまで関わってきたすべての患者さんに学ばせていただいてきたことに感謝しています。

多くの学びを得たラリー競技を経て、生殖医療の道へ

私にはどうしてもやりたかった趣味がありました。大学時代に熱中していたラリーという競技です。本格的にラリーに取り組み、世界選手権に出場したいという想いを叶えるために、医師になって5年経った頃、バイトをしながらラリーのレースに出場する生活を始めました。

ラリー競技は、山道を車で駆け抜ける競技で、時速180kmで砂利道を下っていくこともあります。0.1秒間というまばたきする一瞬の間に、5m車は進みます。0.1秒ブレーキングが遅れると、山から転落するリスクもあり、常に命がけの状況です。実際に選手が亡くなることもあるくらい、危険と隣り合わせの競技に打ち込んでいました。そのような過酷な状況下でラリーに取り組んできたため、1秒1秒を大切にしていきたいと思うようになり、診療においても一瞬一瞬を大事にして患者さんに向き合っています。

そのほかにもラリーは、人生を含め、私にたくさんのことを教えてくれました。私はアマチュアとして活動していたので、自費で自分のチームをつくり、参加する必要がありました。イギリスで行われるレースに出場する際には、日本でチームを組むとイギリスに渡航するだけで費用がかかるので、チームメンバーはイギリスで調達し、10人中私を除く9人がイギリス人というチームを運営していました。このチームづくりを通して、現在のクリニックでの仕事にもつながるような、チームリーダーとしての在り方や、人を雇用するためのスキルを学びました。

その後、日本に戻ってきて出会ったのが生殖医療です。東京大学の矢野先生からの「体外受精を見たことある?」という言葉をきっかけに、生殖医療の世界に足を踏み入れました。それがちょうど医師になって7、8年目の頃です。ラリーもやめて生殖医療について一生懸命学び、ゼロだった知識をどんどん増やしていきました。それまでラリーに向けてきた情熱を、すべて生殖医療に注ぎ込み、現在に至ります。

そして、生殖医療の診療を行う中で違和感を覚えたのが、不妊治療は夫婦の治療であるはずなのに、女性しか診ていないということです。それから、男性不妊症について知りたいと思うようになりました。

そこで、男性不妊症の勉強をするために、現在の東邦大学医療センター大森病院の泌尿器科に見学に行きました。当初は2日間の見学の予定だったのですが、最終日に教授と出前の食事をしているときに、「ここで男性不妊症の勉強をしないか」とお声がけいただいたのです。そのときのことは今でもよく覚えています。そのお声がけが転機となり、特別大学院研究生として東邦大学の泌尿器科学第一講座で男性不妊症について学ぶことになりました。

そこから約5年間、産婦人科の診療を週3日、当直を週2日、男性不妊症の診療を週3日というスケジュールをこなし、医学博士を取得しました。この経験によって、女性不妊症と男性不妊症の両方を診察・治療できるようになり、木場公園クリニックの開業に至ったのです。

木場公園クリニック 6F待合・受付

女性不妊症も男性不妊症も両方診療するクリニック

私たちのクリニックは、体外受精、顕微授精に特化したクリニックです。いちばんの強みは、1人の医師が女性の不妊症にも男性の不妊症にも対応でき、これまでの豊かな治療経験を活かした診療を提供している点です。

お子さん連れの方とお子さん連れではない方との診療空間を分けているのも当クリニックの大きな特徴のひとつです。茨城県つくば市にあるつくば木場公園クリニックでは、1人目不妊治療の方と2人目不妊治療の方とで駐車場から入り口を別々に設けて、クリニックの建物に入る動線を分けています。東京の木場公園クリニックでは、7階に子連れ専用フロアをつくり、お子さん連れの方も1人目不妊の方も来院しやすい環境を整えています。

あと、診療においては、できる限り映像を使用して、実際の様子をご確認いただきながら、視覚的にわかりやすい説明を大切にしています。受精卵を育てるための培養器は、カメラ内蔵のタイムラプスインキュベーターを導入して、外気に触れることなく胚の発育過程の確認が可能です。10分おきに胚を撮影した映像を診察室でも映し出せるので、リアルタイムで胚の分割の様子を見ていただけます。

木場公園クリニック 培養室の様子

卵子凍結を一般的な選択肢に

私たちのクリニックではさまざまな治療方法で、その方に合った治療の提供に努めており、選択肢のひとつとして、卵子凍結も行っています。

卵子凍結は、年齢とともに卵子の質が低下していくことを理解すれば、少子化対策として必要な方法だと考えます。従来の緩慢凍結法に比べて、ガラス化凍結法の成績が上がってきている現状をふまえても、コモンセンスとなるしかないと思っています。

凍結卵子の保管については、クリニックにかかる負担を考慮すると、専用機関で一括して管理した方が良いと考えます。保管していた凍結卵子を、患者さんが治療を受けたい医療機関に持っていき、融解して治療するという仕組みをつくることができれば、患者さんの選択肢が増えて、治療を受けやすくなると思います。

卵子凍結や精子凍結がどのようなものかを理解している方も増えてきており、一般的な常識として世の中に浸透しつつあると思います。海外では、卵子凍結を福利厚生として導入する海外企業も増えてきています。日本でも、企業の福利厚生サービスとして、卵子凍結を広げていく必要があるでしょう。グレイスバンクのように、企業として、卵子凍結保管サービスの提供に挑戦するというのは非常に理にかなっていると思います。

木場公園クリニック 5階採卵・肺移植フロア エントランス

不妊治療は余白を残して臨むことも大切

不妊治療において大切なのは、よい身体づくりとストレスコントロールです。卵子や精子は、自分の身体でつくられるので、質の良い卵子や精子をつくるために、生活習慣の改善を意識しましょう。スイミングなどの軽めの運動や栄養バランスを考えた食事、十分な睡眠を意識して身体を整えるとともに、身体を冷やさない、ストレスをため込まないといった工夫も必要です。

あと、患者さんご自身は、不妊治療に全力を注がないことも大事です。もちろん私たちは一生懸命に全力で患者さんをサポートしますが、患者さんが不妊治療に全力を注いで息抜きを全くなくしてしまうと、息切れしてしまいます。不妊治療に向けるベクトルは7割程度にとどめておき、2割、3割は遊びをもたせるくらいがちょうどよいと私は思っています。

当院では、「人が人を診る」という信念のもと、患者さんに対する尊厳と共感を持ち、お一人お一人に合ったかたちでサポートしてまいります。これからもカップルで受診していただきやすい環境を整え、これまで培ってきた女性不妊症、男性不妊症の数多くの経験と知識を活かしたさまざまな治療方法を提供してまいります。さらなる進化・改善をめざして、より快適な診療環境とより良い治療成績を追求し続けていきます。

※この記事は2023年8月のインタビューを元にしています。最新の情報はクリニックHPをご覧ください。

※医療法人社団 生新会 木場公園クリニックのHPはこちら:https://kiba-park.jp/

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