女性の健康・妊活

高齢出産のリスクとリスクを避けるために気をつけたいこと

初めての出産、かつ高齢出産で安心な妊娠生活やお産ができるか不安な人へ、今回は高齢出産のリスクとリスクを避けるために気をつけたいことを、「妊娠中」「出産」「産後」の段階別にご紹介します。

「高齢出産」とは?

そもそも「高齢出産」は、医学的な用語ではありませんが、35歳以上の妊婦が初めて出産することを一般的に「高齢出産」といいます。また、「高齢妊産婦」と呼ぶ場合もあります。(日本産婦人科学会)

「高齢出産」で高まる5つのリスク

年齢に関わらず、常にリスクが伴う「出産」ですが、「高齢出産」になると20代頃の出産に比べ、5つのリスクが高まるといわれています。

流産のリスク

「高齢出産」では流産のリスクが高くなるといわれています。35歳以上の流産確率(平均)は約24%で年齢とともに確率は高くなるのがわかります。

流産率/総妊娠率

  • 30歳:16.8%
  • 31歳:17.6%
  • 32歳:17.0%
  • 33歳:18.2%
  • 34歳:18.8%
  • 35歳:20.1%
  • 36歳:22.8%
  • 37歳:23.9%
  • 38歳:26.2%
  • 39歳:29.6%

出典:日本産科婦人科学会 ARTデータブック2018

子供に障害があらわれる確率が高くなる

次に、「子供に障害があらわれる確率が高くなる」といわれています。35歳以上のダウン症候群の発症率は、20代頃に比べて高い数値となっています。

女性の年齢と子どもの染色体異常の頻度

女性の年齢ダウン症候群の子が生まれる頻度染色体異常をもつ子が生まれる頻度
出生人数あたり出生千対出生人数あたり出生千対
20歳1/16670.61/5261.9
25歳1/12500.81/4762.1
30歳1/9521.11/3842.6
35歳1/3852.61/1925.2
40歳1/1069.41/6615.2
45歳1/3033.31/2147.6
48歳1/1471.41/10100.0

出典:「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」2013|厚生労働省より

母体の妊娠高血圧症候群のリスクが高くなる

また、「母体の妊娠高血圧症候群のリスクが高くなる」といわれています。34歳頃から徐々に、発症頻度が高くなります。妊娠高血圧症候群は、母体死亡や胎児新生児の死亡リスクにつながることが懸念されます。

画像出典:「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」2013|厚生労働省より

前置胎盤のリスク

更に、「前置胎盤のリスク」が高くなると言われています。年齢が上がるにつれて、前置胎盤の発症頻度が高くなり、この前置胎盤は、分娩時の大出血による母体死亡や胎児新生児の死亡リスクにつながることもあります。

画像出典:「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」2013|厚生労働省より

出産時の死亡リスクが高くなる

最後に、「妊産婦死亡率」が高くなることが挙げられます。37歳頃から妊産婦死亡率は高くなります。(産婦死亡率とは、年間妊産婦死亡数の累計(平成14~23年)を年間出産数(出生数+妊娠満12週以後の死産数)の累計 (平成14~23年)で割ったもの(出産十万対))。 

画像出典:「不妊に悩む方への特定治療支援事業等のあり方に関する検討会」2013|厚生労働省より

「妊娠初期」「中期」「後期」「出産」「産後」ごとに気をつけたいこと

確かに不安な事も多い高齢出産…しかし、日常生活においてより配慮したり、気を付けることで避けられるリスクもあります。妊娠初期、中期、後期、出産、そして産後と時系列で考えていきます。

妊娠初期

つわりの症状が出始めたり、ホルモンの影響で便秘になったり、様々な体の変化に驚く時期です。同時に、赤ちゃんの体は妊娠2月目には「胎芽」と呼ばれる1~13㎜位の大きさから、妊娠3月目には、頭、足、胴が発達して三頭身になり「胎児」と呼ばれるようになります。赤ちゃんの中枢神経や心臓、消化器などの各器官が形成される大切な時期でもあります。

高齢出産の場合は、特に体に過度な負担がかからないよう、長時間の立ち仕事、無理な運動を避けて、流産や切迫早産の予防をしましょう。また、「食べづわり」でお悩みの方もいらっしゃるかもしれませんが、可能な範囲で、塩分・糖分の摂り過ぎには気を付け、妊娠高血圧症候群(※1)の予防につなげましょう。

※1  妊娠高血圧症候群とは
妊娠時に高血圧を発症した場合、妊娠高血圧症候群といいます。妊娠前から高血圧を認める場合、もしくは妊娠20週までに高血圧を認める場合を高血圧合併妊娠と呼びます。この病気は、妊婦さん約20人に1人の割合で起こり、早発型と呼ばれる妊娠34週未満で発症した場合、重症化しやすく注意が必要といわれています。重症になると、お母さんに血圧上昇、蛋白尿に加えてけいれん発作、脳出血、肝臓や腎臓の機能障害などを引き起こすことがあります。また赤ちゃんの発育が悪くなったり、胎盤が子宮の壁からはがれて赤ちゃんに酸素が届かなくなり(常位胎盤早期剝離)、赤ちゃんの状態が悪くなり、場合によっては赤ちゃんが亡くなってしまうことがあるなど、お母さん赤ちゃんとも大変危険な状態となることがあります。
参考:妊娠高血圧症候群|公益社団法人 日本産科婦人科学会 (jsog.or.jp)

妊娠中期

妊娠中期は「安定期」と呼ばれることもあり、つわりの症状も和らぎはじめ、妊娠生活を楽しむ気持ちが膨らむ方も多いかもしれません。おなかの赤ちゃんも、消化器が発達して、体の細部が発育したり、骨や筋肉が成長し、大きな動きができるようになる頃といわれています。この時期においても、妊娠初期同様、体に過度な負担がかかることは避け、無理な運動や、長時間の立ち仕事は避けましょう。また、おなかが大きくなってくる頃でもありますので、腰痛、座骨神経痛などにも注意しましょう。さらに、つわりが収まると、食欲が増してきますので、食生活には注意して、過度の体重の増加を予防したり、妊娠高血圧症候群にも気を付けましょう。

妊娠後期

おなかが大きくなり、足元が見えにくくなったり、子宮もどんどん大きくなるので、胃が圧迫されてムカムカしたり…出産が近いことが実感できる時期でもあります。赤ちゃんの体も、皮下脂肪がつき、体つきが丸みを帯びてピンク色の肌になります。体が四頭身となり、内臓や神経系も成熟してきます。この時期においては、スムーズなお産を促進するために、適度な運動を心掛けておくことが大切といわれています。また、引き続き妊娠高血圧症候群や肥満の予防に努めましょう。また、産後の生活をよりイメージしやすくするために、病院の両親学級などに参加しましょう。最近では、オンライン型の両親学級も増えているようなので、積極的に参加してみるのも良いかと思います。

出産

緊急で帝王切開になる場合や、早産の場合を想定して、早めの入院出産準備に取り掛かりましょう。出産のために必要なバッグをいつも見える位置に準備しておけば、万が一急に病院に行く際も慌てずに済みます。

産後

出産では、大変大きな体力と精神力を費やします。産後は、睡眠も十分にとれない場合も多く、ホルモンバランスの急激な変化も加わり、精神的・肉体的負担はピークに達するかと思われます。夫、親族、自治体や民間の子育て支援などのサポートを躊躇せずに頼ることが必要な時期です。特に高齢出産の場合は、体力回復、疲労回復に時間が必要ですので、より多くの方法を調べたり、サポートを受けることで、この時期を乗り越えていただきたいと思います。

まとめ

安心した妊娠生活やお産をするためには、心配なことがあれば、妊婦健診などで、医師・助産師に相談することもとても大切です。また、高齢出産の場合は、リスクにどうしても目がいってしまいますが、豊富な人生経験を生かして、より慎重に、より配慮された生活を意識すれば、より安心した妊娠生活や出産をすることが可能です。

高齢出産には様々なリスクがつきものです。加齢の影響でリスクが高くなることは仕方ありません。しかし、妊婦健診でリスクを早期に発見し、対応できることもあります。妊娠中はきちんと健診を受けましょう。一番大切なことはお母さんが心身ともに健康な状態で赤ちゃんを迎えてあげることです。

リスクの中には卵子の質の低下によって生じるものもあります。母体の高齢化とともに卵子も老化します。若く妊孕力の高いうちに卵子を凍結保存しておくことも、将来の体外受精の成功率を高める方法のひとつです。卵子が若ければ、母体が妊娠適齢期をすぎても、妊娠出産率が高いというデータがあります。卵子が若ければ、40代の体外受精による出産率は20代と大きく変わりません。(米CDC、2021)

※自社HPより抜粋(https://gracebank.jp

将来妊娠をお考え方は、卵子凍結保存もひとつの選択肢として検討してみるのはいかがでしょうか。

監修者

名倉 優子 なぐら ゆうこ

日本産科婦人科学会専門医


グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)

杉山産婦人科の医師・培養士による技術を用いた質の高い診療を提供。
将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
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