2月28日、女性特有の健康課題とキャリアについて、企業D&I・人事担当者向けの勉強会が開かれました。
任意団体「みんリプ!みんなで知ろうSRHR」、一般社団法人「Woman’s ways」、グレイスグループが、女性のカラダにまつわる情報をしっかりと理解してもらい、全ての女性が生き生きと人生を謳歌しながら、社会の発展に貢献できる環境を整えてもらおうと企画したものです。
イベントには元バドミントン日本代表で、Woman’s ways代表の潮田玲子さん、元バレーボール日本代表でWoman’s ways理事の狩野舞子さん、みんリプ!共同代表の宋美玄医師やグレイス杉山クリニックSHIBUYA院長・岡田有香医師が出席しました。
今回のテーマにSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ、性や生殖に関する健康と権利)という考え方があります。
- S(セクシュアル・ヘルス):自分の「性」について心身ともに満たされ社会的にも認められていること
- R(セクシュアル・ライツ):「性」のあり方を自分で決める権利
- H(リプロダクティブ・ヘルス):妊娠したい/したくない、産む/産まない、いずれの選択においても心身ともに健康でいられること
- R(リプロダクティブ・ライツ):産む/産まない、いつ/何人子供を持つか、妊娠・出産・中絶について充分な情報を得て自分で決める権利
SRHRとは、心身ともに満たされた状態で活き活きと生涯を過ごすために、WHO(世界保健機関)や内閣府によっても提唱されている重要な考え方です。
その一方で、日本では世界的に見てもSRHR分野での取り組みが遅れているのが実情です。日本の現状を知って、これからどうしていけばいいのか。勉強会の内容を前・後編にわたって2回でお伝えします。
知らずに「子宮内膜症」
司会者:女性の体の不調など、現役時代にどういうことがあったのか、どのように体調を整えることでパフォーマンスが上がるのでしょう。
潮田:初めて体の不調を感じたのは18歳、オランダに遠征に行った時でした。発熱して、腹痛になりました。10日くらい気合いと根性で乗り切ったんです。
日本で病院に行ったら、盲腸だと言われたけれど、盲腸の手術をしても改善しない。
原因は婦人科系かということで、婦人科に行ってみてもらったら、子宮内膜症という症状でした。10代でまさかそんな婦人科の病気になるなんてというのもあって、初めてハッとしたのは覚えています。
司会者:病気であるとわからなかったと。
宋:アスリートは痛みを我慢したりというのがあるかも。
ピルとか飲めば内膜症の予防になるけれど、スポーツをしている人の場合、どういう薬がドーピングに引っかかるというのがわからないので、体が悲鳴をあげるまで生理痛はこんなものだと思っていたという人がいますね。
狩野:教えてもらえることでもないので、そういうものだと思ってて。
潮田:我慢するのが当たり前だと思ってた…
狩野:他のメンバーに痛いとか言えなかったです。生理だというのも言わなかったし、調子が悪いのも生理のせいにしたくないという思いがあって。薬飲めば楽になるしと思っていたんですね。
アスリートもピルを活用
宋:日本では生理のことは秘めたものというか、タブー扱いで、性教育も十分な知識がないままです。
外国では性教育をしっかり行っていたり、ピルなどもっとアクセスしやすかったりします。アスリートも外国では整理周期を管理していたりとかするのでしょうか?
狩野:ピルを活用している選手多くて。その頃は23歳で海外リーグにいましたが、ピルを手に入れやすい環境だったり、勉強が進んでいるなと思った記憶があります。
司会者:ピルは活用したのでしょうか?
狩野:私は、ピルが体に合わず副作用が大きかったので、飲んでる方がキツくなってしまってやめてしまったんです。もしかしたら別のものを試せばよかったのかも。
潮田:海外ではピルもあるし、コーチ陣とのコミュニケーションをオープンにしています。
練習の時も監督やコーチに、「これをしなさい」という時に、「今日はできない」と言えなかったんです。それでさえも言えないのに…海外ではリクエストを言える関係性があることに、いいなと思いました。
遅れる性教育
司会者:ここまで言えないのはどうしてなのでしょう?
宋:性教育がないことが原因です。
初経が来るというのは、大人になったから来ますと教わります。子供を産めるようになっておめでとう、という訳です。
そして実際には31歳までの20年くらい、出産をしない人は多い。その間、生理は何のためにあるのという説明がないんです。
一回一回の生理は、健康にいいものではありません。痛みがあり、貧血する人もいるし、卵管から月経の血液が逆流したり、子宮内膜症などもあります。
生理の意味だけでなく、生理と付き合う方法は習わないのです。婦人科にも行きませんよね。
女性の健康についてセミナーすると、幅広い年齢層の人がそうだったのかと反応するんです。
男女共に健康のことを知ってほしいですし、企業が学びのアップデートの場所を作るのは社会的意義があると思います。
生理の数は昔の5倍に
司会者:昔と比べて、生理の回数が4〜5倍多くなっているという事実に驚きました。婦人科系の病気とのつながりがあるのでしょうか。
岡田:婦人科系の病気に関係があると言われていますね。貧血になったり、生理痛など必ずつながっていると思います。
司会者:予防はピルなのでしょうか?
岡田:子宮内膜症の発症の予防、治療薬としても使われているので重要な手段です。飲めない人もいるのですが、そういう方には鎮痛剤、漢方という方法もあります。
司会者:ピルの活用にハードルはありますか?
潮田:ピルを処方してもらおうとすると、保険を使って3カ月分しかもらえないんです。
遠征して日本に帰ってくると、貴重な休みを使って婦人科に行くとなるとストレスです。飲みたいけれど、わざわざ産婦人科に行くのは大変だし、ずっと続ける難しさは感じていました。
偏見の強いピル
司会者:ピル=避妊、みたいなものがあり、簡単に飲んでいいのかと…
宋:ピルは避妊にも使うし、生理日をずらしたりするためにも使います。
エストロゲンとプロゲステロンというホルモンで排卵を邪魔するわけです。
私は10年以上も情報啓発していますが、10年以上前はピルというと副作用というのを考えたり、ピルの話をすると、その部分はカットされたりしました。
それくらい偏見が強かったんですね。でもこの5年くらい、ネットメディアの台頭などで、ピルは普通だよねとなってきた経緯があります。
潮田:誰かに見られてるんじゃないかと、産婦人科でキョロキョロしてたんです。妊娠したら行くみたいな感じで。まさか産婦人科に予防で行くと思ってなかったんです。
宋:婦人科も入りづらかったりしますよね。
私の下の世代は女性医師が増えてきていて、産婦人科に入りづらいというのは変わってきてると思いますよ。学生も来ていますから。親と一緒に生理痛がある人は来たりします。
かかりつけの医師を持とう
司会者:妊娠したら行く場所みたいなイメージがあって、かかりつけの医師を見つける時に何て言ったらいいのでしょう?定期検診で来ましたと言えばいいのでしょうか?
宋:何かがあればそれを言ってもらったらいいし、定期的なチェックに来ました、ここにかかりつけたいです、など理由はなんでも大丈夫です。
司会者:狩野さんも診てもらったりしていますか?
狩野:レディースチェックを1年に1度受けるようにしています。
宋:ちょうどいいと思いますね。
狩野:卵巣嚢腫にかかったことがあります。怪我をして、体調が何かおかしいと思って受診したんですが、少し違和感があっただけでも卵巣が腫れていてすぐに手術ということになったんです。
きっかけがなかったら行かなかったので、この一歩は大きいよねって思います。
潮田:チェックだけに産婦人科に行くのはいつからでしょう?
宋:思春期からをお薦めしますね。