卵子凍結のための採卵がうまくいかなかった。空胞だった、未熟卵だった、卵子が一つも採れなかったなど、その理由は様々で、もしかしたら「もう無理なのかな」と諦めかけている方もいらっしゃるかもしれません。この記事では、実際に採卵失敗を経験された方の貴重な体験談や、卵子凍結の採卵ができない主な原因と対策をご紹介します。
【体験談】卵子凍結の採卵ができなかった経験からの学びと次への一歩
複数回採卵できなかったけれど諦めなかったDさんの体験談
毎回、期待と不安でいっぱいになりながら採卵台に上がり、結果を聞くたびに絶望的な気持ちになりました。でも諦めずに様々なアプローチを試すことで道が開けました
30代後半のDさんは、将来のために卵子凍結を決意しましたが、最初の3回の採卵では、いずれも「空胞」という結果に終わり、成熟卵を一つも採取できませんでした。
しかし、Dさんは諦めませんでした。担当医と徹底的に話し合い、排卵誘発剤の種類や投与量を細かく調整。さらに、生活習慣の見直しにも真剣に取り組みました。具体的には、バランスの取れた食事、質の良い睡眠、適度な運動を日課としました。体質や反応は人それぞれ異なるため、諦めずに最適な方法を模索し続けることが、次への一歩に繋がるのです。
クリニックを変えて成功したEさんの体験談
クリニックの技術力や医師との相性が、これほど結果を左右するとは思いませんでした。納得できる場所を見つけることが本当に重要だと痛感しました
30代前半のEさんは、最初のクリニックで2回採卵を試みましたが、いずれも未熟卵しか採れず、凍結に至りませんでした。クリニックからは「体質の問題」と説明されましたが、Eさんには納得がいかず、「本当にこれ以上、打つ手はないのだろうか」という疑問が残りました。
そこでEさんは、セカンドオピニオンを求めて別のクリニックを受診することを決意しました。新しいクリニックでは、まず現状の詳しい検査と、これまでの治療履歴を徹底的にヒアリング。その上で、Eさんの卵巣の状態やホルモンバランスに合わせた、より個別化された排卵誘発プロトコルを提案されました。結果として、3回目の採卵で無事に成熟卵を複数個採取することができました。
採卵失敗から自己理解を深めたFさんの体験談
採卵ができなかった経験は、確かに辛く苦しいものでした。でも、それがきっかけで、自分の体と心、そして人生全体を深く見つめ直すことができました。必ずしも卵子凍結に固執するのではなく、自分にとって何が本当に大切なのかを考える貴重な時間になったんです
20代後半のFさんは、若くして卵子凍結を検討しましたが、2回の採卵で卵子が一つも採取できないという結果に直面しました。医学的な検査では特に異常は見当たらず、原因不明と診断され、Fさんは「自分の体はどうなっているんだろう」という深い不安と精神的な疲弊を感じていました。
この経験から、Fさんは採卵という行為そのものだけでなく、自身の体の状態、そして将来のライフプランについて深く考えるようになりました。クリニックのカウンセリングを受け、必ずしも卵子凍結だけが唯一の選択肢ではないこと、そして自分自身の価値観や人生の優先順位を見つめ直す機会を得ました。
卵子凍結の採卵ができない主な原因と解決策
「空胞」のメカニズムと対策
「空胞」とは、超音波検査で卵胞が確認できるにもかかわらず、採卵時にその卵胞から卵子が得られない状態を指します。これは、採卵ができなかったと診断される最も一般的なケースの一つです。空胞が発生する主なメカニズムとしては、以下の要因が考えられます。
- 卵胞液の採取困難: 卵胞内に十分な卵胞液が溜まっていない、または針の挿入が困難で卵胞液がうまく吸引できない場合。
- 卵子の剥離不全: 卵子が卵胞壁からうまく剥がれ落ちておらず、卵胞液と一緒に吸引されない場合。これは、卵子を成熟させるための最終的なホルモン注射(HCGトリガーなど)のタイミングや反応が不十分な場合に起こりやすいとされています。
- 未成熟な卵子: 卵胞内に卵子が存在しても、非常に小さく未成熟であるため、吸引時に確認できない、または損傷しやすい状態である場合。
- 排卵誘発剤への反応性: 使用している排卵誘発剤の種類や投与量が体質に合わず、卵胞が成長しても卵子が適切に成熟しないことがあります。
空胞の発生を減らすための対策は、主に以下のような点が挙げられます。
- HCGトリガーのタイミング不適切:HCGトリガーの投与タイミングをより厳密に調整する。採卵前のホルモン値や卵胞の大きさを細かくモニタリングし、最適な時期を見極めます。
- 排卵誘発剤への反応不足:排卵誘発剤の種類や投与量の見直し。FSH製剤、HMG製剤など異なる薬剤への変更や、投与量の増減を検討します。
- 卵子の剥離不全:GnRHアゴニストを用いたデュアルトリガー(HCGとGnRHアゴニストの併用)など、卵子を卵胞壁から剥がれやすくする工夫を検討します。
- 採卵手技の難しさ:採卵を行う医師の経験や技術も重要です。より経験豊富な医師による採卵や、超音波ガイド下の詳細な確認が求められます。
空胞は医学的な問題であると同時に、採卵の技術的な側面も影響するため、多角的なアプローチでの検討が必要です。
卵子の成熟度不足と未熟卵のリスク
採卵ができたとしても、得られた卵子が凍結や受精に適さない「未熟卵」である場合があります。卵子には、未熟卵(GV期、MI期)と成熟卵(MII期)があり、通常、凍結や体外受精の対象となるのはMII期の成熟卵です。
卵子の成熟度不足が起こる主な原因は以下の通りです。
- 排卵誘発剤への反応不足: 卵巣が排卵誘発剤に十分に反応せず、卵胞は成長しても卵子が最終的な成熟段階に至らないことがあります。
- トリガーのタイミングミス: 卵子を成熟させるための最終的なホルモン注射(HCGトリガーなど)のタイミングが遅すぎたりすると、採卵時に未熟卵が多くなる可能性があります。
- 卵子の質そのものの問題: 加齢やその他の要因により、卵子自体の成熟能力が低下している場合もあります。
未熟卵が採卵された場合、以下のようなリスクが考えられます。
- 凍結・融解後の生存率低下: 未熟卵は成熟卵に比べて凍結・融解に対する耐性が低く、生存率が低下する傾向があります。
- 受精率の低下: 未熟卵は体外受精や顕微授精を行っても、受精に至らない、あるいは異常受精となる可能性が高くなります。
対策としては、排卵誘発の方針の見直し(薬剤の種類、量、期間の調整)や、トリガー注射のタイミングの厳密な管理が重要です。また、一部のクリニックでは、採卵後に未熟卵を体外で成熟させる「卵子成熟培養(IVM)」が試みられることもありますが、全ての未熟卵が成熟するわけではなく、その成功率はまだ限定的です。
卵巣機能とホルモンバランスの問題
卵巣機能の問題
卵巣機能の低下やホルモンバランスの乱れは、卵子の発育や成熟に大きく影響し、結果として採卵の成功率を低下させる原因となります。卵巣機能の低下は主に以下の点があげられます。
- 卵巣予備能の低下: 卵巣内に残っている卵子の数を「卵巣予備能」と呼びます。加齢とともに卵巣予備能は自然に低下し、AMH(抗ミュラー管ホルモン)値の低下として現れます。AMH値が低いと、排卵誘発剤への反応が悪くなり、採卵できる卵子の数が減少したり、空胞のリスクが高まったりします。
- 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS): 卵巣内に小さな卵胞がたくさんできる一方で、それらが十分に成長せず排卵しにくい状態です。排卵誘発剤への反応が過剰になったり、逆に卵子の成熟が不十分になったりすることがあります。
- 卵巣の手術歴: 過去に子宮内膜症や卵巣嚢腫などで卵巣の手術を受けたことがある場合、卵巣組織が損傷し、卵巣機能が低下している可能性があります。
ホルモンバランスの問題
卵子の発育と成熟には、FSH(卵胞刺激ホルモン)、LH(黄体形成ホルモン)、エストロゲン(卵胞ホルモン)など、複数のホルモンが複雑に作用しています。これらのホルモンのバランスが崩れると、卵子の成長が妨げられます。
これらの問題に対する対策としては、個々の患者さんのホルモン値や卵巣の状態に合わせた排卵誘発が不可欠です。例えば、AMH値が低い場合は高用量の誘発剤を使用したり、PCOSの場合は低用量で慎重に誘発したりするなど、きめ細やかな調整が求められます。
体質や年齢による採卵の難しさ
個人の体質や年齢は、卵子の質と量、そして卵巣の反応性に大きく影響し、採卵の成功率を左右する重要な要因となります。女性の年齢は、卵子の質と量に最も大きな影響を与える因子です。年齢が上がるにつれて、以下の変化が見られます。
- 卵子の数の減少: 生まれ持った卵子の数は年齢とともに減少し、卵巣予備能が低下します。
- 卵子の質の低下: 卵子の染色体異常の発生率が増加し、受精・着床・妊娠に至る能力が低下します。これにより、採卵できても未熟卵であったり、凍結に適さない卵子であったりする可能性が高まります。
- 卵巣の反応性の低下: 排卵誘発剤に対する卵巣の反応が悪くなり、同じ量の誘発剤を使用しても採卵できる卵子の数が少なくなったり、卵胞が十分に育たなかったりすることがあります。
特に30代後半から40代にかけて、これらの変化は顕著になります。このため、年齢を考慮した上で、より積極的に排卵誘発の方針を調整したり、複数回の採卵を検討したりする必要があります。年齢以外にも、以下のような体質的な要因が採卵の難しさにつながることがあります。
- 遺伝的要因: 特定の遺伝的素因を持つ場合、卵巣機能が低下しやすいことがあります。
- 基礎疾患: 甲状腺機能異常や糖尿病などの全身疾患、あるいは子宮内膜症などの婦人科疾患が、卵巣機能やホルモンバランスに影響を与えることがあります。
- 生活習慣: 極端な肥満や痩せすぎ、過度なストレス、喫煙、飲酒なども、卵子の質や卵巣機能に悪影響を及ぼす可能性があります。
- 卵巣の位置や癒着: 過去の手術や炎症などにより、卵巣の位置が通常と異なっていたり、周囲の臓器と癒着していたりすると、採卵針の挿入が困難になり、卵子が採取しにくくなることがあります。
これらの体質的な要因に対しては、個別の状況に応じた生活習慣の改善指導や、基礎疾患の治療を並行して行うことが、採卵成功への一助となる場合があります。
クリニックの技術や設備による影響
医師の採卵手技
- 超音波ガイド下の針の操作: 採卵は、超音波画像を見ながら細い針を卵胞に正確に刺し、卵胞液を吸引する繊細な手技です。医師の経験や技術が未熟な場合、針が卵胞を捉えきれなかったり、卵子を損傷させたり、回収漏れが発生したりするリスクがあります。特に、卵巣の位置が深い、癒着がある、卵胞が小さい・少ないといった難しいケースでは、医師の技術がより重要になります。
- 麻酔の管理: 採卵時の痛みを適切に管理する麻酔技術も重要です。麻酔が不十分だと患者さんが動いてしまい、採卵手技が困難になることがあります。
胚培養士の卵子回収技術
- 卵胞液からの卵子発見・回収: 吸引された卵胞液の中から、顕微鏡下で卵子を迅速かつ正確に発見し、回収するのは胚培養士の重要な役割です。経験豊富な胚培養士であれば、微細な卵子や、卵胞液中に紛れやすい卵子も見逃さずに回収できます。
- 卵子の状態評価: 回収した卵子の成熟度や形態を正確に評価する能力も、その後の治療方針を決定する上で不可欠です。
クリニックの設備
- 超音波診断装置の精度: 高解像度の超音波診断装置は、小さな卵胞や、見えにくい位置にある卵胞を正確に描出し、医師の採卵手技をサポートします。
- 採卵針の種類と品質: 患者さんの状態や卵胞の数に応じて、適切な太さや長さの採卵針を使用することが重要です。
- 培養室の環境: 採卵後の卵子を一時的に保管する培養室の環境(温度、湿度、CO2濃度、空気清浄度など)は、卵子の生存と成熟に直接影響します。安定した高品質な培養環境が整っていることは、卵子の質を維持するために不可欠です。
これらの要因は、患者さん自身ではコントロールできない部分が大きいため、信頼できるクリニック選びが極めて重要になります。クリニックの医師や胚培養士の経験、設備投資の状況などを事前に確認することは、採卵の成功率を高める上で非常に有効な対策と言えるでしょう。
まとめ
卵子凍結の採卵ができなかった経験は、心身ともに大きな負担となり得ます。しかし、この記事を通して、それが決して珍しいことではなく、多岐にわたる原因が存在することをご理解いただけたのではないでしょうか。採卵ができなかったという経験は、ご自身の体と向き合い、より良い選択をするための貴重な機会でもあります。この経験を力に変え、希望を捨てずに、ご自身にとって最善の未来を築いていくことを心から応援しています。
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Grace Bank(グレイスバンク)所属スタッフが、グレイスバンクのサービス内容・ご利用の流れ・お手続き・クリニック選び等のご不明な点について個別にお応えします。ぜひご活用ください。
名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)
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