将来への不安を抱え、精子凍結・卵子凍結について考えている方も多いのではないでしょうか?晩婚化やキャリアプランの変化に伴い、妊娠・出産のタイミングをコントロールしたいと考える人が増えています。この記事では、精子凍結・卵子凍結の仕組みやメリット・デメリット、費用を解説します。
目次
精子凍結・卵子凍結とは? 未来への投資で安心を確保
精子凍結と卵子凍結は、将来の妊娠の可能性を維持するための技術です。精子は精巣から採取され、特殊な液体と混ぜて凍結保存されます。一方、卵子凍結は、卵巣から卵子を採取し、同様に凍結保存する技術です。将来、体外受精を行い妊娠することができます。これらの技術は、不妊治療だけでなく、加齢による妊孕性の低下や病気の治療による影響など、様々な理由で将来の妊娠に備えたいと考える人々に選択肢を提供し、安心できる未来設計を可能にします。
精子凍結の仕組みとメリット・デメリット
精子凍結の具体的な手順
精子凍結の手順は、まず禁欲期間(通常2~7日)を経てクリニックで採取を行います。採取方法はマスターベーションが一般的ですが、手術が必要な場合もあります。採取された精子は、感染症などの検査を受け、凍結保護剤と呼ばれる特殊な液体と混ぜ合わせられます。これは、凍結による精子の損傷を防ぐための重要なプロセスです。その後、液体窒素を用いてマイナス196℃で急速凍結し、専用のタンクで長期間保存されます。
精子凍結のメリット
精子凍結のメリットは、将来の妊娠の可能性を維持できることです。加齢や病気、事故などで精子を作る能力が低下したり、失ったりする可能性がある場合でも、凍結保存しておいた精子を使用することで、将来子どもを持つ可能性を残せます。また、がん治療(化学療法や放射線療法)を受ける前に精子を凍結保存することで、治療による生殖機能への影響を回避できる可能性があります。さらに、1回の採精を分割して凍結保管できるため通院の手間を減らすことも可能です。
精子凍結のデメリットとリスク
精子凍結のデメリットとしては、凍結保存費用や維持費用がかかることが挙げられます。また、凍結・融解の過程で一部の精子が損傷する可能性があるため、100%妊娠を保証するものではありません。稀に、凍結保存中に停電などのトラブルで温度管理ができなくなり、精子が使用できなくなるリスクも存在します。さらに、精子の採取方法によっては痛みを伴う場合もあります。
卵子凍結の仕組みとメリット・デメリット
卵子凍結の具体的な手順
卵子凍結は、排卵誘発剤を注射して卵胞を育て、成熟した卵子を腟から針を刺して吸引採取します。採取した卵子は、急速ガラス化法と呼ばれる急速凍結法で凍結保存されます。凍結された卵子は、液体窒素で満たされたタンクの中で長期間保存されます。
卵子凍結のメリット
卵子凍結の最大のメリットは、将来の妊娠の可能性を残せることです。加齢に伴う卵子の老化や、がん治療、子宮内膜症などの病気の影響で将来妊娠が難しくなる可能性がある場合に有効な手段となります。また、結婚や出産のタイミングを自由に選択できるようになり、キャリアプランニングとの両立もしやすくなります。プレコンセプションケアの一環としても注目されています。
卵子凍結のデメリットとリスク
卵子凍結のデメリットとしては、費用が高額であること、ホルモン剤の注射による副作用(腹部の張り、吐き気など)が生じる可能性があること、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)などの合併症のリスクがあることなどが挙げられます。また、卵子の採取は身体的な負担がかかります。さらに、凍結・融解の過程で卵子が損傷する可能性があり、全ての卵子が生存するとは限りません。稀に、凍結保存中に停電などのトラブルで温度管理ができなくなり、卵子が使用できなくなるリスクも存在します。また、凍結卵子を用いた体外受精の妊娠率は卵子を採取した時の年齢に大きく左右されます。
不妊治療における精子凍結・卵子凍結の役割
精子凍結と卵子凍結は、不妊治療において重要な役割を担っており、様々なケースで活用されています。将来の妊娠の可能性を高めるだけでなく、治療の選択肢を広げることにも繋がります。
男性不妊治療における精子凍結
男性不妊治療において、精子凍結は様々な場面で有効な手段となります。特に、抗がん剤治療や放射線治療といった、生殖機能に影響を及ぼす可能性のある治療を受ける前には、精子を保存しておくことが推奨されます。
がん治療前の精子保存
抗がん剤や放射線治療は、精子の生産能力を低下させたり、精子の質を悪化させたりする可能性があります。がん治療前に精子を凍結保存しておくことで、治療後も自身の精子を用いた不妊治療が可能となります。将来、子供を望む際に、治療の影響を最小限に抑えることができます。
女性不妊治療における卵子凍結
女性不妊治療においても、卵子凍結は重要な役割を果たします。加齢による卵子の老化や、病気の治療によって卵巣機能が低下する前に卵子を保存することで、将来の妊娠の可能性を維持することができます。
卵巣機能の低下への対策
加齢に伴い卵子の数は減少し、質も低下していきます。卵巣機能が低下する前に卵子を凍結保存することで、将来、若い頃の卵子を使用して妊娠を試みることが可能となります。また、子宮内膜症や卵巣嚢腫などの婦人科疾患、抗がん剤治療や放射線治療などの影響で卵巣機能が低下する可能性がある場合にも、卵子凍結は有効な手段となります。早発卵巣不全のリスクがある場合にも、卵子凍結が検討されます。
その他、パートナーの都合や仕事などのライフイベントに合わせて妊娠のタイミングを調整したい場合にも、卵子凍結は選択肢の一つとなります。
不妊治療以外の精子凍結・卵子凍結の活用方法
精子凍結・卵子凍結は、現時点における不妊治療だけでなく、将来の妊娠の可能性を広げ、人生設計の選択肢を増やすための手段として、近年注目を集めています。将来使用する目的での精子凍結・卵子凍結は、ライフプランに合わせて妊娠・出産の時期をコントロールしたい方にとって、大きなメリットとなります。
将来の妊娠に備えるプレコンセプションケア
プレコンセプションケアとは、将来の妊娠に向けて、妊娠前から健康管理を行うことです。加齢による妊娠率の低下や、将来的な病気のリスクなどを考慮し、若いうちに健康な精子や卵子を凍結保存しておくことで、将来の妊娠の可能性を高めることができます。晩婚化が進む現代において、プレコンセプションケアの一環として、精子凍結・卵子凍結を選択する方が増えています。
特に、女性の場合は加齢とともに卵子の質と量が低下していくため、将来の妊娠を考えている場合は、若いうちに卵子凍結を行うことで、より質の高い卵子で妊娠できる可能性が高まります。また、男性も加齢や生活習慣によって精子の質が変化する可能性があるため、精子凍結は将来の妊娠への備えとして有効です。
社会的な卵子凍結の広がり
近年では、企業が福利厚生の一環として卵子凍結を支援する動きも出てきています。これは、女性のキャリア形成と妊娠・出産の両立を支援する上で重要な役割を果たすと考えられています。社会的な卵子凍結への理解が深まることで、より多くの女性が将来の妊娠について安心して考えられるようになるでしょう。
パートナーとの将来設計における活用
結婚やパートナーシップの形が多様化する現代において、精子凍結・卵子凍結は、パートナーとの将来設計を柔軟に進めるための手段としても活用できます。例えば、結婚前に将来の子どもを持つことについて話し合い、精子や卵子を凍結しておくことで、将来の妊娠に対する不安を軽減し、より具体的なライフプランを立てることができます。また、同性カップルにおいても、精子提供や卵子提供と併用することで、子どもを持つ選択肢を広げることができます。
将来の選択肢を広げる
精子凍結・卵子凍結は、将来の妊娠を確約するものではありませんが、妊娠の可能性を維持するための選択肢を提供します。パートナーと将来の家族計画について話し合う際に、精子凍結・卵子凍結を一つの選択肢として考えることで、より具体的なライフプランを立て、将来への不安を軽減できるでしょう。
仕事やキャリアプランニングとの両立
仕事やキャリアを優先したい女性にとって、妊娠・出産のタイミングは大きな課題となります。卵子凍結は、キャリアプランニングと妊娠・出産の両立を支援する上で、非常に有効な手段です。卵子を凍結保存しておくことで、キャリア形成に集中できる期間を確保し、将来、希望するタイミングで妊娠・出産を検討することができます。これにより、仕事と家庭の両立に対する不安を軽減し、より充実した人生を送ることが可能になります。
時間的な制約からの解放
卵子凍結は、女性の生物学的な年齢による妊娠へのタイムリミットというプレッシャーから解放し、自分らしいライフプランを実現するための選択肢を提供します。仕事に集中したい時期、留学や資格取得など自己研鑽に励みたい時期など、人生の様々な転機において、卵子凍結は女性のライフプランをサポートする重要な役割を果たすでしょう。
精子凍結・卵子凍結にかかる費用
精子凍結と卵子凍結は、将来の妊娠の可能性を維持するための手段として、近年注目を集めています。しかし、これらの技術を利用するには費用と期間について理解しておくことが重要です。ここでは、精子凍結と卵子凍結それぞれにかかる費用について詳しく解説します。
精子凍結にかかる費用
精子凍結は、卵子凍結に比べて費用と期間の負担が比較的軽いため、より気軽に利用しやすい選択肢と言えます。費用の内訳は、初期費用と保管費用に分かれています。保管費用はクリニックによって費用が異なるため、事前に確認することが重要です。また、保管期間に上限を設けているクリニックもあるため、長期保存を希望する場合は注意が必要です。
項目 | 費用 | 内容 |
検査費用 | 5,000~10,000円 | 感染症の有無などを確認するための血液検査など |
凍結費用 | 20,000~50,000円 | 精子を凍結保存するための費用 |
保管容器費用 | 数千円 | 凍結した精子を保管するための容器の費用 |
保管費用 | 10,000~30,000円/年 | 凍結保存した精子を保管するための費用 |
卵子凍結にかかる費用
卵子凍結は、精子凍結に比べて費用と期間の負担が大きくなります。特に、卵巣刺激のためのホルモン注射や採卵手術が必要となるため、身体的・精神的な負担も考慮する必要があります。費用は使用する薬剤の種類、採卵数などによって変動します。クリニックによって費用が異なるため、事前に確認することが重要です。また、保管期間に上限を設けているクリニックもあるため、長期保存を希望する場合は注意が必要です。
項目 | 費用 | 内容 |
検査費用 | 5,000~10,000円 | 感染症の有無などを確認するための血液検査など |
採卵誘発剤費用 | 100,000~200,000円 | 卵胞を成熟させるためのホルモン注射の費用 |
採卵手術費用 | 100,000~200,000円 | 成熟した卵子を採取するための手術費用 |
保管容器費用 | 数千円 | 凍結した卵子を保管するための容器の費用 |
保管費用 | 30,000~50,000円/年 | 凍結保存した卵子を保管するための費用 |
精子凍結に関するよくある質問
精子凍結は誰でもできますか?
基本的に健康な男性であれば可能です。ただし、一部の感染症や特定の疾患がある場合は、凍結が難しい場合があります。医師の診察を受けて判断してもらう必要があります。
精子凍結の際に年齢制限はありますか?
年齢による制限はありませんが、加齢とともに精子の質が低下する可能性があるため、早めの凍結が推奨される場合があります。医師と相談の上、適切な時期を検討しましょう。
精子の凍結期間に制限はありますか?
法律上の保存期間に制限はありませんが、クリニックによって規定が異なる場合があります。長期保存を希望する場合は、事前にクリニックに確認することが重要です。
精子凍結によって精子の質は低下しますか?
凍結・融解の過程で多少の精子の劣化は避けられませんが、最新の技術を用いることで、その影響は最小限に抑えられています。
凍結した精子を使用せずに破棄したい場合はどうすれば良いですか?
クリニックの指示に従って手続きを行いましょう。
卵子凍結に関するよくある質問
卵子凍結は誰でもできますか?
健康な女性であれば基本的に可能です。ただし、卵巣機能が低下している場合や、特定の疾患がある場合は、医師の診察と検査が必要です。年齢やAMH値(抗ミュラー管ホルモン)などによって、採取できる卵子の数や質が影響を受ける可能性があります。
卵子凍結の際に年齢制限はありますか?
法律上の年齢制限はありませんが、卵子の質は年齢とともに低下するため、30代後半以降は採取できる卵子の数や質が低下する可能性が高くなります。早めの凍結が推奨されるケースが多いです。
卵子凍結の際に、排卵誘発剤を使用する必要がありますか?
多くの場合、排卵誘発剤を使用して複数の卵胞を成熟させ、一度に多くの卵子を採取します。体質によっては、副作用が出る場合もありますので、医師とよく相談することが大切です。
卵子凍結によって妊娠率は低下しますか?
凍結・融解によって卵子の質が多少低下する可能性はありますが、最新の技術を用いることで、妊娠率への影響は最小限に抑えられています。加齢による妊娠率の低下と比較すると、卵子凍結による影響は少ないと考えられています。
凍結した卵子を使用せずに破棄したい場合はどうすれば良いですか?
クリニックや卵子凍結保管サービスの指示に従って手続きを行いましょう。
卵子凍結は体に負担がかかりますか?
排卵誘発剤の使用による副作用や、採卵時の痛み、出血などのリスクがあります。しかし、適切な処置を行えば、重篤な副作用が起こる可能性は低いとされています。医師とよく相談し、納得した上で治療を受けることが重要です。
まとめ
この記事では、精子凍結・卵子凍結について、その仕組みやメリット・デメリット、活用方法、費用、注意点などを詳しく解説しました。精子凍結・卵子凍結は、不妊治療だけでなく、将来の妊娠への備えやキャリアプランニングとの両立など、人生の様々な場面で活用できる選択肢となっています。加齢による卵子の老化や、病気、事故などで将来妊娠が困難になる可能性に備えるプレコンセプションケアとして、また、パートナーとの将来設計を柔軟に進めるためにも有効な手段です。
費用や期間、身体的負担など、検討すべき点はありますが、精子凍結・卵子凍結は将来の安心を確保するための投資と言えるでしょう。まずは、信頼できるクリニックでカウンセリングを受け、ご自身の状況や希望に合った方法を選択することが大切です。将来の可能性を広げ、より豊かな人生を送るために、精子凍結・卵子凍結という選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。
卵子凍結保管サービスはGrace Bankがおすすめ
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名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)
杉山産婦人科の医師・培養士による技術を用いた質の高い診療を提供。
将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
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