セミナーレポート

【前編】杉山力一医師×宇賀なつみ「女性のキャリアと卵子凍結」セミナーレポート【7/24開催】

オンラインセミナー「女性のキャリアと卵子凍結」を開催

7月24日(土)に、Grace Bank オンラインセミナー「杉山力一医師×宇賀なつみ『女性のキャリアと卵子凍結』」を開催しました。

当日は、日本の生殖医療をリードし、産科としても歴史のある「杉山産婦人科グループ」の杉山力一医師とフリーアナウンサーの宇賀なつみさんが対談。

社会で活躍する女性たちが社会生活を送りながら、将来の妊娠、出産を目指すためにどのように身体の機能と向き合っていけばいいのか、専門医の杉山先生に動画を交えながら対談形式で講義を行ったのち、参加者からの質問にライブで回答しました。

事前に寄せられた質問に動画を交えて杉山先生が解説

Q 日本の不妊治療ってどんな状況なんですか?

杉山先生「日本の体外受精件数は突出して多く、世界一です。

日本人は手先が器用で勤勉なので、新しい技術を日本人が開発。受精卵、卵子の凍結も日本人が開発し、世界に発信しています」

「体外受精の成績が高くないのは、アメリカなどに比べてスタート年齢が遅いこと、同じカップルが複数回行う延べ人数となるので、少ない成績になってしまいます」

Q 成績の高くない体外受精はその分負担が大きいということ?

杉山先生「回数を多く行うため、時間も費用もかかってしまう。仕事をしている方が多いけれど、複数回行うと(休む回数が多くなったりするため)会社や社会の理解を得られないなど、患者様からよくお聞きします」

宇賀さん「その結果、不妊治療離婚や不妊治療離職という言葉もあるんですね」

杉山先生「不妊治療で離職されたとは僕らの前ではおっしゃらないけれど、不妊治療の最中に離婚されるという話はお聞きすることもあります」

Q 生殖医療の水準が世界一なら社会の側に原因があるということ?

杉山先生「日本はある程度の年齢になってから不妊治療の病院へ行くというケースが多いです。

20代でも結婚したら病院に行ってみようという風潮がないけれど、アメリカなどより治療を始める年齢が5歳くらい高いと指摘されています。

誰に原因があるというわけではないですが、スタート年齢が高いとどうしても回数多くやっているのに生まれる赤ちゃんに直結していない、そんな現状があります」

宇賀さん「アメリカだと全然違いますか?」

杉山先生「若いうちに子どもを産むといいうことが浸透しています。

若いうちに仕事をして活躍したいのなら卵子を凍結しておきましょう、そんな流れまでありますので、日本とアメリカでは大きく考え方が違うようです」

Q 社会は不妊治療の負担に対してどんな取り組みができますか?

杉山先生「なかなか難しいと思いますが、会社に対しては有給休暇に対する理解、不妊治療というのは急に休まなければいけないことが多く、前もって休みを届け出るというのが非常に難しいことが多いです。

きれいごとで休み取っていいですよということではなく、現実を理解していただく必要があると思います。

菅政権になって体外受精では非常に多くの補助金が出ることになり、経済的な負担は数年前に比べると少なくなったとは思います。

来年度4月からは不妊治療の保険適用、どうなるかわかりませんが、このまま菅政権が続けば保険適用になるとお聞きしています」

※杉山医師は不妊治療補助金の増額を求め、菅総理との話し合いをするなど、精力的に活動されています。

宇賀さん「制度が整うということも大事ですし、より広く理解されることが大事ですね」

Q キャリア女性は不妊治療する割合も高いですか?

杉山先生「お仕事されている方は結婚して自然妊娠を望まれていらっしゃるのでしょうが、やはりタイミングもなかなか合いにくい、などあるようです。

当院にいらしている方はお仕事をされている方が多い気がいたします」

Q 卵子凍結について基本的な考え方を教えてください

杉山先生「卵子凍結はまだ若いうちに未受精卵を凍結保存して、将来年齢が高くなって子供が欲しいとなったときに使用するというものだと考えています。

日本は保守的な考え方があり、若い方が卵子凍結をすると、婚期を遅くするという指摘があります。

卵子凍結というのは言いにくい感じがあるものでしたが、数年前から若い方ががんを患い、抗がん剤を使用する際に、医学的適応での卵子凍結が始まったという経緯があります。

これは医学的に禁止されていたわけではないのですが、これまでは社会にそういった動きがなく、この2~3年で社会的適応という働く女性が将来の安心のために卵子を凍結しようするという動きをわれわれもひしひしと感じています。

徐々に卵子を凍結したいというご相談が増えている、そんな印象があります」

宇賀さん「たしかにここ数年でよく聞くようにはなってきましたね」

杉山先生「いろいろな企業やメディアが取り上げて、反響が出ているのだと思います」

Q 卵子凍結はこれからの社会に有効な手段だと思いますか?

杉山先生「若いうちに妊娠、出産という基本方針は変わらないのですが、女性の方が勤勉、優秀だったりするのを目の当たりにしております。

将来結婚したい、子どもが欲しいとなったときに、時すでに遅しとならないためにも、有効な手段のひとつだと個人的には思います」

宇賀さん「みなさんご存知だとは思いますが、やはり卵子は若ければ若いほどいいものなのですよね?」

杉山先生「やはり将来使った時の成績はいいですね」

Q 将来の妊娠、出産のために今日から始められることは何かありますか?

杉山先生「規則正しい生活はもちろんですが、今の自分の年齢だけでなく卵巣の、排卵の状態を知ることは必要だと思います。

婦人科検診のついでにAMH検査をして、今の状態を把握することが大切だと思います。

まだわかりませんが、(AMH検査が)来年から保険適応になるのではないかと言われています。

きちんと説明してくれるのはレディースクリニックや不妊治療専門クリニックなので、そういったクリニックを選ばれた方が無難ではないかと思います」

後編へ続く

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