卵子凍結は一体何歳でするべきなのか、気になるけれど、実際はちょっと足踏みしてしまう…。
そんなことを感じる女性は少なくないでしょう。
卵子凍結を考える女性にとって、つきない悩みでもありますが、ステルラを創業した西史織(にし・しおり)さんは、意外とスパッと決断ができたと言います。
卵子凍結をした時は27歳。凍結をきっかけに、気持ちも、働き方にも変化が生まれました。
当時、どんな気持ちで卵子凍結を選んだのか、そして今どんなことを感じているのでしょうか。
「グレイス杉山クリニックSHIBUYA」の岡田有香院長と、グレイスバンクのエバンジェリスト、金藤美樹穂も加わって、西さんの体験についてお話を聞きました。
金藤:27歳の卵子凍結まで、どんな経験をされたのでしょう?
西:出身は大阪です。関西にある大学を卒業して飛び込んだのが、証券会社。投資信託や株などを売っていましたが、これがきつくて(笑)。
先輩からお客さんもらえるわけでないので、1日200件くらい、片っ端から自宅のインターホンを押して営業をかけていました。
その後に、別の業界に行きたいと思ってアパレル商社に転職したのです。
そこではEコマース、ゴルフのアパレルブランドを担当して、サイトの立ち上げ、商品の撮影など全てを経験しました。そして25歳の時に東京にあるベンチャー企業に転職したのです。
その時に初めて東京に住みました。後でしっかりお話ししますが、27歳で卵子凍結して、その直後の2019年にステルラを創業しました。
金藤:27歳で卵子凍結をしようと思ったきっかけは何でしょう?
西:当時は、ベンチャー企業でやりがいもあったのですが、立ち上げ間もないこともあって、ごちゃごちゃしたこともありました。仕事に悩んでいたんですね。
一方、周りを見ると友達が結婚、妊娠・出産とライフステージが変わっている頃でした。私は27歳で、「このままで果たしていいのだろうか」と思ってしまったんです。
「結婚した方がいいのか、子どもを持った方がいいのか」と自分の軸がブレましたね。
その頃に、卵子凍結について知りました。不妊治療をしている友人から聞いて、調べてみて、すぐにやろうと決めました。ここで足踏みする女性もいると思いますが、私はここで迷いませんでした。
最初は「卵子凍結」という言葉すら知らず、「卵子を凍結…?」と言うレベルでした。でも調べていくと、将来的に子どもを授かる方法だということがわかりました。
グーグルで「卵子凍結」と検索しても情報があまり出てきませんでしたね。
出てきた内容も漢字が多すぎて、頭に内容が入ってきませんでした。グーグル翻訳を使って英語も調べて、アメリカでは卵子凍結が頻繁に行われていることもわかりました。
そこでセミナーに出席し、1時間内容を聞いて知識が深まり、「やろう!」と思ったんですね。
岡田:西さんが卵子の凍結を考えられた頃は、アメリカでは福利厚生で卵子の凍結をサポートしようという動きが始まって、5年くらいたった頃です。
その頃には、様々なデータが出始めた時で、2014〜2018年の5年間で7万4000人くらいの女性が卵子凍結をしたという結果が出ています。
西:そうなのですよね、海外の企業はサポートがあっていいなと思っていました。
岡田:社会的な卵子凍結は、実際にどれくらい使われているのかという直近データがありますが、アメリカでは40〜60%という数字が出ています。凍結してから平均、2〜7年で使っている人が多く、3〜4年が中央値になっているようです。
福利厚生で卵子凍結をサポートすると、20代の半ばから30代前半で凍結をするのですが、そのために妊活に対する意識も変わり、そこで凍結した卵子を早く使う、という形になっているのではと思っています。
金藤: 岡田先生、27歳で卵子凍結をするというのはどう思われますか?
岡田:とても早いですし、それがメリットになると思います。
一度に取れる卵子の数は年々減っていきます。通常20代ですと10個程の採卵ができ、30代前半は数が減ってくるので、一度に済ませようとすると20代から卵子凍結をしていただくのがいいかと思います。
金藤:西さんは、30歳になってからでいいと思わなかったのでしょうか?
西:期間を延ばして、とは思わなかったんです。やるか、やらないかのどちらかだと思いました。そして、やるなら早い方がいいというのも認識していました。
セミナーに行った時にタイミングについても説明があって、30代よりも20代で凍結した方が成功率が高くなると聞き、「それなら今の方がいい」と思いました。
岡田:注射や痛みを心配したりする女性もいますが、どうだったでしょうか?
西:私は麻酔を使ったので、寝ていて痛みは感じなかったのですが、起きた時にものすごく重い生理痛のような痛みがありました。
麻酔も合わなかったので、吐き気もあって、想像していたよりは大変でした。ただ、やる前はそこまで反応についてわからず、不安はありながらも、決めたので進めましたね。
注射は自分で打つのはやはり怖いので、クリニックでやってもらいました。
金藤:仕事とクリニック通いの両立はスムーズだったでしょうか?
西:仕事と両立しやすいように、朝と夜に空いているクリニックを選んで調整しました。オフィスにずっといる仕事ではなかったので、フレキシブルに対応できたんです。
金藤:一つセミナーの参加者から質問です。卵子の解凍から、顕微授精までのプロセスを教えてください。
岡田:例えば、10個の凍結卵子を融解したら、8〜9個は使える状態になると言われています。そこで顕微授精というのは、卵子に針を刺すのですが、ピエゾイクシーと言って、針の先端の刺激で卵子の膜に穴をあけ、精子を卵子の中に注入する方法があります。
そうすることによって、成功する確率を上げられます。受精率は平均80%強で、融解した卵子でも、体から取り出した新鮮な卵子でも変わらないと言われています。
受精したところまで考えると、8個融解に成功して、そこから80%受精すると6個くらいが実際に育っていく卵になります。
そこから、最終的に使える胚盤胞と言われる受精卵になるのが年齢によって差が出るところですが、20代だと3個程が育ち、30代後半〜40歳近くになると1個程が育つという割合です。
金藤:西さんが卵子凍結をして、気持ち、そして生活で変化したことはありますか?
西:ポジティブに変わりましたね。気持ちの面では余裕が出ました。変に焦っていたんです。結婚したいのか、子どもが欲しいと強く思っていたわけではないのに、周りが進んでいるから、自分が遅いのかとか焦りがあったんです。
卵子凍結したことによって、結婚や出産は今したいことでなかったと納得できました。したいと思ったタイミングで結婚や出産できたらいいと思えたので、焦って自分に合わない人を選ぶことはなくなったわけです。
仕事もこれをきっかけにガラッと変わりました。やりたいことが見つかって起業したので、プラスの影響を得られたと思っています。
ステルラを2019年に創業し、先月にようやく販売を開始した商品があります。
「マイラ」というサービスですが、妊娠をしたい人に向けたものです。
妊娠を考えても、実際に何をしたらいいかわからないという人や、仕事との兼ね合いをみて効率よく妊活したいという女性、妊娠することへの悩みを誰かに相談したいという人たち向けのサービスです。
具体的には、定期便のサブスクサービスで、定額6980円で、いつでも専門家にオンラインで相談ができたり、妊娠に必要な商品が送られてくるというものです。
金藤:これからどんなことをやっていきたいですか?
西:これからの私についてですが、「組織づくり」をしていきたいと思っています。
というのも、人生を豊かにするのが「コミュニティ」だと感じているからです。新型コロナで2年間、人と直接コミュニケーションする機会が減ってしまって。
家で仕事をしていたので、Zoomでは喋るけれど、リアルで誰とも話さないということもあって、寂しいなと思いました。
最近、近所にワーキングスペース借りたのです。そこはコミュニティ色が強くて、中の人でつながっています。居心地が良いコミュニティを持つと、とても人生が豊かだなぁ、と感じていて。だからこそプライベートは人生を豊かにするコミュニティを作っていきたいですね。
金藤:卵子凍結、「ちょっと悩んでいる」という人へ伝えたいことはありますか?
西:痛そうだから怖くてできない、金額が高い…など、何がネックになって選択しきれていないのかを考えると、すっきりと課題が見えてくるのではないかと思います。
その上で、今やらないという選択をして、将来に後悔する可能性があるのなら、今実行して損はないのではないでしょうか。
将来は、自然妊娠をしてもいいし、子どもはいらないと思ってもいいと思うのです。ただ、少しでも将来に後悔する可能性があるかもしれない、そう思ったら試してみるというのがいいのではないかと感じています。
◆ 本記事の内容に関しては、2022年7月7日に行った
「経験者が語る!私にとっての卵子凍結の意味」セミナーの動画にてより詳しくご視聴いただけます。
▼セミナー動画の視聴はこちらから