セミナーレポート

グレイス杉山クリニックSHIBUYA岡田院長に聞く!【Q&A8問】企業は卵子凍結を支援すべき?

アメリカでは福利厚生で「卵子凍結」へのサポートをする企業が増えています。

2万人以上の社員を抱えるアメリカの企業の約20%が、卵子凍結を支援しているのです(2020年)。

日本と違い、アメリカでは企業が医療保険料を負担していて、社員の健康管理も含め、福利厚生を充実させて優秀な人材を獲得しようとしています。

日本では、5月にメルカリが卵子凍結にかかる費用を、200万円まで支援する制度を正式導入したほか、この分野に関心を持つ企業も増えています。

今日は「グレイス杉山クリニックSHIBUYA」の岡田有香院長が、企業の人事担当者向けに開いたオンラインセミナーで寄せられた8つの質問に答えます。

不妊治療離婚とはどういうことなのでしょうか。

岡田:治療をスタートしても男性、または女性の協力が得られらない、つまり不妊治療のスタンスの違いで起きてしまうものです。

治療を開始したけれど、フラストレーションが溜まって離婚する、何年か頑張ったけれど子どもができなくて離婚というケースもあります。

40代から不妊治療すると半数は妊娠しますが、半数は難しいのが日本の現状なのです。

ケースは様々ですが、女性の方が頑張っているけれども、男性の協力がなかなか得られないという場合が多いのです。

男性は自然に妊娠できると思っている方が多いのが現状で、体外受精に抵抗がある人も多い。けれども、不妊の原因の半分は男性側にあります。

卵子凍結や不妊治療について、欧米の企業では福利厚生で支援することがあります。その意義はどこにありますか。

岡田:不妊治療に関わる金額の負担はとても大きいものです。日本では40代以降で不妊治療をする人は、平均350万円使っていると言われ、保険の適用後も年齢によって制限があるので、約250万円かかると予想されます。

30代後半は1人授かるまでに約190万円かかっていました。保険適用になっても、100万円は自費で支払うことになります。保険の適用では、本人が払うくらいの部分を会社の健保でカバーすることになります。

欧米でも不妊治療にかかる金額はとても高いのです。卵子凍結のサポートをする欧米の企業の狙いは、卵子凍結を支援することで、後にかかる不妊治療への金額が抑えられるというメリットにあります。また、手厚い支援をすることで優秀な人材を集められるという利点もあります。

そして不妊治療に関しては、結果的に不妊治療で離職する人もいるのです。採卵周期で2日前にしか採卵日が決まらないため、休暇を事前申請することができないことがネックになっています。

しっかり育てた社員が辞めてしまうと、人材のロス、企業のロスになってしまう。企業のサポートはそれを止めるための施策でもあると思います。

卵子凍結へのサポートを福利厚生で考えた場合、男性から不公平と言われてしまいそうです。どう説明したら良いでしょう。

岡田:男性の場合、精子凍結というものがありますが、凍結すると逆に精子の動きが悪くなってしまい、あまりメリットは得られません。

35歳くらいから精子の状態も下がってくるのですが、5年間で一気に質が低下することがないのは女性と違うところ。

男性の場合は、45歳くらいから精子の妊娠する力が落ちると言われています。そのため、そもそも男性は凍結のメリットが女性と比べるとないという点は伝えられるでしょう。

AMH検査を2年前に受けましたが、どれくらいの頻度で受けるべきでしょう。

岡田:20代後半であれば1度行ってもらうことをお勧めします。よほど数値が低めであれば、その後は2年に1度ほどで受けてもらいたいですね。

30代に入ると1〜2年ごとに1度受けることが望ましいです。AMH検査はその時点での評価。問題のない人が、その後に急に下がることもあるので、定期的にチェックするのが良いでしょう。

PMS治療のための低用量ピルはいつまで飲むべきでしょうか。

月経前症候群(PMS: 月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的な症状。月頭痛、手足のむくみ、気分が落ち込んだり、イライラしたりする不安定な時期が続き、月経開始とともに軽くなるか、無くなるのが特徴です。

岡田:PMSの治療のためにピルを飲んでいる場合だと、40歳前後くらいまででしょう。

低用量ピルの内服は40歳くらいまでが良いと言われているのですが、30代からピルを飲んでいる人であれば、40代以降も飲んではいけないということではありません。

産婦人科医と相談して、いつ止めたら良いのか、また別の種類のピルもあるので相談してみてください。

卵子凍結は44歳でも大丈夫でしょうか。

岡田:卵子凍結の推奨は40歳までとされています。グレイス杉山クリニックSHIBUYAも40歳までとしていますが、個人によって体の状態、卵子の在庫も違っているので、来ていただいて相談してもらえたらと思っています。

また不妊治療に関しても保険適用の制限があります。保険では43歳までが対象になっていて、それ以上は自費でやらなくてはいけないのが現状です。

低用量ピルを服用しています。AMH検査のための注意点はありますか。

岡田:低用量ピルを服用している場合、AMH検査では本来より少し下がった値が出る可能性があります。

大体20%程少なめだと言われていますので、ピルは止めたくないけれども採血したいという方は、20%減の数値という認識で判断していただけたら良いでしょう。

実際に正確な値を知りたい方は、1ヵ月前にピルを止めて採血に来てもらうのが良いと思います。

男性が不妊治療を開始する年齢の目安とは。

岡田:年齢は35歳くらいとお伝えしてします。実は妊娠に適した時期というのは男女であまり変わらないのです。

男性は60歳でも出産できるという人もいるかもしれませんが、この年齢は女性で言えば45歳で妊娠しているのと同じくらい。

本当に稀なケースで、その特異なデータだけで普通だと思わないでほしいのです。男性の方の精子の状態は、泌尿器科で調べることができるので、ご自身の状況を調べてもらうのは大切なことだと思っています。


◆ 本記事の内容に関しては、2022年6月14日に行った
『産婦人科医に聞く!女性のカラダセミナー ~未来の自分のために”今”知って考えよう ~』
の動画にてより詳しくご視聴いただけます。

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