卵子凍結については、ここ数年で認知度は高まってきました。しかし、まだまだ詳しいことはわからないという女性は多いのではないでしょうか。
女性の体は残念ながら、卵子の数が生まれる前から決まっています。そしてその卵子は、皮膚や髪の毛の細胞とは違って、新しく作られることはありません。最大700万個ある卵子は、生まれた時には200万個にまで減っていて、その後も常に減っていく一方なのです。
その卵子の質がいい状態の時に採卵して保存しておこうというのが、卵子凍結です。
今日は「英ウィメンズクリニック」の水澤友利医師が、オンラインセミナーで寄せられた卵子凍結の9つの質問に答えます。
ピルがオンラインで手軽に飲めるようになっています。ピルを飲めば卵子を温存できるのでしょうか。
水澤:卵子の温存という意味では、排卵抑制の効果があるので、ピルを飲むと卵子が卵巣から出ていかないという話にはなります。
けれども加齢という意味では、排卵を抑制するだけで加齢を止めるわけではありません。ピルを30〜40年も飲んでいれば、60〜70代で卵子があるのかというとやはりそういうわけではないのです。
ですので、ピルに頼って卵子が温存されていると思うのはリスクがあるのではないかと思っています。
排卵誘発は自己注射になるのでしょうか。
水澤:原則、自己注射がほとんどです。AMHの値がかなり低い場合は、注射だけでなく内服薬がメインのこともあります。また、通院が大変になるので自己注射を選ぶ人が多いのです。
針を刺すのが怖いという人もいて、ドキドキして気分が悪くなる人もいるので、針の細いペン型のタイプを使うのが良いと思いますし、実際にニーズもあるようです。こちらはインシュリン注射のように針も細いもので、痛みも感じにくくなっています。
不妊治療は保険適用と聞きましたが、卵子凍結は対象ですか。
水澤:今の段階で、卵子凍結は保険適用になっていませんので、自費診療での治療になっています。
37歳ですが、一人の妊娠を考える場合、どれくらいの採卵数、採卵回数が必要でしょうか。
水澤:37歳だと、卵子は20個程度あれば、なんとか一人できるかなという目安でしょう。
採卵回数は、個別のAMHや採卵数によって変わってきますし、排卵誘発方法によっても変わります。意外に取れないという場合は採卵回数が増えることになります。
人工授精を4回行いました。そこでチョコレート嚢胞だと診断されました。手術はいらないと言われましたが、卵子に影響しますか。日常で注意すべきことはありますか。
水澤:チョコレート嚢胞は、採卵数が減ってしまうリスクがある疾患として捉えられています。手術しても卵子を減らすリスクがあるので、手術がいいのか温存がいいのか意見がわかれています。
人工受精中はチョコレート嚢腫の薬物治療ができません。ですので、徐々に疾患が進むリスクがあります。
そうなると手術が必要になったり、がんが発生するリスクが上がるということもあるので、不妊治療と腫瘍の進行のバランスを見ながら治療することが必要だと思います。
卵巣の腫瘍は症状が出にくいと言われていますが、チョコレート嚢胞は生理痛が重いとか、生理痛がなくても排便痛、骨盤痛がある人もいるでしょう。
稀ですが、腫瘍が破裂したりすると発熱したり、腹膜炎が起きることもあります。普通に生活していれば起きないのですが、体外受精のようなことをすると卵巣の近くに針を刺すので、感染のリスクが高くなります。
ですので、私たちはチョコレート嚢胞の人には注意を申し上げています。詳しく医師に相談してください。
卵子凍結する場合、クリニックを選ぶポイントは費用と距離以外にありますか。
水澤:個人的に思うのは、近いというのは大切ですが、担当してもらう先生の印象というか、話しやすそうかどうか、質問しても答えてくれそうかを見るのも大切ですね。
診療しても、なかなか質問しづらく転院したというお話も聞きますし、その逆もあります。
なんとなくコミュニケーションを取りにくいというと信頼関係に影響してしまうので、フィーリングが合うのかなど実際に行ってみて体験することが大切かと思います。
歳をとるにつれて卵子の質が下がると理解しましたが、質を保つために日常生活では何をすべきでしょう。
水澤:卵子はストレスに弱いので、不規則な生活、また仕事やプライベートで過度なストレスは避けた方がいいですね。また女性に多いのは、冷えで血流が悪くなったりします。冷えの予防もお勧めします。
また、若い女性は特に偏食なったりしていますが栄養分も大切で、特に亜鉛、鉄分が不足しやすくなったり、ビタミンDの接種が足りていないということもあります。また、妊娠前から葉酸を接種するのも大切です。
卵子凍結で、高刺激の誘発をしたいのですが、副作用はありますか。
水澤:AMHが低いと、高刺激で反応し切らないということがあるので、内服薬をメインにするか医師と決めることになります。高刺激をすると卵巣過剰刺激症候群のリスクが上がってくるので相談してみてください。
卵子凍結考えています。未受精卵より受精卵凍結をした場合の方が成功率が高いと聞きますが、今の夫との受精卵凍結は考えられません。その場合、両方で凍結できますか?
水澤:婚姻関係がある人との受精卵凍結の場合、二人が離婚したら凍結した受精卵は使えません。
難しい問題ですが、その場合は卵子凍結しておけば、別のパートナーとの体外受精は将来可能だと思います。また、受精卵と未受精卵の凍結を同時にするのは可能です。これは直接、医師と相談してみてください。
◆ 本記事の内容に関しては、2022年4月27日に行った
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