「卵子凍結をすると卵子が減ってしまうのでは?」そんな不安を感じていませんか?結論から言うと、卵子凍結のための採卵が、あなたの将来の卵子の数を不必要に減らすことはありません。この記事では、卵子の数に関する正しい情報と、卵子が生まれつき数が決まっており加齢で自然に減少するメカニズムを解説。卵子凍結がなぜ卵子の減少に影響しないのか、その仕組みを詳しく説明します。正しい知識を得て、将来の選択肢を広げるための卵子凍結を安心して検討できるようになります。
卵子凍結で卵子が減るという誤解 専門医が真実を解説
多くの女性が「卵子凍結をすると、将来の妊娠に必要な卵子が減ってしまうのではないか」という不安や疑問を抱いています。しかし、結論から言うと、卵子凍結によって卵子の総数が不必要に減るという考えは、誤解に基づいています。 専門医の監修のもと、この根強い誤解を解消し、卵子凍結が女性の卵巣予備能に与える影響について正しい知識をお伝えします。
女性の卵子は生まれる前から数が決まっている
女性の体内で作られる卵子の数は、実は生まれる前からすでに決まっています。この事実は、卵子凍結を考える上で非常に重要な基礎知識となります。卵子の減少は、卵子凍結とは別の、女性の生涯にわたる自然な生理現象なのです。
卵子の数は増えないという事実
女性は、お母さんのお腹の中にいる胎児期に、一生涯に持つ卵子の最大の数を形成します。この数は、約700万個にも及ぶと言われています。しかし、出生時にはすでに約100万~200万個に減少し、思春期を迎える頃には約30万個程度になるとされています。
一度減少した卵子の数は、残念ながら増えることはありません。これは、女性の体が持つ卵子のストックが有限であることを意味します。
加齢とともに卵子が減る自然なプロセス
女性の体では、思春期以降、毎月の月経周期の中で卵子が成熟し、排卵されます。しかし、排卵される卵子は月に1個(稀に複数個)に過ぎません。実は、排卵に至らずに自然に消滅していく卵子の方が圧倒的に多く、これが加齢とともに卵子が減少する主な原因となります。
この自然な減少は、年齢を重ねるごとに加速し、卵子の数だけでなく、その質も低下していく傾向にあります。このプロセスは、卵子凍結の有無にかかわらず、すべての女性に起こる生理的な現象です。
年齢と卵子の数の目安は以下の通りです。

| 年齢 | 卵子の数の目安 |
| 胎児期(妊娠20週頃) | 約700万個 |
| 出生時 | 約100万~200万個 |
| 思春期(初潮時) | 約30万個 |
| 30歳頃 | 約数万個 |
| 40歳頃 | 約数千個 |
| 閉経時 | 約0~千個 |
※これらの数値はあくまで目安であり、個人差があります。
卵巣予備能AMHが示す卵子の残りの目安
卵巣に残っている卵子の数の目安を知る指標として、「卵巣予備能(らんそうよびのう)」という概念があります。その中でも、特に広く用いられているのがAMH(抗ミュラー管ホルモン)の検査です。
AMHは、卵巣の中にある発育途中の小さな卵胞から分泌されるホルモンで、血液検査で測定することができます。この数値が高いほど、卵巣内に残っている卵子の数が多いと推定され、低いほど残りの数が少ないと判断されます。
ただし、AMHはあくまで「卵子の残りの数(量)」の目安であり、「卵子の質」を示すものではありません。AMHが低いからといって妊娠できないわけではなく、またAMHが高いからといって必ずしも妊娠しやすいわけでもありません。AMH検査は、将来の妊娠計画を立てる際や、不妊治療の選択肢を検討する上での重要な参考情報の一つとして活用されます。
自身の卵巣予備能を知ることは、卵子凍結を検討する上でも、より現実的な計画を立てる助けとなるでしょう。
卵子凍結が「卵子の減少」に影響しない理由
「卵子凍結をすると、将来の卵子の数が減ってしまうのではないか」という不安や疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、結論から言えば、卵子凍結が卵子の総数を減らすことはありません。むしろ、自然に消滅してしまう運命にある卵子を救い出し、将来の妊娠の可能性を広げるための医療行為です。ここでは、そのメカニズムを詳しく解説します。
排卵誘発剤と採卵の仕組み 正しく理解する卵子凍結
女性の体では、毎月多くの卵子が成長を始めますが、通常は最も成長した1つの卵子のみが排卵され、残りの卵子は自然に消滅します。卵子凍結のための採卵では、この自然なプロセスに少し手を加えます。
排卵誘発剤を使用することで、通常なら消滅してしまう運命にある複数の卵子を同時に成熟させ、採卵できるように準備します。これは、体内の卵子を無理やり「使い切る」行為ではありません。
| 項目 | 通常の月経周期 | 卵子凍結のための採卵周期 |
| 卵子の成長 | 多数の卵子が成長を開始するが、通常1つのみが成熟し排卵 | 排卵誘発剤により、多数の卵子を同時に成熟させる |
| 排卵/採卵 | 成熟した1つの卵子が自然に排卵される | 成熟した複数の卵子を体外へ採卵する |
| 残りの卵子 | 排卵に至らなかった卵子は自然に消滅する | 採卵されなかった卵子は自然に消滅する |
この表からもわかるように、卵子凍結における採卵は、「すでに成長を開始しているが、排卵に至らず消滅する運命にある卵子」を有効活用するという考え方に基づいています。卵巣に貯蔵されている未熟な卵子の総数(原始卵胞)を直接的に減らすものではありません。
卵子凍結で失われるのは自然に消滅する卵子
女性の卵巣には、生まれた時から数百万個の卵子の元(原始卵胞)が存在しますが、その大半は生涯を通じて使われることなく自然に消滅していきます。毎月、約1,000個もの原始卵胞が成長を開始すると言われていますが、そのほとんどは排卵に至ることなく、体内で自然に吸収されていきます。
卵子凍結のための採卵は、この「毎月自然に消滅していく卵子」の中から、成熟したものを体外に取り出して凍結保存する行為です。つまり、採卵しなければいずれ消滅してしまう卵子を、将来のために温存しているに過ぎません。卵子の総数が減るスピードを加速させたり、本来排卵されるはずだった卵子を奪ったりするものではないのです。
卵子凍結後の卵巣機能への影響は?
卵子凍結のための採卵では、排卵誘発剤の使用や採卵処置によって、一時的に卵巣に負担がかかることがあります。具体的には、採卵後の数日間、下腹部の張りや軽い痛みを感じることがありますが、これは通常は一時的なものであり、時間の経過とともに回復します。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という合併症のリスクもゼロではありませんが、現代の生殖医療では、排卵誘発剤の種類や投与量を適切に調整することで、そのリスクを最小限に抑えることが可能です。また、万が一発症した場合でも、適切な処置により重症化を防ぐことができます。
卵子凍結が、将来の自然妊娠能力や閉経時期に長期的な悪影響を与えるという科学的な根拠は現在のところありません。卵巣予備能の指標となるAMH(抗ミュラー管ホルモン)値が採卵後に一時的に低下することがありますが、これは一時的な現象であり、数ヶ月後には回復することがほとんどです。AMH値の一時的な変動は、卵子の総数が減ったことを意味するものではないと理解されています。
将来の妊娠計画を広げる卵子凍結のメリット
卵子の質と数は、女性の年齢とともに確実に低下していきます。特に30代後半からそのスピードは加速し、40代になると自然妊娠の可能性は大きく減少します。卵子凍結は、この生物学的な時間の制約に対し、「タイムカプセル」のように若い時の質の良い卵子を保存しておくことで、将来の妊娠の選択肢を広げる大きなメリットがあります。
キャリア形成、パートナーとの出会い、病気の治療など、様々な理由で妊娠・出産を先延ばしにせざるを得ない状況にある女性にとって、卵子凍結は精神的な安心感をもたらし、将来のライフプランをより柔軟に設計するための強力なサポートとなります。卵子の減少を心配するのではなく、むしろその減少という自然な流れの中で、最善の選択をするための医療技術として捉えることが重要です。
卵子凍結のプロセスと費用について
卵子凍結のステップと期間
卵子凍結は、将来の妊娠に備えるための重要な選択肢ですが、その具体的なプロセスや期間について疑問をお持ちの方もいるかもしれません。ここでは、卵子凍結の一般的なステップと、それに要する期間の目安を詳しくご紹介します。
卵子凍結は、主に以下のステップで進められます。
| ステップ | 内容 | 期間の目安 |
| 初診・カウンセリング・検査 | 専門医による問診、卵子凍結に関する説明、血液検査(ホルモン値、感染症など)、超音波検査、卵巣予備能を示すAMH検査などが行われます。個人の健康状態や卵巣機能に基づき、最適な治療計画が立てられます。 | 数日~1週間程度 |
| 排卵誘発 | 複数の卵子を同時に成熟させるため、ホルモン剤(注射や内服薬)を用いて卵巣を刺激します。定期的に超音波検査で卵胞の発育状況を確認し、薬剤の量や投与期間を調整します。 | 約10日~2週間程度 |
| 採卵 | 十分に成熟した卵胞から卵子を採取する処置です。通常、静脈麻酔下で経腟超音波ガイド下に行われます。細い針を卵巣に刺し、卵胞液と共に卵子を吸引します。 | 約15分~30分(処置時間) |
| 卵子凍結 | 採取された卵子は、培養士によって成熟度を確認された後、急速凍結法(ガラス化凍結法)によって凍結保存されます。この方法により、卵子へのダメージを最小限に抑え、高い生存率を保つことができます。 | 採卵後、数時間以内 |
| 保管 | 凍結された卵子は、専用のタンクで液体窒素中に保管されます。保管期間は施設によって異なりますが、一般的には長期にわたって保存が可能です。 | 年単位(契約による) |
これらのステップをすべて経て、初診から採卵・凍結までにかかる期間は、個人の卵巣の状態や排卵誘発への反応によって異なりますが、一般的には約2週間から1ヶ月程度が目安となります。採卵後には経過観察のため、数日後に再診が必要となる場合もあります。
気になる卵子凍結の費用相場
卵子凍結を検討する上で、費用は重要な要素の一つです。卵子凍結は自由診療となるため、保険適用外であり、施設によって費用は大きく異なります。ここでは、卵子凍結にかかる費用の主な内訳と相場についてご紹介します。
| 費用の内訳 | 内容 | 費用相場(目安) |
| 初診・検査費用 | カウンセリング、血液検査(ホルモン値、感染症など)、超音波検査、AMH検査など。 | 2万円~5万円 |
| 排卵誘発剤費用 | 卵子を複数育てるためのホルモン剤(注射、内服薬)。使用する薬剤の種類や量、投与期間によって変動します。 | 5万円~20万円 |
| 採卵・凍結費用 | 採卵手術費用、麻酔費用、培養費用、凍結処理費用など。採取できる卵子の数によって変動する場合があります。 | 10万円~20万円 |
| 年間保管費用 | 凍結した卵子を保管するための費用。年単位で発生します。 | 3万円~5万円/年 |
上記を合計すると、1回の採卵・凍結にかかる総費用は、概ね30万円~70万円程度が相場となります。ただし、これはあくまで目安であり、個人の卵巣機能や排卵誘発への反応、希望する卵子の数、施設の料金設定によって大きく変動することを理解しておく必要があります。
また、目標とする卵子の数を確保するために複数回の採卵が必要となる場合や、将来的に凍結卵子を使用して妊娠を目指す際には、別途、融解費用や体外受精・顕微授精の費用、胚移植費用などが発生します。これらの費用についても、事前にクリニックで確認しておくことが重要です。
専門医とのカウンセリングの重要性
卵子凍結は、女性の将来の選択肢を広げる有効な手段ですが、その決断は非常に個人的なものであり、専門的な知識と経験を持つ医師との十分なカウンセリングが不可欠です。
カウンセリングでは、以下の点について詳しく話し合うことができます。
- 個別の健康状態と卵巣機能の評価:年齢、現在の健康状態、AMH値などの検査結果に基づき、卵子凍結がご自身にとって適切かどうか、また、どれくらいの卵子を採取できる可能性があるかなど、具体的な見通しを専門医が説明します。
- プロセスとリスクの正確な理解:排卵誘発剤の使用による副作用、採卵時のリスク(出血、感染症など)、凍結・融解後の卵子の生存率、凍結卵子を用いた妊娠率など、卵子凍結に関わるあらゆる側面について、正確な情報を得ることができます。
- 費用に関する詳細な説明:上記の費用相場に加え、ご自身のケースで具体的にどの程度の費用がかかるのか、複数回の採卵が必要になった場合の費用、将来の利用にかかる費用など、金銭的な側面についても明確な説明を受けることができます。
- 将来のライフプランとの整合性:卵子凍結はあくまで「選択肢を広げる」ものであり、妊娠を保証するものではありません。将来の妊娠・出産に関するご自身の考えやライフプランを医師と共有することで、より現実的な計画を立てる手助けとなります。
- 精神的なサポート:卵子凍結は身体的負担だけでなく、精神的な負担も伴うことがあります。専門医やカウンセラーは、患者さんの不安や疑問に寄り添い、精神的なサポートを提供します。
専門医とのカウンセリングを通じて、卵子凍結に関する正しい知識と情報を得て、ご自身の状況に合わせた最適な選択をすることが、後悔のない決断へと繋がります。疑問や不安な点は、遠慮なく質問し、納得いくまで話し合うことが大切です。
まとめ
「卵子凍結で卵子が減る」という懸念は誤解であり、女性の卵子の数は生まれる前から決まっており、加齢とともに自然に減少します。卵子凍結のための採卵では、通常自然に消滅するはずの卵子を排卵誘発剤で成熟させて採取するため、卵巣の残りの卵子の数(卵巣予備能)を減らすものではありません。卵子凍結は、将来の妊娠の可能性を広げる有効な選択肢であり、年齢による卵子の質の低下や数の減少に備えることができます。正しい知識を持ち、専門医としっかりカウンセリングを行うことが重要です。
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名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)
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