海外の事例紹介

アメリカ発、卵子凍結のイメージをガラリと変えたKindbody

米国で快進撃を続けるスタートアップがあります。

ポップな黄色をモチーフに、まるでキャンディバーのようなおしゃれな空間が目を引きます。

Kindbodyが手がけるのは、卵子の凍結から、精子の凍結、体外受精と幅広く、不妊治療専門のクリニックが提供するサービスに加え、婦人科で受けられる検診なども網羅しています。

女性の顧客が多いのですが、夫婦、同性のカップル、全ての人が対象になります。

2018年の設立から3年ほどで6400万ドル(約70億円)を調達し、妊活・不妊治療のスタートアップとして急成長しています。

Kindbodyが成長している理由は三つ。

①誰もが気軽に立ち寄れるクリニックを作ったこと、②卵子凍結の価格を通常より30%安く提供すること、③ミレニアル世代を味方に付けた、という点です。

斬新なクリニック

米国でも、「女性の健康」についてはプライベートな事とされ、不妊症や、生理のことも公に語られてきませんでした。

Kindbodyはその文化を変えるため、路面店を持つことにこだわっています。

1階にクリニックを構えることで、誰もが入りやすく、開かれた場所であり、恥ずかしいものでないというメッセージを伝えようというのです。

また、創業者たちは、患者が長年感じていたクリニックへの不満を解消したいと考えていたと言います。

「患者さんがクリニックに来る時は既に、緊張しています。私たちを母親、友人、姉妹のように思って欲しいし、そういう空間を作りたかったのです」(Kindbody共同創業者 ファヒメイ・ササン産婦人科医)

無機質で、ビジネスライクな診察をもっとアットホームなものにしたいという考えから、医師は白衣を脱いで診察にあたり、医師と患者を隔てる机なども置かないようにしました。

「大学病院の診察では孤独を感じましたが、Kindbodyでは医師がとても丁寧に話を聞いてくれました。怖さがなくなりました」

こう話すのは、Kindbodyで2020年8月に卵子を凍結したバーニエデッテ・フローレス(36歳)さん。

大学病院では、親身になって話を聞いてくれるような温かい雰囲気は感じられなかったと言います。

また、Kindbodyのブランド担当レベッカ・シルバーさんはこれまでのクリニック体験と全く違ったものを目指していると言います。

「診察をするだけの場所でなく、自分の意見を聞いてもらえたり、同じ悩みを抱える人たちがつながる所。そんなオープンな場所を作りたかったのです」

業界の価格破壊

米国も日本と同じで、卵子凍結の価格は都市によって大きく異なります。大都市のニューヨークやサンフランシスコでは、一度の卵子凍結の価格は1万ドル(約110万円)ほど。

Kindbodyはこの価格を30%ほど安くし、6500ドル(約71万円:薬代は含まれず、個人によって変化する)で提供しています。コスト削減を実現できたポイントは、徹底した「システムのデジタル化」です。

カルテの記入や、薬の処方などは看護師などが分業し、医師は、診察に集中できるようにしています。また、患者がいつでもアクセスできるポータルサイトを開設し、どんな情報も見れるようデジタル化を進めました。

そうすることで、ムダを省き、価格をグッと圧縮しているのです。これまで1%の人しか手が届かないと言われてきた高額な「卵子凍結」に、新たな風穴を開けています。

「これまで卵子凍結は高いものだと考えられてきました。そう信じられていただけなのです。本気でやれば、コストを抑えることは可能です」(マーケティング担当レベッカ・シルバーさん)

ミレニアル世代の心を捉えた

現在のアメリカのミレニアル世代、それよりも若いZ世代は、人口の51%を占めています。

その人口の半分以上を占める彼らは、親の世代に比べて健康への意識が高く、自分のメンテナンスのために投資する世代だと言われています。

Kindbodyを選ぶ利用者も、20代〜30代半ばの女性たち。彼らたちの台頭が、これまで話しづらいトピックだった「卵子凍結」についての認識も変えています。

また、Kindbodyもその時代の流れに乗って、ミレニアル世代に訴求力のあるマーケティングを展開しました。

スタイリッシュなウェブサイトや、クリニックを揃えるだけでなく、小さなバスを使って、不妊治療の簡易テストを行うなど、ユニークな方法でアプローチしたのです。

コロナ禍ではオンラインセミナーを頻繁に開き、活発に参加者が意見交換できる場所も作っています。今年は、新たに8箇所のクリニックをオープンする予定です。

選択肢を増やす

米国でも、卵子凍結はまだ誰でも手が届くようなものではありません。しかし、まずは「知る」ことから始めてほしいとササン医師は話します。

「若者から年配まで、世代を超えて体の仕組み、健康について語れるようになれたらいい。そうすれば、選択肢を得ることができる。結局のところ、重要なのは『知ること』、そして『情報と選択肢を持つこと』ではないでしょうか」

ニューヨークやサンフランシスコの働くミレニアル世代は、キャリアと家族計画の中に、卵子凍結という選択肢も組み込んでいます。

組み込んでいるからいい、悪いということではありません。

様々な選択肢を持つこと、メリットとリスクも考え、その上で自分らしい選択ができれば良い、彼女たちはそう考え始めているのです。

※この記事は記者のレポートであり、Grace Bankは編集を加えていません。

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