2017年の開院以来、婦人科から美容まで幅広い診療と豊富なメニューを備え、女性に限らず、パートナーや性同一性障害の方へもオールジェンダーに診療しているジェネラルクリニック。小川院長は、患者さんへのわかりやすく丁寧な説明や、自分自身が試して良いと思ったものを患者さんに提供するなど、きめ細やかな配慮で「みんながハッピーになれるクリニック」をめざしています。
産婦人科の臨床で培った知識や担当した多くの患者さんから得た経験により、HPVワクチンや妊娠適齢期、妊娠・出産の本来の目的など、若い世代への啓蒙活動にも力を入れています。
病気の予防の啓蒙も産婦人科医としての使命
父が医師で親族にも医師が多い環境で育ったため、幼いころから医療を身近に感じる環境で育ち、幼稚園の頃には「医者になる」と父に宣言していました。また、私自身喘息があるので薬に助けてもらうことも多く、医療の重要性を感じていたのもあります。
幼いころからの志を持ったまま医学部に入った学生時代に、興味を持ったのは形成外科でした。手術をしてただ治せばよいというのではなく、傷をきれいに治したいと思ったのです。ですが、研修は非常にハードで持病の喘息の症状が出るなどして諦めることを余儀なくされました。
そんな時に不妊治療を行っている先生から声をかけていただき、産婦人科の道に進むことになりました。いろいろな偶然で今があるのですが、ニキビや肝斑はホルモンと密接な関係がありますし、産婦人科を選んでよかったと思っています。これまでのキャリアの中では美容クリニックに努めていたときに様々なことを教えてくださった先生を含め、多くの先生にお世話になりました。
患者さんでは、私が26歳くらいのときに担当した小さなお子さんが2人いらした36歳の患者さんが今でも忘れられません。末期の子宮頚癌で1年ほど担当していましたが、お子さんを残して亡くなったのです。それがすごく悲しくて、今でもその方のお顔を思い出します。
その翌々年にHPVワクチンが登場してから、HPVワクチンをたくさんの女性に打ってほしいという思いは、今も変わらず強く持っています。産婦人科は、出産時に、赤ちゃんやお母さんの命が失われたり、若い方が亡くなることもあったりと、一般的には想像できないようなケースと接する科でもあります。だからこそ、予防できる病気について一般の方々を啓蒙し続けることも産婦人科医として重要な仕事のひとつだと思っています。
日本は、まだ月経や性について話すことは秘密事というか、あまり大っぴらにする話題ではないという感じの国ですので、HPVワクチンの副反応の部分だけがマスコミで取り上げられると、それがマジョリティのようになり、正しい情報が伝わらなくなって日本のHPVワクチン事業を一時ストップしてしまうことになりました。HPVワクチンによって救えた命があったかもしれないと思うと、HPVワクチンが広く浸透して行くことを強く願っています。医師としては、予防できる癌は予防すべきだと考えます。HPVワクチンを受けられていない世代の方に対するキャッチアップ接種も行われているので(※2023年4月から実施中)、対象になりそうな年齢の方にはその情報も必ずお伝えしています。
※HPVワクチンのキャッチアップ接種(誕生日が1997年4月2日~2007年4月1日の女性)については、厚生労働省のHP等をご確認ください。
※厚生労働省「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html
婦人科から美容まで幅広くカバー
クリニックには月経困難症の方が多く来院されます。女性の月経において、生理痛の程度や経血量は個人差が大きいのですが、特に経血量はほかの人と比べることができないので、自分が経血量が多いことに気づいていない人もいらっしゃって、皆さん我慢していることがとても多いと思います。働いている女性が多い現代社会において、女性の7割くらいに月経困難症があると言われています。将来的に不妊につながるような病気が起こってしまうこともあるので、20代30代のうちから気軽に受診できるクリニックとして悩みを気軽に話すことができ、改善策を知ることのできるクリニックでありたいと思っています。
月経困難症以外には性感染症で来院される方も多いという印象を受けます。パートナーが感染して自ら来院される方もいらっしゃいますし、月経困難症の定期検診で陽性が判明することもあります。無症状のことも多く、放置していると不妊の原因になることもあるので、皆さんには、検査をして陽性だったら早く治療ができるし、陰性であれば安心できるとご説明をして、淋菌やクラミジアのチェックもおすすめしています。治療が必要な場合には、ピンポン感染のリスクがあるので、ご希望があれば、カップルで来院していただいてパートナー同士が一緒に治療する重要性をお話することもあります。
クリニックでは、婦人科に限らず、私自身が好きなメニューを豊富に用意しています。女性しか入れない雰囲気ではなく、性同一性障害の方や性感染症のパートナー同士で来られるクリニックにしたいとイメージカラーにもティファニーブルーを選びました。
性同一性障害の方が海外での手術後、国内でトラブルが起こったときにみてくれる先生がいないというケースが結構あるという状況を受けて、何かできることをと開業前から強く思っていました。私は精神科医ではないので性同一性障害の診断は行えませんが、性同一性障害の診断がついた患者さんのホルモン治療などを行っています。
また、美容クリニック勤務時代に取り組んでいたニキビ治療も継続していきたかったので、美容皮膚科部門にも力を入れています。サプリメントや月経困難症の治療薬は私自身も長く飲んでいますし、ピル(OC・LEP)もひと通り全部自分で飲んでいます。ピルも経血量が減るものとそうでないものがあるので、自身で飲んだ経験や、いろいろな患者さんのレスポンスも参考にして、その方に合いそうなものを選ぶようにしています。
みんながハッピーになるクリニックをめざして
患者さんも私たちスタッフもみんながハッピーになれるクリニックをめざしています。いつもスタッフに話しているのは、「人からされて嬉しいことを人にもしましょう」ということです。不安な面持ちで来院された患者さんが笑顔でお帰りになると嬉しくなります。
患者さんたちは不安を抱えて来院される方が多いので、例えば、子宮頚がんの検診で引っかかって心配されている方には、癌になる前の「前がん病変」であるという事実をきちんとお伝えして、自然に消えていく可能性もあること、でも進行していくかもしれないこと、きちんと検査を受け続ける大切さなどをお話します。月経困難症や性感染症、子宮頚部異形成やHPVワクチンのお話も、外来診療を長く続けてきた中で、なるべく専門用語を使わずに患者さんにわかりやすい説明の仕方を確立してきました。なるべく不安を取り除けるようにゆっくり話したり、理解が難しそうだなというところは絵に描いたりすることを心がけています。作成したパワーポイントなど資料を一緒に見てもらったりもします。
診察室についても、内診を受ける際にカーテンがあると、何をされているかわからないという恐怖心を患者さんが抱きやすく、カーテンが下腹部に触れると不衛生と感じるので、クリニックの内診台にはカーテンを取り付けていません。器具を入れるときの患者さんのお顔の表情を確認しながら内診を行えることも重要だと思います。「器械を入れますよ」「触りますよ」など、お声をかけながら診察を行う方が直接患者さんも力を抜きやすいと思います。
私自身は、自分の時間も大切にして、オンオフを切り替えられるようにしています。プライベートでは、クラシックバレエを週2回程度と茶道を月に3回、書道を月に1回ほど行っています。どれも共通して思うのは所作が美しいところと、それぞれの時間に集中できるところです。バレエや茶道、書道に取り組んでいる時間は好きなことに没頭でき、携帯からも離れて仕事とは別のことに取り組める貴重な時間になっています。
ピアニストの方のピアノに合わせて踊ると、日常から解き放たれるような感覚になり、どんなに疲れていてもすっきりしますし、着物に着替えてお茶のお稽古に行くことがオンオフの切り替えになっていたりします。茶道は静寂の中で聞こえてくるお湯を組む音や水の音に集中できるところも好きです。
女性の社会的損失を減らせるように
中学生、高校生の患者さんも最近増えてきていますが、主には20代、30代の方が多いので、月経困難症や子宮筋腫、子宮内膜症のケア、そして可能ならば(性交渉開始前に)HPVワクチンを打って欲しいと思っています。
あとは、月経困難症による社会的損失が大きいので、色々なきっかけで社会的な損失が減るようにと思います。月経で月の半分以上辛いという状態を我慢しなくてもいいことを広い世代に知っていただきたいです。「生理を休む」ということが広まってくれると嬉しいです。あとは予防できるがんは予防するべきですし、女性の健康や若い女性がかかりやすい病気の知識や経験を啓蒙できる機会が増えるようにと思っています。
働く女性が気軽に婦人科を受診でき、きちんと検査を受けたり、必要に応じてピルを飲んで、社会的損失をなくすことが大切だと考えています。月経困難症のひどい方だと、人によっては月の半分以上、具合が悪いこともあるので、ご自身で自分の病態を把握していただいた上で、アプローチの選択肢をお伝えします。治療を受ける、受けないは患者さんの選択ですけれども、ピルを飲んでいただくと、月経困難症の症状の軽減が期待できます。
最近は出産をしない女性が増えており、本来妊娠・出産をするための生殖器が機能せずに月経が毎月訪れて月経の回数が増加し、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。小学校や中学校の段階から、この事実を理解してもらい、妊娠・出産の本来の目的について啓蒙する機会も必要だと考えています。また、妊娠についても、皆さん何歳になっても妊娠できると思っている方は多いのですが、身体には妊娠適齢期がありますし、早いうちからトータルケアのチャンスが増えるといいなと思います。
本当に、小さなことでも、何かお悩みがあればお気軽にご相談いただければと思っています。ひとりで悩まないでいただきたいなと思いますので、お気軽にご来院ください。
※この記事は2023年5月のインタビューを元にしています。最新の情報はクリニックHPをご覧ください。
※ジェネラルクリニックのHPはこちら:https://general-clinic.tokyo/