Grace Care

神谷町WGレディースクリニック 尾西芳子院長|すべての女性が自分をケアできるように

「すべての女性のかかりつけ医でありたい」を理念に掲げ、2023年3月に神谷町に開業した尾西院長。プライベートでは二児の母でもあり、仕事や家庭、育児に忙しい女性がもっと自分自身をケアできるようにと敷居の低いクリニックづくりをめざしています。

気軽に話せる親しみやすい雰囲気の中、多彩な経歴や常に学び続ける姿勢の中で培った幅広い知識や技術を生かし、33週までの妊婦検診、乳がんなどの婦人科検診、月経トラブルや更年期障害の治療、不妊相談など幅広い女性に関わるケアを提供しています。

ヒトの命の誕生への興味

父は医学系の研究者だったため、家には医学関連の本がたくさんありました。幼稚園の頃から医師になりたいと思っていたのは父の影響が大きかったと思います。父は仕事が忙しく、私の進路に意見するようなことはありませんでしたが、私が医師になってからは論文の添削をしてくれて、医師になる前よりも父との結びつきは深まったような気がしています。父の真面目でひたむきに仕事に取り組む姿は、医師になった今の私のお手本となっています。

産婦人科医になろうと思ったのは、小学生のときに、人間が卵から魚みたいな形になって、大人になるというヒトの生命の誕生の過程を科学雑誌で見たのがきっかけです。人間の始まりが卵だということを知って、驚いて母に伝えると、「じゃあ、産婦人科医になれば」と言われ、そのときからずっと産婦人科医をめざしていました。

産婦人科医のことを教えてくれた母は非常に厳しくて、気軽に何でも相談できる関係性ではなく、生理のことも、恥ずかしさから母には相談できずにいました。でも、産婦人科医になって自分で勉強すれば他の人に聞く必要もないと気づき、そこからますます産婦人科医への思いを熱くしていました。

高校三年生になったのですが、数Ⅲ・数Cがあまりにも苦手でできなかったのです。でも、浪人だけはどうしても避けたいという思いがあり、得意の英語を利用して文系の国際文化学部を受験して、入学しました。大学四年生になって周りが就活を始めたときに、改めて自分は何をしたいかを考えると、やはり医師として働きたいという思いがあり、卒論は「医療におけるコミュニケーション」というテーマで研究を行いました。また学士編入学試験を受けて医学部の三年生に編入したのです。

国際文化学部に通っていた頃は、モデルとしても活動していました。所属していた事務所の社長に、大学卒業後の進路について、モデルをするか医学部に行くか悩んでいると相談したところ、「あなたは社会の役に立てる人だから、ぜひ医学部に行って社会の役に立ってください」と言ってくださったのです。今、思うとモデルに向いていないことを遠回しに言ってくださっていたのだと思いますが、その社長の言葉が、私が医学部に進む後押しとなりました。

転職が転機となった産婦人科医の道

小学生の頃から、産婦人科医になるという意志を持ち続けていたのですが、実際に経験すると、迷いが生まれました。初期臨床研修では、半年間は自分の好きな科を回っていいのですが、初めに救急を経験したらすごく楽しくて、すべて救急を選択しました。どのような病気かケガかもわからない、自分で話すことのできない患者さんが運ばれてきて、原因を探って治療するという救急特有の過程にすごくやりがいを感じていたのです。

産婦人科の研修に入る前に、何科に進むか決めなければならなかったのですが、楽しかった救急に進むか、まだ経験もしていない産婦人科に進むのか、すごく悩みましたが、今までの産婦人科医になるという思いを貫いて、産婦人科に進むことを決めました。

しかし、研修の最後の2ヶ月間、実際に産婦人科を経験してみると、自分が思っていたのとは違うかもしれないと感じたのです。初めて勤めた病院の産婦人科では環境が合わず、自分は産婦人科に向いてないかもしれない、産婦人科医をやめた方がいいのかもしれない…と思い悩みました。

そこで勤め先を変えたところ、新しい先生との出会いがありました。移った先の部長の先生は、若手の医師に積極的に手術やお産などの経験をさせてくれる先生でした。困ったらサポートするからと後ろで見守ってくださり、私は様々な経験を積むことができたのです。産婦人科医を続けられたのはその先生に出会えたからだと感謝しています。

さらに、主治医制を導入している病院で、夜中でも自分の担当の患者さんに何かあれば、呼び出しに応じる体制でした。責任感を強く感じ、患者さんとの結びつきを深めることができたので、私にはこの体制が合っていたのだと思います。

神谷町WGレディースクリニック

もっと産婦人科を身近なものに

私がクリニックを開院するきっかけとなった二人の患者さんがいらっしゃいます。
一人は、40代後半の方で妊娠希望で来院されました。お話をお聴きしていると、そろそろ閉経と思われたので、正直に今の医療の限界や妊娠できるタイムリミットが42歳、43歳くらいだということをお伝えしました。

すると「そんなことは知らなかった。誰も教えてくれなかった。もっと早く産婦人科に来ればよかった」とおっしゃられた言葉が心に残っています。

もう一人は、私が当直をしていたときに、お腹がパンパンに膨らんで救急車で運ばれてきた30代の方です。診察をしたら卵巣がんの末期だとわかり、夜中にどのように病状をお伝えしようかと非常に悩んだケースでもありました。主治医として関係性を築く中で親しくなり、「なぜもう少し早く病院に来てくださらなかったのですか?」と尋ねたところ、その方は、「うすうすおかしいとは感じていたけれども、産婦人科には妊娠していないと行ってはダメだと思っていた。正直、どこに行けばよいかわからなかった」と答えられたのです。

そのときに、産婦人科の敷居を下げたい、産婦人科がどのような診療をしているのかをより多くの人に知ってもらい、もっと身近にかかれる医者だということをわかってもらいたいと思うようになりました。

産婦人科は生と死が表裏一体の診療科です。出産の方の診療もすれば、末期癌の方もみる。それから、出産自体が生と死の隣り合わせでもあります。

ある患者さんのお産に携わった際、癒着胎盤による大出血が起こりました。一度は出血を止めることができましたが、入院中に子宮に感染が起こり、最終的に子宮摘出手術が必要になりました。その患者さんは不妊治療を経て授かった待望の一人目のお子さんだったので、二人目も望まれていただろうなと思うと、他に方法はなかったのかと今でも考えることがあります。

しかし、その患者さんからは「子どもを救ってくれてありがとうございます」という感謝の言葉をいただきました。毎年、お子さんの写真が入った年賀状を送ってくださるのです。そんな風に感謝される仕事は素晴らしいと感じます。

日々の診察で、妊娠を希望する患者さんと一緒にタイミングを考えて診療した結果、妊娠されたときはとても嬉しくなり、クリニックの中で喜びのあまり飛び跳ねることもあります。

漢方薬の効果がみられたり、些細なことでも患者さんに良い結果が出た場合は、非常に喜びを感じます。患者さんが私の診療所に相談に来てくださり、少しでも役に立てたと感じられる瞬間があると、やはり嬉しく、仕事へのやりがいを感じます。

神谷町WGレディースクリニック 受付・待合

女性が自分自身をケアしやすい世の中へ

今の世の中、働く女性が増えているので仕事や家庭、育児などで、自分の健康を振り返る時間が無いことをすごく実感しています。開業3ヶ月で、すでに重症の貧血の方が3人見つかりました。突然倒れるかもしれない身体の状態なのに、自覚症状がないというのは怖いと感じます。

先日も、以前の健診で異常を指摘されて精密検査が必要と言われていた方が、近くに病院がなかったために、1年間も放置されていたケースがありました。私のクリニックが開業したことで、ようやく来院してくださったのですが、アクセスが悪いと後回しになりがちだということを実感しました。

女性に「自分自身のケアを」と言っても、実際には女性はとても我慢強く、自分自身よりも子どもや仕事を優先させてしまう傾向があります。そのため、会社や組織からの積極的な働きかけがない限り、なかなか健診に行く機会もありません。企業が定期的に社員向けの健康診断を行うなどの取り組みは非常に良いアイデアだと思います。

何か問題が起きてから病院を探し始めるとなると、探すステップが面倒で足が遠のいてしまいがちです。しかし、検診で1回でも病院を受診していると、場所や雰囲気がわかっているので、相談を考える一歩になると思います。

日々、仕事に家庭に忙しくしておられる女性の方はどうしても自分のことを後回しにしてしまいがちですが、あとで、あの時こうしておけばよかったと後悔のないようにしてほしいと思います。定期的な健診で婦人科のかかりつけをつくり、何かあれば早めに相談できるようにしていただきたいです。

神谷町WGレディースクリニック 診察室

3つのアクセスで通いやすさを実現

「すべての女性のかかりつけ医でありたい」をモットーに、より身近な産婦人科医になるためにクリニックを開業しました。

産婦人科の敷居を低くするためには、3つのアクセスが重要だと考えています。
その3つは、「時間的なアクセス」「立地的なアクセス」「精神的なアクセス」です。これらがすべて満たされると、より多くの方が通いやすくなるのではないかと思っています。

現代では多くの女性が働いており、自宅にいる時間よりも働いてる時間の方が長いのではと思っています。そのため、女性が働いている職場の近くに病院やクリニックがあれば、職場の休み時間や半休をとって通院でき、時間的なアクセスと立地的なアクセスが満たされると考えます。

精神的なアクセスは、患者さんが行きやすく、話しやすい病院やクリニックであることが重要だと考えます。私は周産期のプロフェッショナルでもないし、がんの手術のプロフェッショナルでも、大学ですごい研究をしたわけでもなく、何か際立って優れたところがありません。私にできるのは、患者さんと年齢が近い立場で、対等に、友達のようにお話ができるということです。その強みを生かして、患者さんが話しやすい雰囲気をつくりながら、気兼ねなくお話いただける存在となるように努めています。

どのようなお悩みでも受け止めるためには幅広い知識が必要です。さまざまな分野からアプローチできるように、多方面の知識を吸収するようにしています。国際文化学部で学んだことや救急部で学んだことも無駄にはなっていません。また漢方薬もそうですし、乳腺のエコーや尿漏れに関するケアも行っています。産科、婦人科はもちろん、女性に関するケアはほとんどカバーしています。

当院では、外国人、日本人、子どもから大人まで幅広く診療しています。今、開業して3ヶ月ですが、すでに7歳から94歳までの方にご来院いただいています。クリニックには、お子さま連れでも来ていただきやすいようにキッズルームをご用意しています。2人目が欲しいけれども上の子を預けて病院に行けないという方もいらっしゃるでしょう。そういう方にも上のお子さんを連れて、ご自身のケアをしに来ていただければと思います。

※この記事は2023年5月のインタビューを元にしています。最新の情報はクリニックHPをご確認ください。

※神谷町WGレディースクリニック公式HPはこちら:https://kwg-lc.com/

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