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勝どきウィメンズクリニック 松葉悠子院長|女性だけが頑張りすぎない、我慢しすぎない社会に

勝どき駅徒歩1分に立地する、勝どきウィメンズクリニック。松葉悠子院長は、周産期医療センターなどでの経験を活かしながら、自身も育児や介護とキャリアの間で葛藤してきた身近な存在として、日々女性の不安に向き合っています。

松葉院長のこれまで、そして今気になっていることも含め、産婦人科医療にかける想いを伺いました。

女性の自立をめざして

私が医師を目指した理由は、女性の自立です。
中学3年生の時に父を突然亡くしたのですが、父親に経済的に頼ることの危うさを知り、自分自身が手に職をつけて、やりがいのある仕事につきたいという思いが芽生えました。高校生という思春期真っ只中の多感な時期に、予兆もなく突然訪れた父の死を経験して、生命の不確実さ、大切さというものを感じたというのもあるかと思います。

ありきたりなのですが、漫画「ブラックジャック」の影響を受けて、外科への憧れがありました。外科手術を行う産婦人科も範疇にあった中、東大病院の研修で最初に胸部外科に配属されました。そこで、思い描いていた世界とはかけ離れていて、自分の中では少し違うかなと思ってしまったこともあり、結局、12カ月間の研修期間中8カ月間は産婦人科を専攻しました。

産婦人科の人手は不足していたのですが、私が研修に行っていたちょうど1年前ごろに、産婦人科医が刑事罰で逮捕されるという事件があり、医療訴訟を起こされるのが怖いということで、産婦人科は非常に人気がなく、私自身も訴訟が怖いという懸念がありました。

しかし、先輩医師の「ちゃんとした知識を身につければ大丈夫なのでは」という言葉に後押しされて、実際に産婦人科を経験してみると、最初から興味のあった婦人科癌だけではなく、産科も楽しかったのです。産まれてくる瞬間に立ち会えることは喜ばしいことだし、若い方から年配の方までみることのできる環境が自分にしっくり来ていると感じ、産婦人科医をめざしました。

その後に進んだ東大病院の医局の先生方は尊敬すべき先生が多かったですし、産婦人科医になる前にも多くの先生方から学ばせていただきました。研修先では小さなお子さんを育てながら働く女性医師のモデルのような先生との出会いもありました。すばらしい先生方との出会いが、今の自分の生活や仕事につながっていると感謝しています。

トラブルの少ないお産の幸せを

産婦人科医として初めに働いた先は地方の中核病院でした。1年目で産婦人科医としての経験が浅いにもかかわらず、産婦人科医が貴重な存在だったこともあり、病院からは重宝され、患者さんからはとても喜んでいただけるという恵まれた環境でした。

都会だったら経験のない若い医師が担当するのを嫌がる患者さんもいると思いますが、「先生に取り上げてもらってうれしいです。赤ちゃんと一緒に写真撮ってください」と若い妊婦の方にとても喜んでもらい、幸せな気持ちになったことを思い出します。その方は、とくにトラブルのない順調なお産で、私は医師としてほんの少しお手伝いしただけでしたが、それだけ喜んでもらえることにやりがいを覚えました。

地方の病院は若い妊婦の方がたくさんいらして、高齢出産の多い大学病院や都心の病院とは全然違う雰囲気です。高齢出産だとハイリスク妊婦の率が高く、それだけ医師の手もたくさん必要なお産となります。赤ちゃんが産まれることは非常にすばらしいことですが、産むまでずっと病院で管理された中だと、妊婦さんも医師もお互いに辛い気持ちになることもあります。お産は年齢によって大きく異なりますので、より幸せな気持ちでお産を終えられるように、出産適齢期を意識するといった健康教育の重要性を感じました。

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より良い妊婦検診とお産の環境を整えるために

クリニック開業の背景として、当時の東大病院の産婦人科外来の混雑状態やハイリスクの方とローリスクの方が入り混じった状況を解決したいという思いがありました。子育てや介護もある中、混雑した外来の状況に疲弊しているスタッフは自分だけではなく、みんなも同じだろうと思ったのです。スタッフが疲れてしまっていると、集中的なケアが必要な妊婦さんに対しても気持ちがおろそかになる心配もありますし、待ち時間が少なくなれば妊婦の方の負担も少なくなるはずです。

スタッフの負担を軽減し、医療の質を担保して、妊婦の方により良い医療サービスを提供するために、お産と妊婦検診を別々の病院やクリニックで行うセミオープンシステムを提案しました。東大病院がセミオープンシステムを取り入れることになったので、私は地域のクリニックから妊婦検診を通じて、産婦人科医療を支えたいという思いを告げて開業に至りました。

東大病院や愛育病院で働く中で、周産期の専門知識を身につけ、技術を磨きました。そのおかげで、妊婦検診では、見逃しがちな胎児の病気も発見できる機会が多いと自負しています。ときには、産むのか、産まないのかという辛い決断をしてもらわなければならないこともありますが、早期に、より良い決断を促せるということは、大切なことだと考えています。

ジェンダーに捉われない自分らしい生き方

私は、基本仕事人間で、仕事が楽しいし、仕事をしていたほうがしっくりくる性格です。ちなみに家事はあまりやっていません(笑)。夫は私以上に子どもと一緒にいる時間が大好きな人なので、コメディカル職としてパートで半日ずつ働きながら、家のことを9割5分やってくれています。

一番上の娘が生まれたときにも夫は育休をとってくれて、私は産後2ヶ月で復帰、産後3~4カ月目ぐらいからは当直も行っていました。それができたのは、やはり家庭を支えてくれる夫がいたからです。私は自分自身のことを女性としては少し異質で、頭の中は男性的志向が強いタイプだと思っているのですが、その特性を生かし医師として社会貢献でき、子どももすくすく育ってくれているのは、ちょっとフェミニンなパートナーを得られたからだと思っています。ジェンダーに捉われない、自分らしい生き方はすごく大事だと考えます。

今の生活をするに当たって、最初は少し勇気が必要でした。結婚の話が出た当時には健在であった母からは、すごく反対もされました。でも、自分にはこの生活が合っていると確信し、母に反対させないぐらいに押し切る決断をして、今は良かったと思っています。

私のジェンダーに対する思いは、高校時代の経験が影響しています。高校は、お茶の水女子大学附属高校で、しっかりとしたジェンダー教育を受けて過ごしました。さらに、高校のOGである宇宙飛行士の山崎直子さんが、ご主人の協力を得て、「ママだけど、宇宙に行きます」と活躍されている姿をメディアで目にしました。

そのときに、生活や仕事において、女性だから「○○しちゃいけない」「○○しなきゃいけない」という世間の考え方や社会の枠組みに捉われずに、人生や仕事において自由に選択し、活躍している女性の姿に心を動かされたのです。

今の時代、女性が頑張り過ぎだと感じます。女性が頑張りすぎなくてもいいように、女性のことを色々と知ってもらって、男性にも変わってもらうことが必要です。ただ、男性にもジェンダーの問題があるので、男性と女性がお互いを尊重し合い、それぞれが自分らしく生きる方向性を探ることが重要だと思います。

男性は「男らしさ」という呪縛に捉われている人が多いのではないでしょうか。その点、我が家の夫はプライドが無く、そこがある意味すごく尊敬しているところでもあります。枠にとらわれすぎない男性が増えるといいなと思っていますね。

現在、高校生に対して、産婦人科医が養護教諭と連携し、ヘルスケアに関する専門的な相談などを実施するという東京都の取り組みの一環で、都立高校の学校医をしています。

高校へ月1回程度訪問して、性教育などの授業や相談を行うのですが、保健の先生では難しい専門的なアドバイスなどで力添えができるのではと思っています。生理痛を早くからケアしていくことも大切ですし、私の人生においての大きなテーマでもあるジェンダーに捉われない自分らしい生き方やデートDVに関してなども、教育に役立つ方法を模索しながら啓蒙できるように取り組んでいきたいと思っています。

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生理痛だからと思わずに産婦人科の受診を

最近では、生理痛に対する社会的な啓蒙が進み、昔に比べて月経困難症の治療薬も増えたこともあって、社会のニーズに応じて月経困難症の治療にも力を入れています。クリニックに10代や中学生が生理痛で受診するケースも増えており、開業して女性医学と向き合うようになってから、生理が大きく女性の足を引っ張っていることに気づかされました

正直、開業するまでは私自身、あまり生理の知識がなく、自分自身が月経過多であることすら気づかずに、放置していたほどです。ピルも開業してから初めて飲み、身をもって良さを体験したので、自分自身が試してみて必要なものは使っていく方針をとっています。

以前は、生理痛は病気ではないとされ、受診しても適切な対応が得られないことも多くありました。しかし、器質的な病気が見つからなくても、痛みなどの症状があり、それが日常生活に支障をきたし困っているのならば、すべて疾患として捉えるべきだと考えます。

疾患かどうかは医師が判断すべきではなく、敷居の高い産婦人科を訪れて、わざわざ相談に来られている患者さんにとって重要な問題であるということに医師として向き合うべきだと思っています。勇気を持って来院してくれた患者さんが「受診したのに病気じゃないとないがしろにされた」と感じることのないような対応を心がけています。

昔は不正出血があっても、なかなか受診せずにかなり重症の進行癌になってから来院されるというケースもみられましたが、最近は皆さんが健康に関する知識を積極的に学んでいるため、そのようなケースは減少しています。とくに勝どき地域の方々は、ヘルスケアに関するリテラシーが高く、「月経困難症の症状があり、ピルが欲しい」とある程度勉強されてから来院される方も多いです。

しかし、まだまだ気になる症状があっても来院できていない方もいらっしゃるはずです。婦人科や生理のこと、些細なことでもとにかく遠慮せずに来ていただきたいと思います。健康に関する不安を感じた時点で、それは十分な受診理由になります。どうか扉を開いて来院してください。

※この記事は2023年5月のインタビューを元にしています。最新の情報はクリニックHPをご覧ください。

※勝どきウィメンズクリニック公式HPはこちら:https://www.kachidoki-women.com/

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