Grace Care

優レディースクリニック 坂田優院長|ライフステージに寄り添い「心あたたまる医療」を届けたい

女性の抱える身体や心の悩み、不安に対し、医師として、子どもを持つ母親として、2003年の開業以来、池袋で20年以上にわたって「心あたたまる医療」の提供をコンセプトに取り組んできた優レディースクリニックの坂田院長。ただ症状をみるだけではなく、患者一人ひとりの将来を見据えた人生を捉え、今すべき治療かを見極めて、その方にとって本当に必要な医療を提供し続けています。

坂田院長が産婦人科の医師を目指したきっかけや、地域に根差したレディースクリニックとして診療において大切にしていること、日本社会の女性の健康について感じている課題、プライベートと仕事とのバランスの取り方などについて、お話をおうかがいしました。

すべての女性に寄り添うために

自分の習得した知識や技術を患者さんに還元できるというところに魅力を感じ、医師の道を志しました。

ちょうど大学を卒業するタイミングで新しい教授が着任され、教室内がフレッシュな活気に満ちており、多くの女性医師の先輩や同僚もいて、非常に魅力的に思えたため、産婦人科を選択しました。

研修医一年目の頃、女性医師の先輩の勤務先に当直に行った際、重い生理痛に悩んでいた私を先輩が内診してくださいました。そこで初めて自分が子宮内膜症にかかっていたことがわかったのです。卵巣はボコボコに腫れ上がっており、かなり深刻な状態でした。

恩師である教授が私の子宮内膜症の手術を執刀してくださり、その後もホルモン治療を継続しました。そして、研修医二年目の頃、縁があった方と結婚し、子どもを授かることができたのです。このとき、私は28歳でした。

当時は医師の仕事に没頭しており、自分の身体のことを気遣う暇がありませんでした。先輩があのときに診察をしてくれていなければ、妊娠することも難しかったかもしれません。先輩や教授には本当に感謝しています。

出産後も大学の関連病院の産婦人科で研鑽を積み、大学病院では産婦人科病棟医長も務めました。子どもを育てながらも医師の仕事を続けてこられたのは、やはり家族の理解と協力あってのことです。夫は単身赴任でほとんど離れて暮らしていますが、ずっと精神的に支えてくれていますし、同居の母も協力的であったため、仕事と子育てとを両立してこられたと思っています。

仕事が忙しいと、生理痛などの気になる症状があっても、受診を後回しにしたり、自分自身の身体と向き合う時間が取りづらかったりします。しかし、女性の一生を考えると、それぞれのライフステージにおいて、症状に対しての適切なサポートが必要です。女性特有の症状や不安、悩みに同じ女性として共感し、寄り添える医療を提供したいと思い、2003年に開業しました。

地域とともに歩む喜び

私が研修医の頃、非常に珍しい卵巣の絨毛癌という癌の患者さんが入院されていました。彼女は中学生の時から大人になるまで、長い間闘病されていました。その時代は今のように吐き気を抑える薬もなかったので、彼女は非常に辛い思いをしながら病気と闘っていました。抗がん剤治療中は泊まり込みで看病するお母さんをはじめ、医局員・病棟のスタッフ全員が一丸となって彼女をチームとして支えていたのが印象的でした。私は一研修医にすぎませんでしたが、皆で試行錯誤しながら、彼女とご家族を支え続けた結果、彼女は病気を乗り越えることができ、10年も経ってから外来でひょっこりお会いできました。確か結婚されていたのかなと思います。今は年令相当の体の問題と向き合っていらっしゃると思いますが、ひとりの女性をライフステージの移り変わりにあわせて見守っていける産婦人科を選んでよかったとおもう貴重な経験でした。

開業してからは、同じ患者さんを長い期間診る機会が大学病院時代よりも多くあります。特に若い頃から通ってくださっている方々の人生の節目を、一緒に迎えられることを大変喜ばしく感じます。街を歩いていると、子どもを連れたお母さんが私に声をかけてくれることもあります。コンビニで缶チューハイを買っているときなど少し気まずいこともありますが(笑)、その瞬間には、地域に根差した医師として自分が存在していると感じ、私の地元でもあるこの地域で、皆さんと一緒に歩んでいることをとても楽しく思います。

また、日々の診療の中で、不妊治療を受けていた方が妊娠したときや、生理痛やPMS(月経前症候群)でお悩みだった方がピルによって元気を取り戻す姿を見られることも産婦人科医としてやりがいを感じますね。

優レディースクリニック 待合

女性が健康で笑顔で過ごせるように

将来の妊娠に備えて、若い世代の女性やパートナー同士が現在の身体の状態や生活に向き合うことを意味するプレコンセプションケアという言葉があります。妊娠・出産には適切なタイミングがあり、健康であることも重要です。最近の若い女性をみていると、細くてきれいなのですが、筋肉があって健康的に痩せているのではなく、運動もせず食べずにじっとしていて痩せたという、ただただ細い方が多いと感じます。

健康的ではない痩せ方をしている場合には、生理が止まってしまったり、妊娠しづらくなったり、妊娠してもつわりがひどくなったりするケースも少なくありません。栄養バランスの良い食事をとって、適度に運動して健康的になっていただきたいと思います。

人それぞれ、自分が理想とするボディイメージを持っているため、私が痩せていることのリスクについてお話すると、「あと何キロ増やせばいいですか?」と前向きに改善しようという気持ちがみえる方もいれば、「別にダイエットしているわけではないので」と気にしない方もいます。将来の女性の妊娠・出産にも影響を及ぼす若い女性の「痩せすぎ」を、社会的な問題として認識し、解決に向けた取り組みが行われるように願っています。

また、開業してからPMS(月経前症候群)によって生理前にうつ状態になる方がかなり多いことを実感しています。食事に気をつけたり、ストレスを軽減したりするなどの対策はありますが、現代社会では職場での嫌な経験や日常生活における人間関係などもあり、完全にストレスを排除することは難しいでしょう。ですが、私は皆さんが今よりも明るい表情で過ごせるようになって欲しいと思っています。困難な課題かもしれませんが、少しでも改善に向かうような取り組みや配慮が社会として実現されることを期待しています。

ライフステージに合わせた治療

女性は仕事や生活と妊娠・出産のタイミングも考えていかなければなりません。何歳くらいで妊娠を望むか、それまでにできることを逆算してライフプランを立てていただきたいと思います。いざ、思い立って妊活をはじめても、すでに卵巣の働きが悪くなっていたという方や、妊娠を望んでずっと飲んでいたピルを辞めてみたら生理が止まってしまっていたという方も珍しくはありません。仕事のストレスや体重が減ってしまったことで生理が止まる方もいらっしゃいますし、ピルを飲んでいると生理が止まったことに気づかない場合もあります。

現在の婦人科の環境は変化しており、オンラインでピルが手に入り、郵送検査キットで性病の検査を行うことができる時代です。一部では、診察や治療を行わずに特定のサービスのみを提供し、それを了解した患者さんだけに対応するという傾向もみられます。

しかし、当院では、来院される方々のライフステージに合わせて、そのときに本当に必要だと考える治療をできる限り費用を抑えて提供したいと考えています。そのため、その方にとっては言いづらいことや聞きづらいことなども、その方のライフステージにおいて必要だと感じれば伝えるようにしています。例えば、患者さんがピルを希望していたとしても、その方の身体の状態やライフステージを考慮し、今は飲むべきではないと判断した場合には、理由を説明した上で処方せず、一度ご自宅でパートナーの方ともう一度話し合ってきていただくこともあります。

診療においては、薬の処方だけではなく、運動や食事などの具体的な生活面のアドバイスも行い、その方の生涯にわたる健康を予防的な意味も含めてサポートするよう努めています。

お一人おひとりの症状や不安な気持ち、悩みに寄り添った治療を行うために、患者さんが些細なことでも気になっていることを話しやすい雰囲気づくりを心がけています。当院がカーテンを少し開けた状態で内診を行っているのも、患者さんのちょっとした表情や顔色の変化に配慮しながら診察を進めるためです。

自分の身体と向き合う機会を

私にとっての仕事とプライベートの切り替えは、朝と夜の犬の散歩です。以前の私は、道で出会った知らない人との会話など考えられないほどの引っ込み思案な性格でしたが、犬を飼うようになってからは変わりました。

読書も心を落ち着かせるための大切な時間です。最近は鬼平犯科帳に夢中で、一話が15分~20分ほどで読めるので、ストレスを感じた時やイライラしたときも気持ちを切り替えることができています。また、週に2回友人と一緒に6~7kmのランニングをしています。走るペースは三輪車に抜かれるくらい、とてもゆっくりですが(笑)、心地よい汗をかくことでリフレッシュできています。

植物、特に多肉植物の子宝草がここ数年マイブームです。これは日光や水がたっぷりあっても少々足りなくても、環境に合わせて育って増えていくたくましい植物です。成長すると葉っぱのふちに新しい芽がでてきてフリルのようになり、自然に地面におちて、落ちたところで根をはって成長する植物なので、見ていて楽しく、クリニックの待合室にも置いてあります。

優レディースクリニック 院内の鉢植えコーナー

個人によって、心地よさを感じる活動や日々の生活に喜びや楽しみを見出す方法は異なると思います。私自身も自分に合った活動を取り入れ、オンとオフのバランスを保っています。日々、クリニックを訪れる多くの方々の健康とライフステージにおけるサポートが行える環境に感謝しながら過ごしています。

すべての女性がプライベートも仕事も充実した生活を送って、幸せになることを願っています。仕事一筋で恋愛などしたことがないという方も、自分自身を一人の女性として見てあげることは大事です。今後の将来について、女性としての自分の生き方について向き合い、結婚・妊娠・出産を考えたときには、今できることに前向きに取り組んでいただきたいです。
例えば、将来の妊娠を考えて、「今のうちに風疹のワクチンを打っておこう」「体づくりを考えて運動しておこう」「もう少し体重を増やしておこう」など、今でなければできないことを知って、実行につなげていただけたらと思います。妊娠・出産を望むのであれば、自分の卵巣年齢がわかるAMH検査を受けることもひとつの方法です。自分の身体について目を向けて、仕事のキャリアを築きながら、もっともっと幸せになっていただきたいですね。

※この記事は2023年6月のインタビューを元にしています。最新の情報はクリニックHPをご覧ください。

※優レディースクリニック公式HPはこちら:https://www.yu-ladies.com/index.html

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