日比谷線広尾駅から徒歩5分の「広尾 まきレディスクリニック」。2014年の開院以来、手塚真紀院長は、地域に根ざした敷居の低いクリニックをめざして、明るく丁寧に患者さんに向き合っています。
プライベートでは、鉱物など自然科学の本に熱中する一方で、頭を使いすぎたら身体を動かすことで心身のバランスも整えられているそう。
手塚院長にこれまでのご経験や婦人科医療に込める想いについて、お伺いしました。
目次
産婦人科ならではのやりがい
医師になろうと思ったのは幼稚園ぐらいのときで、それは一度も変わったことがなかったです。
小さい頃に手術を受けることがあり、手術をしに病院に行ったときに、直感的にここにずっといたいと思ったのが始まりですが、その後もモチベーションを保てたのは、医師という仕事が皆の役に立てる仕事であったからです。
誰もが必ず自分の健康には向き合わなければなりませんから、普遍的な価値を感じました。
医師になった後には専門科を選ぶわけですけれども、手先が器用だったので、できれば手術がある科がいいと思っていました。また、同性であることで安心してくれる点、患者さんに若い方が多く、その方の人生の変化に携われるという点も産婦人科を選ぶ決め手となりました。
産婦人科医として働き始めて実感したのは、やはり妊娠出産は「おめでたい」ことであり、出産に関わることはとても嬉しい場面がたくさんありました。また、妊娠・出産を含む人生の様々なイベントに関わる科なので、とてもやりがいがあります。
私は東京大学の医局に所属しているのですが、同じ医局の中で尊敬できる先生がたくさんいらして、本当に沢山のことを教えていただき成長することができました。知識をアップデートしながら正しいことをきちんと伝えている先生方がたくさんおられ、患者さんへの説明には漏れがなく、患者さんへの態度という点でも非常に誠実な先生が多かったです。
「もっと早く治療していたら」という悔しさ
医師は、治療がうまくいった方より、残念ながら厳しい結果になられた方のことを強く覚えていることが多いと思います。
「もっと早くこの患者さんに会えていたらここまで進む前に治してあげられたのではないか」といった後悔は、医師ならば誰でも一度はしたことがあるのではないでしょうか。
癌により、子宮を取らなければならない段階まで進行していたケースの中には、よく話を聞くと、不正出血があったけれど、1年くらい受診をためらわれていたということも少なくありませんでした。
他にも、先天性風疹症候群や先天梅毒など、お母さんの胎内でお子さんが影響を受けてしまった先天性の疾患もあります。赤ちゃんは、私たち産婦人科の直接の患者さんではないですが、お母さんにもっと早く関われていたら防げたかもしれないという場合は、非常に強く覚えています。
適切な医療につなぐ窓口としての「女性の保健室」
当院では、開業以来、「女性の保健室」というコンセプトを掲げています。それは、あまり「病院」感を強く出しすぎず、ハードルを下げることで気軽に来てくれるといいなという想いからです。同時に、きちんとした医療を提供するということも心がけています。
クリニックの役割は、あくまで窓口であって、初期の医療的介入で治るのか、それとも手術など高次医療が必要なのかということを見分ける必要があります。手術が必要な場合や悪性疾患の場合は、確実に信頼できるところに紹介して、適切な治療につながなければならない。つまり、ハブの役割ですよね。
当院では、セミオープンシステム(※)や医療連携を非常に大事にしていて、総合病院の先生とは密に連絡を取るようにしています。
※妊娠中期までをクリニックで、妊娠後期の健診・分娩、緊急時の診察や入院はより規模の大きい病院で診るシステム。
他に当院の特色としては、カバーしている範囲が広いという点が挙げられると思います。
開業をしようと思ってから、一般的な女性に多い乳腺や肛門などの疾患に関しては、各専門の先生に教えていただいて、なるべく1次医療圏内では診られるようにということを意識してきました。今も関連領域の専門の先生方との交流会や勉強会を大事にしています。
日本の保険診療は、それほど患者さんお1人に時間をかけられない構造になっていますが、限られた時間の中で、できるだけ患者さんの背景を読み取るよう心がけています。
大きな病気が隠れていないか見抜くのが一番大事な仕事ですが、そのために、患者さんが話しやすいように、何があってここにいらしたのかなということを考えるように意識しています。
情報にあふれる社会の中で日々忙しい女性たち
当院では、以前からWeb問診や自動精算機、LINE予約などの効率化システムを導入しており、それでかなり診療時間や患者さんの待ち時間を短縮してきました。忙しい現代人にとって、あまり待ち時間がないということは大事だと思います。
今の日本の30代ぐらいの方たちは、本当にもうギュッと忙しいですよね。キャリアを積んで、子どもも産んで保育園に入れて家事をやって…と、それはかなり大変なことです。
高校生~大学生くらいの早い時期からライフプランを設計し、子どもを持つ/持たないということについて、男女ともに考える機会があってもいいと思っています。また、産婦人科医としては、予期せぬ妊娠をして大変な方も目にしてきているので、きちんとした避妊の知識や方法を浸透させていくことも大事だと感じます。
しかし、現代は情報が溢れているので、どの情報が正しいのかわからなくなる場合も多いです。「インターネットで調べすぎて、どれが正しいのかわからなくなってしまった」という場合は、ぜひ医師に相談してもらえるとありがたいです。
健康に向き合うことの大切さ
近年では、女性誌で婦人科特集が組まれるなど、女性の健康と医療に関する話題がニュースに上がってくるようになりました。
健康の基本は、やはり食と運動と睡眠ですが、日々忙しいと疎かになるものです。
問診で「朝ご飯に何を召し上がりました?」と聞くと「食べてません」、「昨日何時に寝ました?」と聞くと「2時か3時」、「休日は1日寝ていて運動はしていません」というパターンがとても多いです。
ですので、「寝るときだけはスマホを布団に持ち込まないで」とか、「少しでいいので、YouTubeで動画を見ながら体操やヨガをしてみてはどうですか」などと具体的に提案することもあります。
生活習慣が原因ではない場合、お薬を使って治療することになります。
ピルを処方して「生理痛がとても楽になり、以前とは全然違います」とか、更年期でホルモン補充療法をしたら「すごく楽になりました」と言っていただくことがあると、とても嬉しいです。
ピルのオンライン診療など便利なサービスも増えてきていますが、薬の処方のためだけではなく、「かかりつけ医」として婦人科をとらえていただけたらと思います。薬局やインターネットで自己判断で薬を買うこととの一番の違いは、我々の専門的な知識なので、積極的に質問してくださるのが良いと思います。
だからこそ、Grace Careのようなサービスを通じて、企業と連携しながら婦人科の「かかりつけ医」をもってもらう後押しをしていくことは、とても重要と考えます。
極端に心身を犠牲にして何かを頑張るということは、やはり望ましいことではないので、薬もうまく使いながら、元気に仕事や育児を乗り切ってほしい。
頑張る女性のサポートができたら、それが産婦人科医として一番嬉しいです。
※この記事は2023年6月のインタビューを元にしています。最新の情報はクリニックHPをご覧ください。
※広尾 まきレディスクリニック公式HPはこちら:https://makiladiesclinic.com/