海外の事例紹介

不妊が変わる時代は来るか?

卵子の年齢は、関係なくなる?

子どもを望んでもなかなかできない夫婦が受ける不妊治療。この不妊治療への公的保険の適用が日本で4月からいよいよ始まります。

日本は6組に1組が不妊に悩み、世界で最も治療の件数が多い、「不妊治療大国」です。

一方、アメリカでは、ここ数年で新しい技術を用いた不妊治療のスタートアップが生まれています。その一つが、シリコンバレーに拠点を置く「「コンセプション(受胎)」という会社です。

この企業はまだまだ、基礎研究の段階ですが、人間の血液から「人工の卵子」を作ろうとしています。

彼らはどのように技術を開発しようとしているのでしょうか。そして、いつの日か、誰もが思った時に子どもを作れる時代がやってくるのでしょうか。

「人工卵子」を作る

不妊の原因の大きな理由の一つが「卵子の老化」にあります。

どんなに技術が進歩したからといっても、卵子が老いる速度を止めたり、若返らせることはできず、世界中の人たちが共通の課題を抱えています。

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そこで、この「コンセプション」は血液から、さまざまな細胞に変化する能力のある細胞の「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を作って、そこから卵子を作るために必要な細胞を作ろうとしています。

実は、マウスの実験では、iPS細胞を使って人工の卵子を作り、そこから赤ちゃんが生まれています。

コンセプションの研究内容は、詳しくは明かされていませんが、マウスで成功した方法を使って、同じプロセスをヒトで再現しようとしています。

iPS細胞から卵子の元になる「原始生殖細胞」と卵巣組織になる「卵巣細胞」を作り、これらの細胞をヒトの卵巣の中にいる時と同じ環境で培養するというのです。

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人工卵子はいつできるのか?

いつできるのかは、まだ誰にもわかりません。

ただ、コンセプションは、「基本的な技術がしっかり機能する」、と実証するのが3年以内、そして動物実験で安全性を確かめるのに2年かかるとみています。

そして、人間を対象にした第一相の臨床試験を行うには、そこからさらに数年かかると想定しています。

コンセプションのマット・クリシロフCEOは、「10年以内に人々に技術を提供できるようになることを望んでいる」と答えています。

日本では、iPS細胞から卵子や精子を作る研究は認められていますが、体外受精をすることは禁じられています。

アメリカでは、州によって規制が異なりますが、コンセプションが拠点を置くカリフォルニア州では、研究目的で受精卵を作り、胚にすることが認められています。

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倫理的な問題

人間が生殖する方法に革命をもたらそうとする、この技術の開発。そこには技術という壁だけでなく、倫理の壁も存在します。

この技術の開発過程で、人が死んだりしたらどうなるのでしょうか。

また、簡単に「人工の卵子」が作れるようになれば、胚を遺伝子編集して、知能や容姿が美しい「デザイナーズ・ベイビー」を作ることもできるようになるかもしれません。

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そのような問いに対して、「コンセプション」は「技術の開発の段階で、犠牲が出るようなことが起きるとは考えていません。一歩踏み出す前に、安全性を確認するための膨大な作業を行います。」と答えて、もし開発過程で危険なことが起きれば、技術の研究は進められないとしています。

また、デザイナーズ・ベイビーの可能性については、「遺伝子編集は、人工の卵子を作ろうとする私たちが手を出そうという分野ではありません。ただ、今後この領域で多くの議論を呼ぶ可能性があることは確かです。国際的、法的、科学的な議論が必要です」とも話しています。

男性も子どもを産める?

もし、この技術が確立されたら、男性の血液から卵子が作られるということも想定されます。

女性を介さずに、男性が遺伝的につながりのある子どもを持つことができるようになるということです。

かなりサイエンス・フィクションのようなお話になりますが、そのような技術が生まれる世界は、もしかしたら未来にはやってくるのかもしれません。

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科学技術誌「MITテクノロジーレビュー」によると、アメリカの不妊治療を専門とする医師たちは、この可能性についても見据えているということです。

記事では、生殖医学会の2020年の年次総会では、人工の配偶子(卵や精子)と遺伝子編集に関する発表が会議の大半を占めたということで、そこでは、「将来的に生殖を完全に人間の体の外で行うようになる」と話されていたそうです。

新しい技術の開発には、多くの挑戦と困難があります。しかし、その先に見えるのはどんな社会なのか、非常に興味深い話ではないでしょうか。

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