卵子凍結保管サービスを提供するGrace Bankが不妊治療を検討中の方・不妊治療経験者へアンケートを実施いたしました。
今回のアンケートは不妊治療検討中または不妊治療経験者に対してインターネット調査を実施し、122人(男性20人・女性94人)から回答を得ました。うち不妊治療を検討中が4人(3.2%)、現在、不妊治療中18人(14.8%)、過去に不妊治療をしていた方100人(82.0%)から不妊治療に関する様々な声が寄せられました。
◆アンケート集計方法
対象:妊治療検討中・不妊治療経験者
集計時期:2024年7月16日〜7月22日
回答方法:インターネット上で回答
今回はアンケートで寄せられた声とともに不妊治療の方法や費用について詳しく解説していきます。
目次
そもそも「不妊」とは?
妊娠を希望するカップルが、避妊せずに性交渉をしているにも関わらず、1年以上妊娠しないことを「不妊症」と定義します。不妊の原因としては、女性・男性それぞれに原因がある場合があります。また、男女共通の不妊の原因として挙げられる事として、加齢に伴う「卵子や精子の老化」があります。不妊かもしれないと感じたら、まずは男女ともに早めに検査を受けることをおすすめします。
◆女性の不妊因子
排卵障害 | 卵がうまく成熟しない、成熟できても排卵されないといったもの。 |
卵管閉塞 | 排卵された卵子が子宮に移動するときに通る卵管が子宮内膜症やクラミジア感染症などの原因で詰まってしまう。 |
子宮筋腫 | 子宮をつくる筋肉に良性の腫瘍ができること。 |
抗精子抗体 | 免疫の仕組みで精子を異物とみなして体内に入った精子を攻撃してしまう。 |
◆男性の不妊因子
無精子症 | 精液中に精子が見られないこと。 精子が精巣で作られていないものと、精子は作られているがその後の通り道が詰まってしまうものがある。 |
精子無力症 | 精子の動きが弱く、子宮内の卵に辿り着くことができない。 |
抗精子抗体 | 外傷や精巣の炎症などで血液中に精子が入ってしまうなどの理由で抗体をもち、免疫が精子を攻撃してしまう。 |
正直、不妊治療は女性も男性も関わることなんだと、痛感しました。なので男性側も恥ずかしがらず積極的に検査をおすすめします。
不妊の原因が自分だと思っていたので、夫がまさかの無精子症だとわかったとき、思わず病院で泣いてしまいました。
不妊の原因がまさか自分だとは思いもしなかったので、なかなか病院に行かなかったのは非常にもったいない時間が過ぎたと後になり後悔しました。
不妊治療はいつから開始した方がいい?
不妊治療を開始するタイミングに決まりはありません。加齢により、妊娠しにくくなることも考えられますが、若いうちは収入が少なく、不妊治療が経済的負担になるケースもあります。不妊治療を開始するタイミングは家庭にとって考え方がさまざまです。
今回のアンケートでは、不妊治療を開始した年齢は以下のとおりとなっております。
そのうち、約半数の57人(46.7%)が「早く始めればよかった」と感じたそうです。
早く検査を行って適切な治療を開始した方が治療の選択肢も増えますし、気持ちの面でもゆとりをもって治療に取り組めたのではないかと思います。
もっと早く不妊治療をしていれば、お金もそんなにかからなかったはずでした。
結婚が遅く、やや焦りはありましたが、とても急いではいなかったため、意識が低かったと反省しています。
不妊治療に踏み切るには年齢だけでなく、仕事や自分の妊娠への気持ちの強さが関係するので、私はこれ以上早くはじめられなかったと思います。
キャリアプランやライフプランにより状況が異なりますが、先送りにしていると、妊娠の確率が低下してしまうことを意識していただき、ご自身のタイミングで少しでも早く不妊治療を開始されることをおすすめします。
まだ不妊治療は検討していない・結婚の予定はないが将来子どもが欲しい、という女性は、まずはご自身の体の状態を把握するために、AMH検査を受診してみてはいかがでしょうか。AMH検査とは、血液中のAMH(アンチミューラリアンホルモン、別名:抗ミュラー管ホルモン)の値を調べる検査のことで、体内にどれくらいの数の卵子が残っているか(年齢相応の卵子数が残っているか)を推測することができます。
不妊治療とは?
不妊治療には、一般不妊治療(自然妊娠をサポートする治療法)のタイミング法・人工授精、高度不妊治療(卵子と精子を体外で受精させる高度な医療技術が必要になる)の体外受精・顕微授精があります。
今回のアンケート回答者が行ったことがある不妊治療は、人工授精が約半数の58人(48%)。次いで、体外受精が43人(35%)、漢方が41人(34%)、鍼灸が16人(13%)、その他が7人(6%)でした。
タイミング法 | 不妊治療の初めのステップで、受精しやすい日を狙って性交を行い妊娠を目指します。女性の月経のサイクルの中で、ちょうど排卵する2日前~当日あたりが1番妊娠しやすいと言われているので、病院にて尿中のホルモン量や卵胞の大きさを測定し排卵日を特定します。 |
人工授精 | 採取した精液の中から運動機能が良好な精子を集め、最も受精しやすい日に子宮内に注入します。 |
体外受精 | 女性から卵子を取り出し、精子と体外で受精させ、数日後に受精卵を子宮内に戻します。 |
顕微授精 | 体外受精で卵子と精子がうまく受精しない場合には、卵子に直接精子を注入し受精させます。 |
体外受精に抵抗があり、最初は排卵誘発剤→タイミング法を長く続けました。妊娠できましたが、すぐに流産してしまいました。ただ、妊娠はできるからと、体外受精になかなか踏み切れないまま、何年も無駄にしてしまったし、その分お金も無駄にしたので、最初から体外受精にすればよかったと思います。体外受精を経験し、とにかく若いうちの方がホルモンバランスも良く、早く妊娠できると思いました。
不妊治療でつらかったことは?
顔を合わせる度に義理の両親から子供の話をされるプレッシャー、周りの友人がどんどん妊娠していくのに対して心から喜べなかった。生理が来るたびに落ち込むこと、自分の精神が日々落ち込んでいくことがつらかったです。
夫婦ともに体に異常は見つからなかったのですが、長期間妊娠に至らずいつまで治療を続けなければならないのかとストレスを感じる場面が多くありました。
今回のアンケートの結果、不妊治療した期間(途中の方は現在まで)は半年~1年未満が39人(32.0%)で一番多く、3年以上不妊治療をした方は21人(17.2%)でした。
不妊治療が長引けば、精神的なストレスはもちろん、気になるのは経済的な負担です。
厚生労働省が2020年度に公表した「不妊治療の実態に関する調査研究」によると、それぞれの不妊治療にかかる費用の平均は以下のとおりです。(一部2022年から始まった保険適用前の金額です。)
◆「一般不妊治療」※それぞれ1回あたり
タイミング法 | 約数千円〜2万円(3割負担) |
排卵誘発法 | 約数千円〜2万円(3割負担) |
人工授精 | 約1万円〜3万円 |
◆「特定不妊治療」※それぞれ1回あたり
体外受精 | 約20万円〜60万円 |
顕微受精 | 約30万円〜70万円 |
私が不妊治療を始めた頃は保険が利かなかったので、経済的にきつかったです。
不妊治療のために仕事も辞めて、世帯収入が半分になったのに、保険適用の時代でもなかったので、毎回何万から何十万も治療費を払うのが何年か続き、かつ成果が出ないことに、金銭的にも精神的にもとてもストレスになった。
2022年(令和4年)4月から不妊治療の費用が保険適用され、経済的負担も以前に比べ緩和されています。以前から不妊の検査や、症状がある場合の治療には保険が適用されていましたが、今回新たに体外受精や顕微受精も含めて3割負担になりました。ここで注意しなければならないのは、保険適用には年齢制限があることです。
◆体外・顕微受精における保険適用の年齢制限(不妊治療開始時における女性の年齢)
40歳未満 | 通算6回までの移植が適用 |
40〜43歳未満 | 通算3回までの移植が適用 |
43歳以上 | 適用なし |
また、医療費控除や医療費が高額になった場合には高額療養費制度も対象になります。
卵子凍結とは?
卵子凍結は、若く妊孕性(=妊娠する力)の高い未授精の卵子を凍結保存することで、将来の不妊治療に備える方法です。
採卵した卵子は、凍結保護剤を利用し、細胞内の水分を除去したうえで、ガラスと同じ状態を保ちながら液体窒素内で高速に凍結させます(=急速ガラス化法)。凍結による胚のダメージは主に水晶形成によるものですが、急速ガラス化法は、細胞を結晶化することなく凍結することが可能です。急速ガラス法で凍結した卵子を、マイナス196℃の液体窒素内に保存することにより、半永久的にそのままの状態を保つことができます。
採卵時とほぼ変わらない出産率を維持でき、2013年には日本生殖医学会がガイドラインを正式決定し、健康な未婚女性が将来の妊娠に備えて卵子凍結を行うことを認めています。(社会的適応による卵子凍結)
卵子凍結をおすすめしたいか?
今回のアンケートでは、未受精卵(受精前の卵子)の卵子凍結には「それなりに意味があると思う」と答えた方が56人(45.9%)、「どちらと言えない」と答えた方が30人(24.6%)、「とても意味があると思う」と答えた方が29人(23.8%)という結果になりました。
若い年齢の時に採卵して質と状態の良い卵子を確保しておくのは、高齢になった時の不妊治療では絶対に有利に働くと思う。ただし、男性不妊や高齢になった時の女性側の問題も別に出てくる可能性もあり、凍結した卵子が全て妊娠できるものかどうかの保証は無い。凍結卵子もいくつあれば確実というものでもないと思う。
自分の人生の可能性を広げておくことは、その人にとってお守りになると思います。自分の気持ちも、この先の人生もどうなるかわからない中で、少しでも後悔をしない対策を取っておくことは間違いではないと感じます。
若い女性に卵子凍結を勧めたいかという問いに対しては、「どちらともいえない」と答えた方が55人(45.1%)、「どちらかというとおすすめしたい」と答えた方が40人(32.8%)、「とてもおすすめしたい」と答えた方が14人(11.5%)という結果になりました。
現時点でわからなくても、高齢になった時にリカバリーできない部分は確実に出てくるので。結婚や出産を希望する可能性がわずかでもあるのであれば卵子凍結しておくのはひとつの手段だと思う。ただし凍結しておけば必ず妊娠出産できるという保証はないことは十分に理解しておくことが必要だと思う。
年をとるにつれて卵の質が衰えてきてしまうので早い段階から用意しておくのは良いと思う。どんなに頑張っても若い頃の卵の質には戻らないので。
若い時は子供は簡単にできるものだと思っているだろうけど、簡単にできない場合も物凄く多く、女性は年齢制限があるのだという事を認識しておくべきだと思う。特にキャリアを積みたい場合はおすすめしたい。
Grace Bankでは卵子凍結体験者の方のアンケートも実施しております。体験者のリアルな声をぜひこちらの記事でご確認ください。
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名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)
杉山産婦人科の医師・培養士による技術を用いた質の高い診療を提供。
将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
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