卵子凍結について

卵子凍結に補助金は出る?補助金対象になるケースとは~東京都が健康な女性への「卵子凍結」支援を開始~

卵子凍結をご存知ですか?

実は、場合によって卵子凍結に対して国や自治体から補助金(助成金)が出ます。

今回は、

  1. 卵子凍結の補助金が出るケース
  2. 卵子凍結の補助金額
  3. 卵子凍結にかかる費用

をご紹介します。

卵子凍結の補助金が出るケース

2021年度(令和3年)から厚生労働省より「小児・AYA世代がん患者等に対する妊孕性温存研究促進事業」か開始されました。

これは『将来子供を産み育てることを望む小児・AYA世代(思春期(15歳~)から30歳代までの世代)のがん患者が希望を持ってがん治療に取り組めるように、将来子供を出産することができる可能性を温存するための妊孕性温度療法に係る費用の一部を助成し、その経済的負担の軽減を図る』(厚生労働省HPより)というものです。

国は費用の負担軽減をすることにより、妊孕性温存研究の臨床情報を収集し「妊孕性温存療法」を高めていくことができます。

この一環として卵子凍結をする場合は、国や自治体から補助金が出ます。

「妊孕性温存療法」とは?

妊孕性(にんようせい)というのは妊娠するための力のことを意味します。妊娠するためには体の中の生殖に関わる器官とその機能がなければいけません。

手術でその臓器や器官を取り除いてしまったり、がんの治療の中で行う抗がん剤治療や放射線治療をしたりすることによって、卵巣や精巣の生殖機能にダメージを受けることがあります。これにより妊孕性が下がったり失われたりしてしまうことがすでにわかっています。

しかし最近では治療により、がんにかかってもその後の生存率は高くなっていることも事実です。

その後の人生の中で赤ちゃんを迎えたいという『元がん患者』の希望を叶えるための選択肢として「妊孕性温存療法」というものがあります。小児のがん患者や、AYA世代と言って思春期〜30歳代の若い世代のがん患者が対象で、これに対し補助金が出ることがあります。

以下が補助金対象となる「妊孕性温存療法」の例です。治療にかかる部位によって凍結して保存する対象が異なります。

  • 胚(受精卵)凍結
  • 未受精卵凍結
  • 卵巣組織凍結
  • 精子凍結
  • 精巣内精子採取術

などがあります。

未受精卵(卵子)凍結の補助金の対象者・条件

卵子凍結に対して補助金を受け取れる対象者や条件があります。

1.年齢が凍結保存する時点で男女ともに43歳未満であること。

2.所得制限はなし。

3.対象の疾病と治療内容

  • 白血病、脳腫瘍、大腸がんなどに対して、「小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存に関する診療ガイドライン2017年版(日本癌治療学会)」(http://www.jsco-cpg.jp/fertility/guideline/)の妊孕性低下リスク分類に示された治療のうち、高・中間・低リスクの治療。
  • 乳がんなどに対する長期間のホルモン療法。
  • 全身性エリテマトーデスなどに対するアルキル化剤が投与される治療。

4.対象の認定施設 都道府県ごとに指定医療機関があり、それ以外では対象となりません。

5.申請方法 各自治体の用意する申請書と必要書類を添付し、費用を支払った年度のうちに都道府県に申請します。

もしやむを得ない事情があり年度内に申請ができない場合は翌年度に申請することができるので都道府県に相談してください。

厚生労働行政推進調査事業費:小児・AYA世代のがん患者等に対する妊孕性温存療法のエビデンス確立を目指した研究―安全性(がん側のアウトカム)と有効性(生殖側のアウトカム)の確立を目指して

卵子凍結の補助金額(自治体独自の助成は含まず)

対象の妊孕性温存療法助成限度額/回助成回数備考
①胚(受精卵)凍結35万円2回まで
②未受精卵子凍結20万円2回まで
③卵巣組織凍結40万円2回まで組織採取に1回、再移植時に1回
④精子凍結2.5万円2回まで
⑤精子凍結(精巣内精子採取)35万円2回まで

厚生労働行政推進調査事業費:小児・AYA世代のがん患者等に対する妊孕性温存療法のエビデンス確立を目指した研究―安全性(がん側のアウトカム)と有効性(生殖側のアウトカム)の確立を目指して

卵子凍結の補助金が出ないケース

卵子凍結に補助金が出ないケースもあります。すでに自治体からの不妊治療の補助金(「不妊に悩む方への特定治療支援事業」に基づく助成)を受けている場合です。

また、これまで将来の妊娠確率アップや不妊治療に備えてなどがん治療などの目的以外で卵子凍結をする場合には補助金が出ることはありませんでしたが、東京都が卵子凍結にかかる費用について23年度より助成を開始しました。

東京都は15日、将来の妊娠を望む人への具体的な支援策を公表した。凍結した卵子を活用した生殖補助医療を利用する人に対し最大150万円を助成する。都は2022年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産むとされる子供の数)が1.04と全国で最も低い。妊娠を希望する人への支援を広げ、将来の妊娠の可能性を残せるようにする。

対象となるのは妻の年齢が43歳未満で、凍結卵子を使った生殖補助医療を受ける夫婦。1回につき25万円を上限に最大6回まで助成する。10月16日から申請を受け付ける。

加えて18〜39歳の都内在住の女性が都の指定する医療機関で卵子の凍結保存をする場合、最大30万円を助成する。都の調査への協力や説明会への参加が必要で、凍結する年度に上限20万円、次年度以降は年に2万円を最大5年間助成する。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC1564G0V10C23A9000000/

卵子凍結費用の一部を助成する制度が、国や自治体によっては存在します。2024年11月現在、以下の制度が利用できます。

  • 厚生労働省「小児・AYA世代がん患者等に対する妊孕性温存研究促進事業」:小児・AYA世代のがん患者を対象とした助成金制度です。卵子凍結が対象となる場合があります。
  • 東京都「卵子凍結にかかる費用助成」:東京都内に居住する18歳から39歳の女性を対象に、卵子凍結・保管費用を最大30万円助成する制度です。
  • 大阪府池田市「卵子凍結費用助成事業」:大阪府池田市に居住する18歳から39歳の女性を対象に、卵子凍結・保管費用を最大30万円助成する制度です。
  • 山梨県「卵子凍結支援事業」:山梨県に居住する18歳から39歳の女性を対象に、医療機関(及び調剤薬局)に支払った卵子凍結費用の総額の1/2、上限20万円(※県外医療機関の場合は上限10万円)を助成する制度です。

これらの制度の利用条件や申請方法は、それぞれの自治体によって異なります。また、企業によっては、福利厚生として卵子凍結費用の一部または全額を補助する制度を導入している場合もあります。卵子凍結を検討する際には、これらの助成金・補助金制度や企業の福利厚生制度についても、事前に確認することをお勧めします。

卵子凍結にかかる費用は?

卵子凍結にかかる費用は、クリニックにお支払いいただく採卵・凍結費用と、保管費用に分かれます。

採卵・凍結費用はクリニックによって、また採卵回数や採卵個数によっても異なりますが、おおまかな目安として、1回の採卵で10個の卵子が採れた場合、初年度で総額50~60万円、次年度以降、毎年3万円ほどの保管費用が発生します。

採卵・凍結費用

①準備:約15万円(初回検査、ホルモン検査、排卵誘発剤など) ※各クリニックにより異なり7〜12万ほど

②採卵:約20万円(個数にかかわらず) ※麻酔希望の場合は、局所麻酔2万、静脈麻酔5万が加算

③凍結:1本あたり約3万円(1本に3個まで凍結可) ※4~6個は6万円、7~9個は9万円、10~12個は12万円が目安

・保管費用(Grace Bankを利用した場合)

①保管費用:年間35,000円~/1ケーン(15個まで) ※初期費用として+5万円

②出庫費用:保管施設からクリニックまでの移送について、専門業者による移送費用の実費(都内で3万円程度)

Grace Bankでは年払いや月払いなど選べるプランがあり、保険のような感覚で卵子を安全に保管しておくことができます。

また、特別優遇ローンのご用意もありますのでHPをご覧ください。

卵子凍結をするメリット

現在では初婚年齢や初産年齢が高くなるとともに不妊治療をする人も増えています。厚生労働省によると不妊治療の検査や治療を受けていたもしくは受けているという夫婦は約5.5組に1組と言われています。不妊治療の場合、体外受精にかかる費用は1回あたり約50万円と軽々しくできる金額ではなありません。

さらに妊娠確率は卵子の年齢に比例することがわかっています。卵子も実年齢に伴って老化するので、さまざまなライフスタイルの中でいざ妊娠しようと思ったタイミングで実現させるのは簡単なことではないかもしれません。

そこで、卵子が若く妊孕性(妊娠するための能力)が高いうちに、自分の卵子を凍結保存することで、将来体外受精をした際の成功率を上げることができます。卵子が若ければ40代の体外受精による出産率は20代と大きく変わりません(米CDC、2021)

※自社HPより抜粋(https://gracebank.jp/guide/#p_guide03

まとめ

卵子凍結の補助金が出るのは、がん治療の妊孕性温存療法の一部対象者と東京都の「卵子凍結に係る費用への助成」の対象者(東京都在住の18歳から39歳までの女性※採卵実施日における年齢)をはじめとする一部自治体の支援があります。

個人で卵子凍結をするためにかかる費用は、採卵・凍結で約40万円+Grace Bankの場合、初期費用:50,000円(税込55,000円)、年間保管費用:35,000円(税込38,500円)~※卵子15個まで、となります。

不妊治療の費用は、体外受精1回に約50万円がかかり、年齢を重ねるごとに回数がかさむことを考えると、若い卵子をもち妊孕性の高いうちに卵子凍結保存をして将来の不妊治療に備えることは費用面でも賢い選択のひとつと言えます。

なお、東京都の「凍結卵子を使用した生殖補助医療への助成」を使用すれば、卵子融解・授精・胚培養・胚凍結・胚移植・妊娠確認までの費用にも助成がでます。(※1回につき上限25万円(最大6回まで))

詳しくは東京都福祉保健局のHPをご確認ください。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/ranshitouketsu/shiyou/gaiyou.html

監修者

岡田 有香 おかだ ゆか

グレイス杉山クリニックSHIBUYA 院長

日本産科婦人科学会専門医
da Vinci certified First Assistant (ダビンチ認定資格取得術者)
日本母体救命システム普及協議会J-CIMELSプロバイダー


グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)

杉山産婦人科の医師・培養士による技術を用いた質の高い診療を提供。
将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
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