妊娠中に感染すると母体が重症化したり、胎児に感染し、流産・早産のリスクや生まれてくる赤ちゃんに障害が生じるおそれがある感染症があります。
今回はその中でも「風しん」について解説します。
妊娠中の女性が風しんに感染すると生まれてくる赤ちゃんに先天性の障害が生じるリスクがあります。風しんは予防接種で防ぐことができる感染症です。妊娠を考える女性だけでなく、パートナーや周囲の人も予防に努めてください。
目次
風しんとは
風しんとは、風しんウイルスによって引き起こされる感染症です。風しんウイルスはくしゃみや咳などの飛沫感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播します。風しんの免疫がない集団で、1人の風しん患者から5~7人にうつす強い感染力を有します。また、発疹の出る前後約1週間は人に感染させる可能性があります。
風しんに感染すると、通常2~3週間の潜伏期間の後に、耳の後ろや首などのリンパ節の腫れ、関節の痛みなどの症状が現れます。
風しんの症状は、子どもの場合、症状が軽く、数日の経過で回復するといわれていますが、まれに脳炎、血小板減少性紫斑病などの合併症が、2,000~5,000人に1人くらいの割合で発生することがあります。
また、大人がかかると、発熱や発疹の期間が子どもに比べて長く、関節痛がひどいことが多いとされています。脳炎や血小板減少性紫斑病を合併するなど、入院加療を要することもあるため、決して軽視はできない疾患です。
妊娠中の女性が風しんに感染すると?
風しんに対する免疫が不十分な妊娠20週頃までの女性が風しんウイルスに感染すると、生まれてくる赤ちゃんに先天性の障害(先天性風しん症候群:CRS)が生じる可能性が高くなります。その確率は妊娠1ヶ月でかかった場合に50%以上、妊娠2ヶ月の場合は35%、妊娠3ヶ月で18%、妊娠4ヶ月で8%程度とされています。妊娠中の女性が無症状であっても先天性風しん症候群は発生することがあります。
【先天性風しん症候群の赤ちゃんに見られる主な症状】
先天性の眼の病気 | 白内障 | 黒目が白く濁って目が見えにくい |
網膜症 | 眼の奥の膜に異常がみられる | |
緑内障 | 眼の中の圧が高くなる | |
先天性の耳の病気 | 難聴 | 耳が聞こえにくい |
先天性の心臓の病気 | 動脈管開存症 | 生まれたら閉じるはずの動脈管という管が開いたままになり心臓や肺に負担がかかる |
低出生体重 | 小さく生まれる | |
血小板減少性紫斑病 | 血小板という血液の成分が少なくなり、紫色の反転が皮膚にでる |
先天性風しん症候群自体の治療法がなく、心疾患は軽度であれば自然治癒することもありますが、手術が可能になった時点で手術をするケースもあります。白内障も同様に手術可能になった時点で手術をすることもありますが、手術後も遠近調節に困難が伴うことがあります。難聴については、人工内耳が開発され、乳幼児にも応用されつつあります。
風しんの感染を防ぐには?
風しんの予防のためには、予防接種が最も有効な予防方法です。風しんワクチンを接種することで、95%以上の人が風しんウイルスに対する免疫を獲得することができると言われています。また、2回の接種を受けることで1回の接種では免疫が付かなかった方の多くに免疫をつけることができます。接種後年数の経過と共に、免疫が低下してきた人に対しては、追加のワクチンを受けることで免疫を増強させる効果があります。
今まで風しんにかかったことが確実である(検査で風しんの感染が確認された場合)場合は、免疫を持っていると考えられることから、予防接種を受ける必要はありません。もし、風しんにかかったことがある人がワクチン接種をしても副反応は増強することはないと言われています。
妊娠可能年齢の女性で風しん抗体がない場合は、積極的にワクチンで免疫をつけることが望まれます。ただし、妊娠中の女性は予防接種が受けられないため、抗体を持たない又は抗体価の低い場合は、風しんが発生している地域では、可能な限り不要不急の外出を避けるようにしましょう。また、妊娠中の女性の周囲の人(パートナー、子ども、同居家族、職場の方)も、風しんに感染しないように予防に努めることが重要です。
妊娠を希望する女性と妊婦の同居家族を対象に、風しんの免疫の有無を確認するための抗体検査を無料で受けることができる事業を多くの自治体で行っています。自治体ごとに風しん対策の補助の有無や補助の額などが異なるため、抗体検査を希望される方は、居住地域の保健所にご相談ください。
妊娠中に風しん抗体がないことがわかった場合は、出産後にできるだけ早く風しんの予防接種をうけることをおすすめします。次の妊娠の計画がない場合でも、また妊娠する可能性がありますし、生まれてきた子どもや他の妊娠中の女性に風しんをうつさないためにも予防接種を検討してください。授乳中でも風しんの予防接種は可能です。
将来妊娠を考える女性に知ってほしい「プレコンセプションケア」という考え方
プレコンセンプションの、「プレ」とは「~前の」、「コンセプション」とは「妊娠、受胎」を意味します。「プレコンセプションケア」とは、将来の妊娠を考えながら、女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うことを言います。
直近で妊娠を考えている女性だけでなく、将来少しでも妊娠や子どもを持つことを考えているのであれば、すべての女性、それだけでなくそのパートナーも一緒に考えることが大切です。プレコンセプションケアを早いうちから行うことで、自身のキャリア・ライフプランを考える助けとなります。
特に日本では、今回紹介した風しんのような「予防すべき先天異常が予防できていない」ことに加え、①若い女性の栄養や活動性の問題、②ヘルスリテラシーが低い、③社会的な問題(晩婚化・不妊治療件数の増加など)、からプレコンセプションケアが重要視されています。
将来の妊娠に向けた実効性のあるアクションとしてご紹介したいのが「卵子凍結保存」です。卵子凍結保存とは、若く妊孕性の高い卵子を凍結保存することによって、将来の不妊治療に備える方法です。
この「卵子凍結保存」については、東京都が、健康な女性の将来のための卵子凍結保存に関して、費用助成を行うなど、ニュースでもお耳に入る機会も多くなったことかと思います。
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▼参考
- 厚生労働省 風しんについて https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/rubella/index.html
- 政府広報オンライン 妊娠を希望する女性や家族・職場の人も。生まれてくる赤ちゃんのために、風しんの予防接種を! https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201406/3.html
- 職場における風しん対策ガイドライン https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/rubella/kannrenn/syokuba-taisaku.pdf
- NIID 国立感染症研究所 先天性風疹症症候群 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/429-crs-intro.html