卵子凍結について

プレコンセプションケアとは?|プレコンセプションケアチェック項目と将来の妊娠に向けたアクションをご紹介

皆さんは将来の妊娠について考えたことはありますか?

30歳までには、来年には、3年後には、ご自身のライフプランとのバランスも考慮しながら妊娠のタイミングを考えている方もいらっしゃると思います。

今回は将来の妊娠に向けた大切な考え方である「プレコンセプションケア」についてご紹介します。また、プレコンセプションケアのチェック項目と将来の妊娠に向けた具体的なアクションもご紹介します。

プレコンセプションケアとは?

プレコンセプションケアとは、将来の妊娠を考えながら女性やカップルが自分たちの生活や健康に向き合うことです。直近で妊娠を考えている女性だけでなく、将来少しでも妊娠や子どもを持つことを考えているのであれば、すべての女性、それだけでなくそのパートナーも一緒に考えることが大切です。プレコンセプションケアを早いうちから行うことで、自身のキャリア・ライフプランを考える助けとなります。

WHO(世界保健機関)が「妊娠前の女性とカップルに医学的・行動学的・社会的な保健介入を行うこと」を提唱しており、国際的に取組みが推奨されている背景があります。加えて日本でも、①出産適齢期・出産可能年齢にある若い男女の健康増進、②その世代から産まれる次世代の子どもたちの健康増進、③正しい知識にもとづく計画的なキャリア・ライフプラン形成による経済活動の活性化や少子化対策のため、厚生労働省がさまざまな啓発活動をおこなっています。

(参考:こども家庭庁「健やか親子21」プレコンセプションケア

なぜプレコンセプションケアが大事なのか?

特に日本では、①若い女性の栄養や活動性の問題、②ヘルスリテラシーが低い、③予防すべき先天異常を予防できていない、④社会的な問題からプレコンセプションケアが重要視されています。

若い女性の栄養や活動性の問題

食べるものが溢れている現代の日本社会ですが、実は「栄養不足」が問題視されています。食生活の乱れ、偏食、過度なダイエット、ストレスなどで、やせや、肥満が蔓延していて、特にやせ型体質の人のうち、20代女性が占める割合は約20%(※)となっています。

母体がやせ型だと、切迫早産・低出生体重児のリスクが高いといわれています。出生時の平均体重は男女ともに減少傾向にあり、2000年代に入ってからは3kgを下回っています。

(※データ出典:厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」1.肥満及びやせの状況

【出生時の平均体重の比較(kg)】

1960(昭和35)1970(昭和45)1980(昭和55)1990(平成2)2000(平成12)2010(平成22)
男子3.13.23.233.153.042.98
女子3.03.13.163.062.962.91

(データ出典:厚生労働省「乳幼児身体発育調査:調査の結果 平成22年」

このようなことから、健全な妊娠・出産のためにも、適正体重(BMI指数)、バランスの良い食生活、適度な運動など、若い世代に対する正しい健康知識の啓発のため、プレコンセプションケアが必要となっています。

BMI指数(Body Mass Index・肥満度を表す指数)は、体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)で計算します。妊娠前の体重はやせすぎでも、太りすぎでも赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があります。適正体重を意識しましょう。

BMI<18.5低体重(やせ)
18.5≦BMI<25.0普通体重(適正)
25.0≦BMI<30.0肥満(1度)
30.0≦BMI<35.0肥満(2度)
35.0≦BMI<40.0肥満(3度)
40.0≦BMI肥満(4度)

(参考:日本肥満学会判定基準

ヘルスリテラシーが低い

日本は、性と生殖に関する教育が国際基準に立ち遅れていると言われています。ワクチンの接種率やがん検診率の低下に加え、避妊や性感性症から自分自身を守る意識の低さ、妊娠前・妊娠中・産後の女性の高喫煙率があげられます。

「日本における予定外妊娠の医療経済的評価」(※1)では、日本全体の年間推定予定外妊娠数は約61万人(15~44歳の女性)と推計されています。また、人工妊娠中絶件数は令和4年度で122,725件で、うち25歳以下の件数が40,113件あります。(※2)

(※1:大須賀穣ら(2019)「日本における予定外妊娠の医療経済的評価」、『医療と社会』J Health Care Soc doi:10.4091/iken.2019.003(早期公開))
(※2:厚生労働省「令和4年度衛生行政報告例の概況 母体保護関係」より)

また、失敗率が3~14%のコンドームに対し、99.7%の避妊効果が期待できるピルですが、日本では2.9%の内服率といわれており、諸外国に比べまだまだ普及していません。ピルが普及しない背景にはヘルスリテラシーの低下・性教育の遅れがあります。

また、月経にまつわる諸健康問題を「毎月のことだから」と見過ごしてしまう方も多くいます。

働く女性約1,300人に対しておこなわれたアンケート調査(※3)では、働く女性の約9割に生理痛の経験があるという結果でした。生理痛がある女性のなかで「生理休暇」を取得した人の割合は約1割と回答しています。

(※3:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ビジネス・レーバー・トレンド2022年8・9月号」

生理痛は女性ホルモンバランスの乱れが原因のことも多く、放置すると卵巣や子宮にダメージが蓄積し、将来不妊につながる可能性もあります。また、鎮痛薬を飲まないと乗り切れないほどの重い生理痛には、子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れている可能性もあります。早めの婦人科受診をおすすめします。

予防すべき先天異常を予防できていない

妊娠前からもっている母体のリスク因子が妊娠・出産・赤ちゃんの健康に影響します。妊娠合併症・先天異常には未然に防ぐことができるものがあります。特に、妊娠前に葉酸の摂取をすることで、神経管閉鎖障害合併などのリスク低減の可能性があります。

また、風しんワクチンの接種や、高血糖に気を付けることが胎児への合併症リスクの低減につながります。風しんは、風しんウイルスによって引き起こされる急性の感染症で、春から初夏にかけて多くみられます。2~3週間の潜伏期間の後、発熱、発疹、リンパ節の腫れといった症状がでます。妊娠初期の女性が感染すると、胎児に先天性風しん症候群(CRS)(※4)を起こすこともあります。

風しんは予防接種で防げる病気であり、ワクチン接種は個人でできる有効な予防方法です。免疫をあらかじめ獲得しておくことが重要であるため、予防接種法の対象疾患とされており、区市町村が予防接種を実施しています。女性だけでなく、パートナーや周囲の方も、生まれてくる赤ちゃんを先天性風しん症候群から守るために、抗体検査で風しんの免疫をもっていないことが確認された方は、ワクチン接種をご検討ください。

(※4:風しんに免疫のない女性が妊娠初期に風しんに感染し、風しんウイルスが胎児に感染することにより、出生児に先天性の心疾患、難聴、白内障等の障害を起こす病気の総称)

社会的な問題

日本の平均初婚年齢は、1995年に比べると男女とも3歳ほど上がっている晩婚化の現状があります。

また、第1子出生時の母の平均年齢も1995年に比べて3歳ほど上がっています。

(出典:厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」結果の概要

加えて、体外受精の実施件数は、ここ10年で激増しているという不妊治療件数の増加の現状があります。2010年には、約10万周期だったのが、2015年で約42万周期、2019年で約46万周期、2020年で約44万周期となっています。

(参考:日本産婦人科学会「2020年ARTデータブック」)

一方で、不妊治療中の女性は、仕事と不妊治療が両立できないと答えた人は約3割に上り、仕事の継続やキャリアをあきらめた人が多く、不妊治療支援などの福利厚生導入が多くの企業(※5)に広がるよう、プレコンセプションケアが必要となっています。

(※5:厚生労働省の推奨する「不妊治療と仕事の両立支援」のもと、不妊治療を受けながら働き続けられる職場づくりへの取り組みは徐々に広がっているが、支援制度等を実施している企業は約3割(参考:厚生労働省「不妊治療と仕事との両立サポートハンドブック」))

このような、晩婚化・不妊治療の件数の増加、女性のキャリアとライフプランの両立の課題を踏まえ、妊娠・出産に関する正しい知識啓発のため、プレコンセプションケアが必要となっています。

プレコン・チェックをしてみよう

プレコンセプションケアは「いまの自分を知る」ことから始まります。いまの自分の健康状態や妊娠をするための体づくりができているかを把握するためにプレコン・チェックをしてみましょう。妊娠は女性だけの問題ではありません。男性もぜひプレコン・チェックで自身の健康状態を把握しましょう。

プレコン・チェックシート(女性用)

  • 適正体重をキープしよう。
  • 禁煙する。受動喫煙を避ける。
  • アルコールを控える。妊娠したら禁酒する。
  • バランスの良い食事をこころがける。
  • 食事とサプリメントから葉酸を積極的に摂取しよう。
  • 150分/週運動しよう。こころもからだも活発に。
  • ストレスをためこまない。
  • 感染症から自分を守る。(風疹・B型/C型肝炎・性感染症など)
  • ワクチン接種をしよう。(風疹・インフルエンザなど)
  • パートナーも一緒に健康管理をしよう。
  • 危険ドラッグを使用しない。
  • 有害な薬品を避ける。
  • 生活習慣病をチェックしよう。(血圧・糖尿病・検尿など)
  • がんのチェックをしよう。(乳がん・子宮頸がんなど)
  • HPVワクチンを接種したか確認しよう。
  • かかりつけの婦人科医をつくろう。
  • 持病と妊娠について知ろう。(薬の内服についてなど)
  • 家族の病気を知っておこう。
  • 歯のケアをしよう。
  • 計画:将来の妊娠・出産をライフプランとして考えてみよう。

プレコン・チェックシート(男性用)

  • バランスの良い食事をこころがけ、適正体重をキープしよう。
  • たばこや危険ドラッグ、過度の飲酒はやめよう。
  • ストレスをためこまない。
  • 生活習慣病やがんのチェックをしよう。
  • パートナーも一緒に健康管理をしよう。
  • 感染症から自分とパートナーを守る。(風疹・B型/C型肝炎・性感染症など)
  • ワクチン接種をしよう。(風疹・おたふくかぜ・インフルエンザなど)
  • HPVワクチンをうとう。
  • 自分と家族の病気を知っておこう。
  • 計画:将来の妊娠・出産やライフプランについてパートナーと一緒に考えてみよう。

(引用元:国立成育医療研究センター

東京都が開催する「TOKYOプレコンゼミ」をご存知ですか?都内在住の18~39歳の方を対象にプレコンセプションケア(性や妊娠に関する正しい知識を身に付け健康管理を促すこと)に関する講座を東京都が月1回程度開催しています。受講された方を対象に、妊娠・出産前のヘルスチェックとしての各種検査が女性は上限3万円、男性は上限2万円助成されます。ぜひこちらの記事もご確認ください。

いまの自分を知る|卵子の残りの数がわかるAMH検査とは

男性の精子が、毎日作られるのと異なり、卵子の数は胎児の時から決まっていて、生まれたときには約200万個ですが、思春期には30~50万個まで減り、閉経時には1,000個まで減少します。

AMH検査とは、血液中のAMH(アンチミューラリアンホルモン、別名:抗ミュラー管ホルモン)の値を調べる検査のことです。「AMH」とは、卵巣内の発育過程の卵胞から分泌されるホルモンで、AMH値から、体内にどれぐらいの数の卵子が残っているか推測することができます。

卵子は、加齢に伴って老化し、数および質が低下し、受精能力が衰えます。特に、卵子の老化が加速するのは、35歳頃からと言われます。加齢に伴って妊娠確率が下がることは、よく知られていますが、大きな原因の一つは、「卵子の老化」です。残念ながら、「卵子の老化」については、髪質や肌などのように、目に見える形や、感覚的にも感じることができません。卵子の老化をAMH検査で数値化することで、卵巣予備能(体内にある卵子の数)を知る事が出来れば、すぐに妊娠の予定がなくても、体のタイムリミットを意識し、計画的なライフプランが立てられる指標になるなどのメリットが挙げられます。また、値の数値の高さ・低さを基に、多嚢胞性症候群や早発卵巣不全など、不妊につながる病気の早期発見・治療ができることも、メリットとして挙げられます。

将来の妊娠に向けたアクション|卵子凍結とは

将来の妊娠に向けた具体的なアクションとしてご紹介したいのが「卵子凍結保存」です。若く妊孕性の高い卵子を凍結保存することによって、将来の不妊治療に備える方法です。

この「卵子凍結保存」については、東京都が、健康な女性の将来のための卵子凍結保存に関して、費用助成を行うなど、ニュースでもお耳に入る機会も多くなったことかと思います。

Grace Bankでは、日本最大級の卵子凍結保管サービスを行っております。厳選したクリニックの全国ネットワークを持ち、20年間無事故の生体凍結保管施設での一括保管をおこなうことで、高い安全性と将来の不妊治療を受ける際の高度な利便性を実現しております。

Grace Bankでは卵子凍結に関するオンラインセミナー(無料)を開催しています。少しでも卵子凍結保存に興味を持たれた方は、ぜひGrace Bankの無料セミナーにご参加ください。

監修者

名倉 優子 なぐら ゆうこ

日本産科婦人科学会専門医


グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)

杉山産婦人科の医師・培養士による技術を用いた質の高い診療を提供。
将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
スタッフは全員女性。明瞭な料金設定も人気!

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