生理不順は症状を放置しておくと、不正出血、黄体機能不全などの原因になる可能性や、子宮筋腫、子宮体がんなどの病気が隠れている可能性があるといわれています。さらに、子宮内膜が十分に作られない為に、妊娠しにくい不妊体質になるリスクも生じてきます。
今回は生理の仕組みや正常な生理についてご紹介します。そして、妊娠に重要な「卵子の質」や卵子の質を高める方法を、お伝えさせていただきます。
目次
生理の仕組み
生理は、卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)(※1)という女性ホルモンの分泌が、周期的に子宮内膜に作用することによって起こります。より詳しく専門的にご説明します。脳の視床下部から分泌されるGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)が、下垂体を刺激し、ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)(※2)を分泌するよう指令を出します。すると下垂体がFSH(卵胞刺激ホルモン)(※3)を分泌し、卵胞が刺激され、発育した成熟卵胞となりエストロゲンを分泌します。エストロゲンの分泌が十分になると、下垂体からLH(黄体化ホルモン)が大量に分泌され排卵がおこなわれます。排卵後の卵胞は、黄体という塊になり、この黄体が卵胞ホルモンと黄体ホルモンを分泌し、受精卵が着床しやすくするために準備します。しかし着床しないと、これらのホルモンは減少し、排卵後2週間程度で子宮内膜がはがれて「生理」となります。
(※1)卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)
卵胞ホルモンは卵胞の発育とともに作られ子宮内膜を増殖させたり、頸管粘液の分泌を促したりする働きがあります。エストロン、エストラジオール、エストリオールの3種類があります。黄体ホルモンは黄体から分泌され、子宮内膜の着床準備や妊娠維持のために働きます。
(※2)ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)
性腺刺激ホルモンのこと。脳の下垂体から分泌されて、FSH(卵胞刺激ホルモン)とLH(黄体化ホルモン)の2種類があります。
(※3)FSH(卵胞刺激ホルモン)
性腺刺激ホルモンの一種。卵胞を成熟させ、エストロゲンの分泌を促します。基礎値として、卵胞が発育していない月経3日目頃に値を測定することで、卵巣の予備能力を推測することもできます。
私の生理は大丈夫?生理不順の目安は?
生理の仕組みを考えると、沢山の作用が体の中で起こっていることに改めて驚かされます。ここで、正常な生理というものはどのようなものかご説明します。
正常な生理とは、周期・期間・経血量の異常がないことをいいます。周期は25日~39日程度、期間は3日~7日程度、経血量は20グラム~140グラム(※4)といわれています。生理不順は、これらの正常な生理でない状態のことをいいます。
(※4)経血量は20グラム~140グラム
目安は生理用ナプキンの使用量が多い日には1日5~6枚、それ以外の日に1日3~4枚程度
生理不順だと妊娠しにくい?
生理不順で悩まれる方が「妊娠はしにくいのか?」という疑問を持たれることもあるかと思います。生理不順は、女性ホルモンバランスの乱れや病気などの原因が考えられます。まず、原因を把握して、生活習慣の改善や治療をすることが大切になります。確かに、生理不順である場合には排卵のタイミングがつかみにくいなどの原因で、妊娠の確率が低くなる要因が多いといえるかもしれません。しかし生理不順であっても、排卵されて、子宮内膜の準備が整えられるなどしていれば、妊娠の確率があることになります。また、PMS(月経前症候群)がある場合なども、妊娠は難しいのかと疑問を持たれる場合もあるかと思いますが、PMSそのものが不妊の原因になることは指摘されていません。
妊娠に重要な「卵子の質」について
妊娠に結び付くステップは、排卵、射精、受精、着床といった多くのステップの上に成立します。妊娠を望んでいらっしゃるならば、まずは自分の生理周期を把握したり、整えることが大切になるかもしれません。なぜならば、排卵のタイミングを正確につかめば、より妊娠確率を上げることができるからです。さらに、お伝えしたいのは、「卵子の質」が重要ということです。より詳しくご説明させていただきます。
卵子について
女性は生まれるときに約200万個の卵母細胞を持っています。卵子は胎児のころに作られて、出生時には卵巣の中に原始卵胞が約200万個あります。初潮のころには卵子が30万個になり、それ以後排卵の有無にかかわらず、毎月約1,000個ずつ減っていきます。38歳では3万個、45歳で1万個になり、閉経のころには約200個になります。
女性は年を重ねると、皮膚や髪質などの老化を実感しますが、同様に卵子も「卵子の質」が低下します。妊娠するための能力を、専門用語で「妊孕性(にんようせい)」といいます。妊孕性は、女性であれば子宮や卵巣、卵子の能力などで、男性であれば精巣や精子の能力などのことをいいます。この妊孕性は年齢が上がるにつれ低下します。個人差がありますが、35歳位を境に妊孕性は下がっていきます。老化した卵子は排卵に至るまで成長するのが困難になるほか、卵子としての機能を失っていることが多くなるようです。
加齢とともに低下する「卵子の質」、高める方法は?
女性ホルモンのバランスを整える
女性ホルモンは、脳の視床下部からの命令で分泌されます。この視床下部には、自律神経の中枢もあります。心や体にストレスが掛かると、自律神経のバランスが崩れ、視床下部も影響を受けることになります。視床下部が影響を受ければ、ホルモンバランスの乱れにもつながることがあります。ですから、ストレスや過度の疲労などを避けることが、ホルモンバランスを整える為に大切になります。また、十分な睡眠、バランスの取れた食生活など、健康的な生活習慣も女性ホルモンのバランスを整えることに重要になります。そのほかにサプリメントや漢方などを使って女性ホルモンのバランスを整える一助になる場合もあります。
卵子凍結保存
卵子が若く、妊娠力の高いうちに凍結保存しておく技術があります。将来の不妊治療時に役立てる方法として、今大変注目を集めているのが「卵子凍結保存」です。卵子凍結の仕組みを簡単にお伝えしますと、不妊治療クリニックでさまざまな検査をして排卵誘発を行い排卵します。その後、卵子を超低温で凍結し液体窒素で保管します。
Grace Bankでは、国内最高峰の厳選された不妊治療クリニックを組織化し、どこのクリニックを選んでよいかわからない場合でも安心していただけるシステムをご準備しています。また、採卵した後も23年間、無事故でさい帯血の凍結保管システムを運用してきた「ステムセル研究所」と提携し、万全の環境で卵子を保管します。
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まとめ
生理の仕組みを改めてみると、さまざまな器官やホルモンが機能しているのだと、奥深さを再認識します。生理不順のお悩みは、「婦人科を受診する」「生活習慣を見直す」ことなどが解決に結びつきます。
妊娠を考えていらっしゃる方は、妊娠に重要な「卵子の質」についても意識していただけたかと思います。ご自分のライフプランや様々な事情がある場合、選択肢を増やすGrace Bankの「卵子凍結保存」についてもぜひご検討ください。
▼参考文献・HP
- 名医がやさしく教える不妊治療のすべて 辰巳 賢一著 河出書房新社
- 生理痛ぬけ。 杉山 卓也著 三才ブックス
- https://www.elevit.jp/ninkatsu/articles/mental-body/pms/
名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)
杉山産婦人科の医師・培養士による技術を用いた質の高い診療を提供。
将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
スタッフは全員女性。明瞭な料金設定も人気!