毎月の生理が重くて悩んでいる人へ。生理痛が重い原因を知りたい、自分でできる対処法を知りたい、産婦人科に行くべきなのか？基準を知りたい人へ。
今回は生理が重い原因と対処法、産婦人科に行く基準、産婦人科で行われる治療法を解説します。
目次
9割の女性が生理痛の経験あり
生理痛が起こる原因のひとつは、子宮内膜で作られるプロスタグランジンという生理活性物質によるものです。プロスタグランジンの作用のひとつとして、子宮を収縮させて子宮内の経血を体外に押し出す働きがありますが、これが強くなりすぎると痛みを伴います。
連合東京（日本労働組合総連合会東京都連合会）が、生理休暇等の取得状況の調査のため、働く女性1,319人におこなったアンケートによると、9割の女性に生理痛の経験があることがわかりました。
生理（月経）痛が「ある・あった」が57.0％、「時々ある・あった」が33.4％、「とくにない」が9.2％などとなっており、9割の女性に生理痛の経験があった。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ビジネス・レーバー・トレンド2022年8・9月号」生理痛がある女性のなかで「生理休暇」を取得した人の割合は約1割。半数が更年期障害の症状がつらくても「何もしない」
さらに同調査では、生理痛の経験が20〜30代の若い女性に多いことにも言及しています。若い世代では、子宮が未発達で経血が押し出される子宮の頸管部分が細長くかたいために、より強く痛むことがあります。
年齢別にみると、若い年代ほど「ある・あった」の割合が高くなっており、「20代以下」（69.6％）や「30代」（64.8％）では、同割合は6割以上に達している。
独立行政法人 労働政策研究・研修機構「ビジネス・レーバー・トレンド2022年8・9月号」生理痛がある女性のなかで「生理休暇」を取得した人の割合は約1割。半数が更年期障害の症状がつらくても「何もしない」
生理痛が重い原因は？
生理痛に悩む人の中には、鎮痛薬を飲んでも痛みが治まらない、生理痛が重すぎて学校や仕事に行けないなど日常生活に支障をきたすケースもあります。このような症状は月経困難症といいます。月経困難症には、特に原因となる病気がないものと病気が原因で起こるものがあります。
ホルモンバランスの乱れ
ホルモンバランスの乱れは、プロスタグランジンの過剰分泌、血行不良、子宮内膜が厚くなりすぎる等、重い生理痛に繋がるさまざまな症状を引き起こします。
疲労、ストレス、睡眠不足、過剰なダイエット、激しい運動などによって、ホルモンバランスは乱れやすくなります。特に体の発達が未成熟な10代女性や更年期の女性はホルモンバランスが乱れやすくなります。
子宮内膜症や子宮筋腫などの病気
子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気は、ひどい生理痛を引き起こすことがあります。このような病気が原因で起こる月経困難症を器質性月経困難症といい、病気の治療が必要となります。
生理痛が重いときに自分でできる対処法3選
からだを温める
生理痛の重い痛みを和らげる対処法としては、まず体を温めることが基本になります。生理中はプロスタグランジンの働きにより、全身の血管の収縮が強まり、血液の流れが悪くなりがちです。下腹部、腰、足首、足先など、下半身を中心に温めて血行をよくすることが大切です。血行が良くなることでプロスタグランジンが滞りにくくなり、痛みを和らげることができます。尾てい骨のあたりにカイロをあてたり、電気毛布を使ったりするのがおすすめです。ゆっくりお風呂に入ることも良いですが、生理中に湯ぶねにつかることに抵抗がある場合は足湯がおすすめです。
鎮痛薬を飲む
重い生理痛には鎮痛薬を飲むのが一番の対処法です。鎮痛薬を服用するのは体に良くないというのは間違いです。鎮痛薬を飲まずに痛みを我慢してしまうと、痛みはますますひどくなっていきます。鎮痛薬にはプロスタグランジンの産生を抑える働きがあるため、月経初日に飲むと生理期間中の痛みを和らげることができます。鎮痛薬は早く飲めばきちんと効果が出ます。
体を休める
生理痛が重い時には無理せず、横になって休むようにしましょう。下半身を締め付けない、ゆったりした服装で過ごしましょう。ランニングなど激しい運動は避け、ストレッチで血行改善しましょう。腰回し（腰骨の一番飛び出しているところにゴムバンドなどを巻き付け、両手を腰にあてた姿勢で円を描くようにゆっくり腰を回す）など骨盤を動かすストレッチをすると血液の流れがよくなります。足首の曲げ伸ばしも、下半身の血流をよくするのに効果的です。
生理痛が重いだけで病院に行くべき？婦人科受診の目安
生理痛を仕方のないものと認識し、生理痛があるのは当たり前だと思っている人も多いようですが、生理痛は本来ない状態が普通です。食生活の変化による生理開始年齢の早期化や、出産回数の減少によって、現代女性は生理の回数が増えています。毎月の生理のたびに、重い腹痛や腰痛などの生理痛に悩まされることは、女性のQOL（生活の質）を著しく低下させます。
重い生理痛の陰には、子宮内膜症や子宮筋腫といった恐ろしい病気が隠れている場合もあり、放置すると、症状がどんどん酷くなることがあります。気が付かないうちに女性疾患が進行している可能性もあります。日常生活に支障があるほどの生理痛に悩んでいる場合はもちろん、生理の重さが少しでも気になる場合は、早めに婦人科を受診しましょう。病気が見つかった場合には早めの治療が大切です。
婦人科で重い生理を治療する方法
重い生理痛の治療はオーダーメイドが基本です。目的や体質、ライフスタイルによって選択肢がたくさんあります。医師とよく相談して、自分の希望を伝えながら続けていける治療法を選ぶようにしましょう。
痛みへの対症療法は鎮痛薬の服用です。市販の薬よりも処方薬の方が良く効きます。また、漢方薬で体質そのものを改善し、女性ホルモンの不調を治していく方法もあります。早く治したいと思ったら低用量ピルがおすすめです。ホルモンバランスをコントロールできるので、生理痛の改善薬として効果があります。状態がかなり悪い時にはホルモン療法が選択されることもあります。子宮内膜症や子宮筋腫などの女性疾患がある場合には、治療方法のひとつとして手術をおこなうこともあります。
重い生理痛は放置すると不妊の原因になる
生理痛や生理不順は女性ホルモンの乱れにより生じ、放置していると子宮や卵巣にダメージが蓄積し、将来の不妊リスクを高める原因になります。生理のたびに、卵子の在庫数は減少し、加齢とともに卵子の質（妊娠できる能力＝妊孕力）は低下します。将来子供がほしいと考えている人は、若いうちに卵子凍結保存をして、妊孕力の高い卵子を保存しておくのもおすすめです。
卵子凍結保存とは
卵子凍結とは若く妊孕性の高いうちに卵子を凍結保存し、将来の不妊治療に備える方法です。排卵誘発剤を使って卵巣刺激を行い、いくつかの卵胞を育てて複数個の卵子を採取します。採卵した卵子は、マイナス196℃で凍結保存します。卵子凍結にかかるコストは1回の検査・採卵・凍結費用で30〜50万円、保管費用は年間3〜5万円です。国内最大級の卵子凍結保存バンクGrace Bankは、全国の有名不妊治療クリニックと多数連携しています。また、20年以上無事故の安心保管システム、利用しやすい費用体系が整っており、多くの方に選ばれています。
まとめ
重い生理痛で悩んでいる人は多いですが、本来、生理痛はないのが普通の状態です。重い生理痛には、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気が隠れている場合もあり、気が付かないうちに女性疾患が進行している可能性もあります。生理の重さが気になる場合は、早めに婦人科を受診し、病気が見つかった場合には早めに治療することが大切です。重い生理痛の治療は、目的、体質、ライフスタイルによって様々な選択肢があります。医師とよく相談して、自分に合った治療法を選ぶようにしましょう。
重い生理痛は将来の不妊につながる可能性もあります。卵子の数は生理のたびに減少し、加齢とともに質も低下していきます。若いうちに卵子を凍結保存し、将来の不妊治療に備える「卵子凍結保存」を考えてみることもおすすめします。
▼参考文献
- 最新版 女性の医学大全科 女性の健康週間委員会 監修 主婦の友社
- 月経痛と月経困難症 安達知子 著 主婦の友社
- 生理（月経）のトラブルがつらいときの本 対馬ルリ子 総監修 小学館
- 生理痛ぬけ。杉山卓也 著 三才ブックス
名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
グレイス杉山クリニックSHIBUYA （東京都渋谷区）
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将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
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