年齢が不妊に与える影響について気になさっている方も多いと思います。また不妊治療には、さまざまな年齢制限があるのはご存知ですか?現在妊活中の方も、将来ご妊娠をお考えの方へ、不妊に悩む前に知っておきたい情報をお伝えします。
目次
加齢とともに不妊率が上がり、自然妊娠率は下がる
年齢ごとに上がる不妊症の割合、年齢ごとに下がる自然妊娠率の割合、なぜ加齢とともに不妊率は上がり、自然妊娠率は下がるのでしょうか?
不妊の頻度は25歳~29歳では8.9%、30~34歳では14.6%、35~39歳では21.9%、40~44歳では28.9%というデータがあります(参考:一般社団法人 日本生殖医学会)。ここから、年齢が上がるごとに、特に35歳以上の値は高くなっているのが分かります。また、自然妊娠率の割合も30歳位までの妊娠率は大きく変わりませんが、35歳ぐらいから妊娠率の低下が激しくなるのが分かります(下データ)。
近年の医療の進歩により、加齢に伴い、卵子や精子も歳をとり、受精能力が衰えることが分かりました。「卵子の老化」や「精子の老化」という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。女性ならば「生理があれば妊娠できる」のではなく、「卵子は年齢とともに質や量が低下する」のです。残念ながら、加齢とともに髪や皮膚の老化が起きる事と同様に、卵子や精子の受精能力が衰えることが、妊娠確率を下げることになるのです。
1周期当たりの妊娠率(※1)
- 25歳:25%~30%
- 30歳:25%~30%
- 35歳:18%
- 40歳:5%
- 45歳:1%
1年間避妊しないで性交渉をした場合の年代別妊娠確率(※2)
- 20歳~24歳:86%
- 25歳~29歳:78%
- 30歳~34歳:63%
- 35歳~39歳:52%
- 40歳~44歳:36%
- 45歳~49歳:5%
- 50歳以上:0%
(※1、※2とも M.Sara Rosenthal.The Fertility Sourcebook.Third Edition よりデータ引用)
卵子の老化とは?
今みなさんの子宮にいる「卵子」。実は卵子には、長いストーリーがあり存在するにいたっているのをご存知ですか?
卵子の大元となる原子卵胞は、女性が胎児のうちにすでにできていて、その数は約200万個といわれています。この原子卵胞は、細胞分裂して数が増えることができない非常に特殊な細胞で、一度できたあとは、数が減るだけなのです。7歳になると、原子卵胞の数は約50万個、思春期のころには、原子卵胞は約10万~30万個、その後は一回の月経の周期に約1,000個ずつ減少していき、20代では10万個、30代では2~3万個、閉経時には1,000個まで減少するといわれています。このように、年齢とともに数が減少する卵子ですが、「質」という側面でも、加齢とともに良質な卵子の数も減っていきます。
精子の老化とは?
卵子同様に、精子も加齢とともに、質、量ともに低下します。数の減少としては、加齢とともに射精時の精子の数が減り、活動性が低くなります。また、質の低下としては、精子のDNA損傷などが起きます。DNA損傷は、30代半ば~40代ぐらいから始まると考えられており、25歳未満と35歳以上の男性では、1年以内に妊娠へ至る確率が2分の1になるという報告もあります(出典:公益社団法人 日本産婦人科医会)。
東京都が卵子凍結に係る費用の助成を開始
東京都の「卵子凍結に係る費用助成」とは、将来の妊娠に備える選択肢の一つとして、「卵子凍結・保存費用」及び「凍結卵子を使用し、卵子融解・授精・胚培養・胚凍結・胚移植・妊娠確認をする費用」を補助する助成制度です。卵子凍結に係る費用の助成額は合計で30万円(最大)、凍結卵子を使用した生殖補助医療の助成額は、凍結卵子を融解し受精を行った場合に1回につき上限25万円支払われます。
これまで東京都では、がんの治療のために女性が妊娠するための力(妊孕性:にんようせい)を温存する方法として、卵子凍結への支援をしていましたが、健康な女性の将来への備えとしての卵子凍結を支援するのは初めてです。
対象は東京都に住む18歳から39歳までの女性※です。(※採卵を実施した日における年齢)すでに不妊症の診断を受けており、不妊治療を目的とした採卵・卵子凍結を行う方は対象外となります。東京都若年がん患者等生殖機能温存治療費助成事業(小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業)の対象となる方も対象外となります。
東京都では凍結卵子を使用した生殖補助医療への助成も
東京都では、妻の年齢が43歳未満の夫婦で凍結卵子を使用した生殖補助医療を受ける方の卵子融解・授精・胚培養・胚凍結・胚移植・妊娠確認に助成金が支給されます。
助成金額は、凍結卵子を融解し、受精を行った場合に1回につき上限25万円、「以前に凍結卵子を融解し作成した凍結胚」を融解して胚移植した場合に1回につき上限10万円です。
対象要件など詳しくは、東京都福祉局のHPをご確認ください。
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/shussan/ranshitouketsu/shiyou/gaiyou.html
年齢による不妊で悩む前にできること
まずは、卵子や精子の量、質ともに良好な状態を保つために、日々の生活習慣をよいものにする必要があります。女性ならば、ストレスをため込まない、食生活を大切にして女性ホルモンのバランスを整えることが大切になります。男性も、女性同様、ストレスや過度な飲酒、長風呂などを避けることが大切です。また、男女ともに健康状態を確認し、万が一治療が必要な場合に早期回復につなげられるように、早めの検査を受けることも必要かもしれません。最後に、卵子が若く、妊孕性の高いうちに、凍結保存する「卵子凍結保存」もお勧めいたします。卵子が若ければ、母体が妊娠適齢期をすぎても、妊娠出産率が高いデータがあります。
卵子が若ければ、40代の体外受精による出産率は20代と大きく変わりません(米CDC、2021)。
卵子凍結保存とは?
卵子凍結保存の仕組みを簡単にご紹介いたします。まず、不妊治療クリニックでさまざまな検査を行ったのち、年齢や卵巣機能、体の負担や希望を考慮して、排卵誘発を行い採卵します。その後、耐凍剤濃度の高い溶液に卵子をひたし、マイナス196℃の超低温で凍結し、液体窒素タンクの中で保管します。ちなみに、卵子凍結までの期間は、状況により異なりますが、通院回数は約5~6回と言われています。費用は、一回の検査・排卵・凍結費用に30~50万、保管費用は、初期費用に加えて年間3~5万円かかります(状況、クリニックにより変動します)。
凍結卵子保管サービスのグレイスバンクでは、全国に組織化された、国内最高峰の厳選クリニックを組織化しております。また排卵した後の卵子は、さい帯血の凍結保管システムを25年以上無事故で運用してきたステムセル研究所と連携し、安心の保管システムを構築しています。
卵子凍結の年齢制限には、「採卵」の年齢制限と、「保管」の年齢制限の2種類があります。 卵子の質を良い状態で保存することと、高齢出産のリスクを考慮してこのような年齢制限を設けています。
「採卵」の年齢制限は40歳未満
卵子の元となる卵胞細胞は、年を重ねると細胞質が老化し、妊娠する力が急激に低下します。排卵が行われても染色体異常があったり、着床しても流産してしまったりという事が多くなってしまいます。残念ながら、卵子の質低下は、35歳頃から加速するといわれています。 40歳くらいまでが妊娠可能性があるとされる年齢なので、 採卵の年齢制限を40歳未満または40歳前後とするクリニックが多くなっています。 「Grace Bank」では、基本的には採卵をするご年齢を満40歳の誕生日までとさせていただいておりますが、それ以上のご年齢でご希望される場合でも専門医の判断により実施できることもありますので、お気軽にご相談ください。
「保管」の年齢制限は50歳未満
年齢のリスクを考慮して若い卵子を凍結保存し、体外受精の確率アップに備えても、妊娠・出産に耐えられる母体年齢には限りがあります。妊娠することが技術的に可能でも母体への負担を考慮してのことです。 そのため、母体や胎児のリスクを考慮して、卵子凍結の保存期限を45〜50歳までとするクリニックが多くなっています。 「Grace Bank」では、本人の意向により満50歳の誕生日まで凍結した卵子を保管することができます。ただし、実際に融解して使用する際には、母体の安全を考慮した上で専門医が実施の可否を判断しますので、50歳まで体外受精が行えることを保証するものではございません。あらかじめご了承ください。
まとめ
「卵子の老化」や「精子の老化」など妊娠を考えるうえで、年齢には抗えないこと大変悩ましいことです。今回ご紹介しました「卵子凍結保存」は、皆様のライフプランとキャリアプランの両立のためのひとつの選択肢になり得ます。グレイスバンクでは無料セミナーも実施しております。まずは無料セミナーの参加からでも「卵子凍結保存」についてご検討ください。
参考文献 「ママになる夢をかなえよう!妊活 治療と生活アドバイス」 主婦の友社
名倉 優子 なぐら ゆうこ
日本産科婦人科学会専門医
グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)
杉山産婦人科の医師・培養士による技術を用いた質の高い診療を提供。
将来の妊娠に備えたプレコンセプションケアと卵子凍結にフォーカスした診療。
スタッフは全員女性。明瞭な料金設定も人気!