卵子凍結を考える女性にとって、かかる「お金」は大きなハードルです。
アメリカの女性たちにとってもそれは同じ、簡単に手が届くようなものではありません。
アメリカでは都市によって一度の卵子凍結の金額は異なりますが、ニューヨークやサンフランシスコなどの大都市では1万4000〜1万8000ドル(約200万円)するのが普通です。
また個人によって処方される薬が異なるため、薬代の変動が大きく、最終的にかかるコストはクリニックに行ってびっくり、ということも珍しくありません。
そんな患者の悩みを解決すべく登場したのが、卵子凍結や体外受精などの不妊治療に特化したローンです。
毎月ジムに通うのと同じくらいの金額で、サブスクリプション感覚で卵子凍結ができる──。
そんなサービスを提供するのは、2016年にサンフランシスコで創業した「フューチャー・ファミリー」です。特徴は大きく3点あります。
・治療を始める前に必要経費が全てわかる
・卵子凍結のローンは、最低ひと月150ドル(約1万7000円)で5年払い
【不妊治療のローンは、ひと月300〜475ドル(約5万4000円)】
・クレジットカード会社よりも低い金利で融資を受けられる
ローンはひと月150ドルから
フューチャー・ファミリーは、提携する約140のクリニックを通し、事前に必要な経費を割り出しています。
治療を受ける前に、実際にどれくらいのコストになるのかわかれば、患者にとって卵子凍結、その先の計画を立てる上でとても役立つはずです。
卵子凍結であれば、ひと月150ドルから分割払いが可能になります。また、不妊治療のローンはひと月300〜475ドルの分割払いができます。どちらも5年の支払いコースです。
また、治療の過程で追加の治療が必要になる場合は、追加される費用を簡単に月額プランに組み込むこともできます。
利子はクレジットカード会社の3分の1
通常、アメリカでクレジットカード会社の融資を受けると18%の利子が付きます。
これだと返済する方は、いつまでたっても利子の返済しかできない「返済地獄」になってしまいます。
フューチャー・ファミリーでは利子を5.99%と低金利にしていて、患者が継続して返済できるように設定し、「誰にでも手の届く治療」ができるようになると掲げています。
また、妊活のためのローンとなると、将来の祖父母になる両親が肩代わりして、子どもが親になるのを助けてあげたいという場合も少なくありません。
そのため、ローンは身元がしっかり証明できれば、両親、パートナー、友人でも契約者になって支払いすることができます。
サービスを使い始めると、患者には卵子凍結、体外受精に関わる「妊活コーチ」(不妊治療の臨床トレーニングを受けた看護師)が付きます。クリニック選びから、治療まで、24時間サポートしてくれるのもポイントです。
フューチャー・ファミリーによると、この「妊活コーチ」のおかげで、ストレスが減ったと答える顧客は80%にのぼっています。
また、2度の卵子凍結や不妊治療が必要になる人は、90%がこのサービスのリピーターになっているという結果も出ています。
自らの体験から生まれた
不妊治療の体験者が生んだサービス、フューチャー・ファミリーはまさに、不妊治療をしていた女性の疑問から生まれました。
創業したのは、クレア・トムキンソンさん。実際に自分が、子どもを授かるまでに体外受精を6回し、10万ドル(約1300万円)以上の金額が必要になった経験が元になっています。
彼女は、治療だけでも体に負担がかかるのに、その上、高額な治療費が突きつけられて、支払いの複雑さに悩まされました。
「私と同じような悩みを抱える女性は少なくないはず」、そう考えて立ち上げた、スタートアップ。
このカンは的中し、同じ悩みを持つ女性からの需要を受けて、事業は拡大しています。現在、1億2300万ドル(164億円)の資金が集まっていて、今後はこの資金を使って、更にネットワークのクリニックの数を増やしていくと見られます。
アメリカでは2020年、新型コロナの拡大により、自宅から勤務する人が急増。そのため、不妊治療の時間が取りやすくなったり、将来に備えて卵子凍結の件数が増えているとの報道があります。
実際に、フューチャー・ファミリーの創業者のクレア・トムキンソンさんも、ネットワークのクリニックでは件数が増えていると話しています。
「2020年は、これまで以上に多くの女性が卵子の凍結に踏み切った年でもあります。私たちのパートナーのクリニックの中には、需要が2倍、3倍になったところもあります。」(クレア・トムキンソンさん)
アメリカでは、フューチャー・ファミリーのように妊活に特化したローンを組むスタートアップの他にも、独自でローンを提供するクリニックも出てきています。