卵子凍結関連NEWS(国内)

「卵巣年齢」を測る、日米のスタートアップに注目

卵巣年齢という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

卵巣も加齢します。そして、卵巣がある年齢に達すると、子どもを妊娠することができなくなります。

子どもを作るときに必要な卵子は、女性が胎児の時に作られます。驚きですが、女性は胎児の時に作った卵子をずっと体の中でキープし、新しく作ることはありません。

卵子になる元の細胞である「原始生殖細胞」は、胎児のピーク時で700万個あります。それが、生まれた時には200万個になり、月経を初めて迎える頃には、20万~30万個にまで減ってしまう。常に「減り続ける」のです。

最後にはゼロに近くなり、50歳あたりで月経が完全に停止する閉経を迎えます。

卵子は、私たちと同じように年を重ねていくのです。卵巣年齢は外見の若さとは関係がありません。個人差が大きく自覚症状もないので、見た目が若々しくても卵巣年齢が実年齢よりも高い、ということが起こりえるのです。

自分の卵巣年齢を知れば、今後のライフプランの設計に役立てられる。

そこで生まれたのが、自宅でできるAMH(アンチミューラリアンホルモン)検査キットです。今週はAMH検査キットを開発する、日米のスタートアップをレポートします。

AMH検査とは

AMHというのは、発育過程の卵胞から分泌されるホルモンのことです。卵巣の中に卵子がどれくらい残っているのかという、卵巣予備能を測る指標になっています。つまり、AMHを測ることで卵巣年齢がわかるのです。

この値が低くなると、卵巣予備能が低くなっている、つまり、妊活や不妊治療にあてられる期間が限られてきていることを示します。場合によって、閉経が近いという可能性もあります。

閉経は通常は50才前後になりますが、20代女性で0.1%、30代女性で1%の割合で早期の閉経が起きます。AMH検査は、この40歳未満で自然と閉経になる早発閉経の可能性を知る方法にもなり得るのです。

現在、もしくは将来に妊娠を望む場合、もし自分の値がわかっていれば、卵子凍結をした方がいいのか、体外受精を考えた方がいいのかという判断に役立ちます。

このテストは長らく、不妊治療のクリニックで使われてきました。それをシングルの女性であっても、自分の体を知るために手頃な価格で、しかも自宅で検査できるようにするというのがAMH検査キットの特徴です。

米国発のモダン・ファティリティ

AMH検査キットを発売するのが、2017年にサンフランシスコで創業したモダン・ファティリティです。

購入すると、自宅に検査キットが送られてきます。指先から2〜3滴ほどの血液を採取し、研究室に送付。オーダーから約10日で自分のAMHの値がわかります。

結果は、アプリで確認することができます。測る値はAMHだけでなく、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、といった妊娠に関係する、合計7種類のホルモン値を計測することができます。

これらのホルモン値から、どれだけの卵子が残っているのか、どれくらいの年齢で更年期に入るのか、また卵子凍結と体外受精の結果の目安がどれくらいになるのか、などのポイントを理解することができます。

また検査後には、無料で看護師のカウンセリングを受けることができます。この他、キットを購入したユーザー同士がつながるコミュニティに入り、気になったことを質問したりすることもできます。

モダン・ファティリティは、自宅で遺伝子検査ができる「23andMe(トゥウェンティスリーアンドミー)」のプロダクトマネジャーをしていたアフトン・べチェリーが共同創業しました。

起業には、べチェリー氏の体験が元になっています。彼女は、妊娠する予定はまだなかったのですが、クリニックで不妊の検査を受けました。

受け取った検査結果はわかりずらく、理解するのに医師と何度も会わなくてはいけなかったといいます。さらに、かかった費用は1500ドル(約17万円)。保険が適用されないので、全てを自費で支払ったのです。

「全ての女性が手頃に、かつ簡単に体の変化を知れるようになるべきです。私の場合は、検査によって家族を作るタイムラインがどうなるのか、また、卵子凍結について考えるきっかけになりました」(アフトン・べチェリー氏)

モダン・ファティリティのAMH検査キットは159ドル(約1万8000円)。

多くの女性の支持を集めて成長し、2021年5月には、テレヘルスを展開する「Ro(ロー)」が買収しました。買収額は2億2500万ドル(約254億円)だったと伝えられており、女性の健康関連の企業として、最大規模の買収となりました。

日本発の「F check」

日本でも、AMH検査キットを販売するスタートアップがあります。2015年に設立されたF Treatmentは、2019年に日本で初めて在宅卵巣年齢検査キット「F check」を発売しました。(※厚生労働省認可済みのデメカルキットを使用しています。)

自分で0.1ml以下の血液を採血した後に、血液を検査センターに送ると2週間程度で結果がわかる仕組みです。

また検査からは、排卵が阻害されて不妊原因にもなる「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」の疑いがあるかどうかもわかります。

検査の結果は、専用のウェブサイトから閲覧が可能です。ウェブサイトでは、不妊クリニックの検索や、妊活・不妊に関する情報を集めることができます。価格は2万1978円(税込み)です。

日本は少子化問題を抱え、かつ世界最大の不妊治療大国です。不妊に悩んでいるカップルは6組に1人といわれ、件数にして45万件以上、世界で最も多くの体外受精を行なっています。

しかし、2021年の年間の出生数は80万人を下回ると予想され、体外受精の結果は決して良いとは言えません。

理由の一つは、不妊治療を始める年齢にあります。体外受精を行う女性の平均年齢が日本は40歳、米国では34歳となっています。また米国では卵子の提供という選択肢もあります。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、体外受精をする41歳から42歳の女性の18%が、第三者からの卵子提供を受けています。

実際の年齢に卵巣年齢が比例しないことに加え、不妊治療の開始も遅い。「そろそろ子どもを持ちたい」と思った時に、妊娠の可能性が低くなっているということが起きているのです。

 

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