海外の事例紹介

卵子凍結支援を決めた!〜人事のホンネ〜(#2 box)

日本ではフリーマーケットアプリの「メルカリ」を運営する株式会社メルカリが、2021年5月から「卵子凍結支援制度」をスタートしました。

社員の採卵・凍結保存など卵子凍結に関わる費用を、200万円を上限に会社が補助するもので、大きな話題になっています。

しかし、米国では2014年、フェイスブックのチーフオペレーティングオフィサー(COO) 、シェリル・サンドバーグ氏が福利厚生の一部として卵子凍結のサポートを導入したのをきっかけに、企業による「卵子凍結、不妊治療の支援」が活発に広がっています。

企業が卵子凍結や不妊治療への支援を始めるのはなぜでしょうか、また企業にどんなメリットがあるのでしょうか。

日本にも支社がある、企業向けクラウドサービスを展開するボックス(box)にそのホンネを聞きました。(#1 スラックのホンネはこちら)

企業のホンネ

ボックスは2018年、雇用期間内に1万ドル(約110万円)まで手当てする妊活・不妊治療の福利厚生を導入しました。卵子や精子の凍結だけでなく、不妊治療の計画・相談、体外受精、養子縁組サービス、代理出産サポートに関わる費用も含みます。

インタビューに答えてくれたのは、ボックスの人事担当、この道15年のベテラン、メアリーベス・クレイマー(MaryBeth Kramer)さんです。

──ズバリ、導入に至ったホンネは何でしょう。
ボックスはIT企業が集積するシリコンバレーを拠点とするハイテク企業です。動きの速いグローバル企業であり、競争も激しい。そのため、優秀な人材をひきつけられるかが勝負です。その中で、「家族計画への支援」はとても大切なものになっています。

私たちの目標は、社員の誰もがどのライフステージであれ、最高の人生を送ることができるようにすることです。

導入を決める前は、人材リクルーターから、「御社に妊活・不妊治療の福利厚生がありますか」と聞かれ、その都度「そういった手当はありません」と言ってきました。社員にとって、この福利厚生が、企業を選ぶ際の一つのポイントになっていることを感じていたのです。

この福利厚生はとても自由度が高く、典型的な男女の夫婦だけでなく、同性のカップル、シングルの男女でも必要な時に使えます。卵子凍結、代理母、養子縁組ももちろん含みます。

何人が福利厚生を使うのか

──実際にどれくらいの社員が制度を利用しているのでしょう。

2020年は、2513人の社員のうち197人が利用しました。その中で56%が女性、男性が36%(匿名が8%)になっています。利用した内容は、治療に入る前の相談、卵子凍結、不妊治療、養子縁組など多岐に渡りますが、20人が卵子凍結をしました。

──約8人に1人が利用した計算ですね。
そうですね。実際に2年ほど福利厚生を運用して、年間200人、これまで合計400人ほどが何らかの形で制度を利用しています。1万ドルは、卵子凍結や不妊治療にかかる金額から見ると、それほど大きな支援ではありません。

正直、1万ドルを使い切ってしまう人がたくさんいるのではと想像していました。ところが蓋を開けてみると、1万ドルの上限に達した人はわずか8人だったのです。

私たちの社員の平均年齢は30歳、ミレニアル世代の人たちです。この数字は彼らがまだ若い年齢で、卵子凍結や不妊治療を何度も行う人が少ないからかもしれません。

一つ付け加えると、この福利厚生は世界中にいる社員が等しく使えるようにしています。例えば、日本、イギリス、ポーランドにいる社員も、現地で1万ドル相当額の医療を受けることができるのです。

社員の叫び

ボックスにレイチェルという社員がいます。彼女は最初の子どもを授かるまでに、1年半の妊活の末、採卵、体外受精をしました。最初の妊娠は6週間で流産してしまいました。

彼女は、その後に娘を妊娠しましたが、8万ドル(約880万円)の貯金を使い果たしてしまったのです。これは、私たちが「家族計画の支援」を始める前の話です。

彼女は、保険会社を通して治療費の支払いをしていました。治療の過程で、使っていた薬が突然、保険適用にならなくなったものもありました。彼女は全ての領収書のコピーを取って、なぜ利用した薬が保険適用されくなったのか、医者への問い合わせに膨大な時間を費やしたそうです。

実際の治療に加え、このような作業は精神的にも、肉体的にもこたえます。まさに、フルタイムの仕事のようだったと彼女は振り返っています。

そこで、私たちは福利厚生を始めるにあたり、「キャロット・ファティリティ」という企業を利用しました。

キャロット・ファティリティ:家族計画にまつわる、卵子凍結、体外受精、代理母のドナー探し、養子縁組までサービスを提供。妊活に関する相談から、クリニック、医師の紹介も行う。利用企業は、サービス料金を支払う

レイチェルは、二人目の子どもを持とうとした時に、ボックスが導入した制度を使いました。今回は福利厚生で、必要になった投薬、体外受精の費用を全てカバーできたのです。

彼女は、費用の払い戻しがとても簡単に済んだことに驚いていました。問題があればキャロットが解決してくれます。自分で医者に掛け合ったり、保険会社に連絡するようなことは一切必要なくなり、仕事に集中することができるようになったのです。彼女はその後、二人目を授かりました。福利厚生がなかったらどうなったかわからないと、話してくれました。

企業のお財布にもプラス

──キャロットを利用し、他にどんなメリットがありますか。

国によって保険の制度は違いますが、アメリカは社員の医療保険を企業が支払うシステムです。そして医療費がとても高いのです。

出産に絡み、もし3人の社員が集中治療室に入ったりするような事態になろうものなら、企業に1億円超えの請求が一気にやってきます。これは、社員にも苦しいし、会社にとってもとても苦しいものです。

例えば、社員が自分で妊活のクリニックや治療を選んだ結果、思わぬリスクを抱える出産になることも少なくありません。

ですから、キャロットのような専門のサービスを利用することでそのようなリスクを避けようと考えたのです。社員は体の不調などを感じたら、すぐにキャロットに相談できるため、事態が大きくなる前に手立てを打つことができます。

ボックスはキャロットを利用しても、2020年に4700万円の医療費を削減できました。まさに、社員と会社に取ってウィンウィンの関係になっています。

 

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