日本でも少子化は大きな課題になっていますが、それより深刻な事情を抱えているのがお隣の韓国です。
韓国の統計長が2月22日に発表した、2022年の合計特殊出生率(1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標)は「0.78」になりました。
これは、7年連続で最低レベルを更新し続けていることになります。
翻って、日本の合計特殊出生率は2021年に「1.3」となっています。人口を維持するためには2.06〜2.07が必要とされるので、日本も韓国も厳しい状況であることに変わりはありません。
ただ、その深刻度は韓国の方が上回るという状況なのです。
結婚に対する期待の変化
韓国統計庁の人口住宅総調査(2020年)によると、結婚をしていない30代の男性は50.8%に達しました。日本の男性の40.9%と比較しても、大きな割合になります。
家父長制が色濃くある韓国では、結婚した男性が担う役割も大きく期待されています。
高額な家賃の支払いや家の購入、教育の資金などを考えると、30代の男性がなかなか結婚に対して踏み切れないという現状もあります。
また、韓国では若い世代が台頭するに当たって、伝統的な「結婚」の価値観が大きく変化してきています。
韓国人口福祉協会の調査(2019年)によると、20代女性の57%が「結婚する意思がない」と回答しているのです。その一方で、男の回答は37%でした。
この「結婚する意思がない」というのは、「非婚」と言われ、結婚という選択肢をあえて取らないことを意味します。つまり「未婚」とは違う意味で、新しい価値観です。
なぜ「非婚」という選択肢を取るのか、その理由は様々です。ただ、その中でも「結婚に対する費用が増加している」、「子どもの出産・育児への心理的な負担」という理由が大きな割合を占めています。
韓国女性政策研究院の調査(2019年)では「子どもがいると就業やキャリアに制約を受ける」と答えた女性が77.2%に上っています。既婚女性の5人に1人が結婚、出産、育児のために離職したという別のデータもあります。
社会進出したいと願う女性たちにとっても、結婚・出産は大きなハードルになっているのです。
変わる企業の福利厚生
この「非婚」を選ぶ人たちに対し、福利厚生を充実させる企業も出てきています。
日経新聞によると、韓国通信大手のLGユープラスは今年1月、「非婚」を宣言すれば、手当と休暇を支給する制度を導入しました。
結婚祝いで支給される基本給一ヵ月分の手当に加え、5日の休暇が得られるとのことです。対象になるのは、満43歳以上で、勤続10年以上の社員が対象になるとのことです。
また、ロッテ百貨店では未婚の社員に手当てや休暇だけではなく、結婚式に送る花輪の代わりに観葉植物を贈るという特典もつけています。
生き方が多様化し、必ずしも結婚、出産が全てではないという価値観も出てきています。優秀な社員を取り込み、長く働いてもらうために、福利厚生を変えて対処するという企業が出てきているのです。