不妊治療をされている方、もしくはこれから考えている方にはドキリとするタイトルですが、今回は「不妊治療を諦める年齢」についてお話させていただきます。
お金も時間もかかり、長期間になるにつれて身体的・精神的負担も増す不妊治療。いつまで妊娠への希望を持ちながら不妊治療を続けるべきなのか?迷ってしまいますよね。
生物的な問題として、残酷ではありますが、妊娠・出産するには身体のタイムリミットがあることも事実です。
そこで、不妊治療をいつまで続けるべきか悩んでいる方へ
- 不妊治療を諦める年齢の目安
- 妊娠が可能な年齢
- 不妊治療を諦める前にできること
これらについてお話させていただきます。
目次
不妊治療を諦める年齢の目安は40~45歳
年齢とともに妊娠確率は低くなり、40代では1回の自然妊娠は1~5%、1回の胚移植では15%以下というデータがあります。
しかも、「不妊治療で40代で出産」といっても、その多くは、41~42歳に集中しているという報告も。
また、妊娠確率の低さだけでなく、母体への負荷・胎児へのリスクなども考慮すると、45歳を過ぎると妊娠を諦めることも視野に入れる必要があります。
不妊治療のため凍結した卵子を融解した後、状態のよい受精卵が確保できた場合の妊娠率は以下の通り(日本産科婦人科学会データより)です。
- 30歳以下・・・45%程度
- 31~34歳・・・35%程度
- 35~37歳・・・30%程度
- 38~39歳・・・20%程度
- 40歳以上 ・・・15%以下
※自社HP FAQより内容抜粋(https://faq.gracebank.jp/s/article/number-of-egg-freezing)
妊娠が可能な年齢はいつまで?
一般的にいう「妊娠適齢期」は、20~34歳頃であるといわれています。
40代での自然妊娠の確率が1~5%、不妊治療で15%程度であることを考えてみても、妊娠可能な年齢は40歳前後がひとつの目安といえるのではないでしょうか。
近年の日本の出産年齢は昔と比べて高くなっていることはすでにご存じでしょう。実際、2020年の平均出産年齢は30.7歳となっています。(参考:50年前の1975年は25.7歳)
医学上、35歳以上の初産を「高齢出産」と呼びますが、初産年齢が年々あがっている現在は35歳以上での妊娠・出産は決して珍しくありません。
しかし、体の仕組みとしては、35歳をすぎると妊娠確率の低下はもちろん、流産・死産・早産・胎児の染色体異常・妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病・緊急帝王切開などのリスクが急激に上がっていくことも事実なのです。
それでは、年齢とともに妊娠確率が下がる原因についてみていきましょう。
年齢とともに妊娠確率が下がる3つの理由
加齢とともに妊娠確率が下がる主な原因には、以下の3つがあります。
女性ホルモンの減少
年齢によって女性ホルモンの分泌量は変化します。20代をピークに、35歳頃から45~50歳前後の閉経に向けて一気に減少します。そのため、女性ホルモンの分泌量が多い20~30代前半が、もっとも妊娠に適していると言われています。
母体の既往症リスクの増加
年齢を重ねるにつれ、若いころにはなかった体の不調が増えがちです。高血圧・糖尿病・肥満・子宮筋腫などの女性器疾患というような既往症リスクが、加齢とともに増えていきます。
既往症があると、不妊につながったり、妊娠の継続が難しくなったりする可能性が高くなります。
卵子の老化(数の減少、質の低下)
女性の持つ、卵子の元となる卵胞細胞は他の細胞のように細胞分裂で数を増やすことができません。そのため、生まれた時にある細胞を使い切ってしまったら、もう卵子をつくることが出来なくなってしまいます。
生まれる前に約700万個あった卵胞細胞は、出生時には約200万個、初潮の始まる思春期には約20万個へと減少します。その後は、1か月ごとに約500個ずつ減少していくと言われています。加齢にともなって卵子の数が減少していくというわけです。
また、卵胞細胞が年を重ねると、細胞質が老化し、妊娠する力が低下します。排卵が行われても染色体異常があったり、着床しても流産してしまったりということが多くなってしまいます。
年齢によって不妊治療を諦める前にできること
ここまでの話を聞くと、年齢を重ねると妊娠に対する焦りや不安な気持ちが出てきてしまうのは自然なことです。
あっさりと妊娠をあきらめた方がよいのでしょうか?
そんな治療をしてまで…と思う方もいらっしゃると思いますので、そういった選択肢もひとつです。そうではないと思われる方にとっての選択肢として、現代は医療技術が進歩しています。若く妊孕性(にんようせい:妊娠する力のこと)が高いうちに、卵子を凍結保存することができます。
その卵子を不妊治療で使うことで、妊娠・出産確率があがる可能性があるのです。
Grace Bankでは、本人の意向により満50歳の誕生日まで凍結卵子を保管できます。不妊治療の際に、自分の若い凍結卵子を使用することができるのです。
卵子凍結保管をおこなっているGrace Bankでは、基本的には採卵をする年齢を満40歳の誕生日までとしています。
※実際に融解して使用する際には、母体の安全を考慮した上で専門医が実施の可否を判断するため、50歳まで体外受精が行えることを保証するものではありません。
まとめ
子どもを授かりたいという切なる気持ちを、諦めるという決断はとても難しいことですが、不妊治療を諦めた先に新しい人生の希望が待っていることもあります。
ただ、将来への不安を漠然と持つだけでなく、できることがあるならやっておきたいという思いもあるでしょう。不妊治療をあきらめることになる可能性をできるだけ低くするために、様々な可能性を考えておくことも大切かもしれません。
将来の妊娠に備えて、少しでも若いうちに卵子凍結保存をしておくのも、生殖医療が発達した現代のライフスタイル選択肢のひとつです。
ぜひ満足のいく選択をなさっていってください。
▼この記事の監修は…
医師紹介:岡田 有香(おかだ ゆか) 産婦人科学会専門医、グレイス杉山クリニックSHIBUYA院長 順天堂大学医学部卒/聖路加国際病院8年勤務 現在まで産科、婦人科全ての領域に携わる。不妊治療を行う中で、不妊予防に興味を持ち、自身のInstagram(@dr.yuka_okada)でも生理痛や不妊、妊活の知識を発信している。
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