Grace Care

渋谷文化村通りレディスクリニック 髙橋怜奈院長|「正しい知識を広めたい」と産婦人科医になった志に向き合い続けて

渋谷文化村通りレディスクリニックの髙橋院長は、患者さんが不安や不快な思いをせずに受診できるように、細やかな心配りを大切にし、少しの生理痛や婦人科以外の病気でも気軽に相談できるかかりつけ医をめざしています。

SNSでの発信や月経カップのプロジェクトなどのヘルス・リテラシーに関する啓蒙活動にも意欲的で、自身も出産後に仕事と育児とをバランスよく切り替えて活動しています。また、プロライセンスまで取得したボクシング、ベリーダンスなど多方面でパワフルに取り組まれています。

子宮頸がんの正しい知識を啓蒙したいという思い

もともと精神科医希望で医師になったのですが、初期臨床研修で産婦人科を回ったときに、自分と同世代の20代の女性が子宮頸がんの末期の状態というのを耳にして、他人事ではないと感じ、正しい知識を持って啓蒙したいという思いが芽生えました。

子宮頸がんの検診を受けたり、現在であればHPVワクチンを打って予防したりすれば、その方も末期の状態まで進行することはなかったのではと考えます。

日本では、HPVワクチンが2013年4月から定期接種になったのですが、副反応がメディアで取り上げられてから、積極的勧奨が中止になり、本来HPVワクチンを接種していれば子宮頸癌にならずにすんだ方たちが罹患し亡くなっている現状です。。今(※取材当時)、受けられなかった世代へのキャッチアップ接種として、26歳以下の方は無料で受けられるようになっていますが、そのことを患者さんにお話しても、「副反応が強いんですよね」「怖いワクチンなんですよね」とずいぶん前のメディアの情報のことを気にされて、接種に積極的な人はまだ多くないと感じます。

妊娠出産を希望しているのに、その前の段階で子宮を摘出しなければならない人があまりにも多いということにも衝撃を受けました。20代、30代の方で多いのが、妊娠して受ける妊娠初期検査が初めての産婦人科受診というケースです。

子宮頸がんは性交経験が一度でもある人に起こる可能性のある病気で、20代でもみられます。現代では、初産の年齢の平均が30歳ぐらいなので、30歳ではじめて妊婦健診を受診した際に、進行した子宮頸がんが見つかって、妊娠したまま子宮を摘出しなければならない、赤ちゃんが助からず、今後も妊娠は望めないという方も少なくありません。

子宮頸がんの検査をしたことがない人に「検査をしますか?」とお聞きしても、「まだいいです」と断られる方も多いです。「子宮頸がん」で検索すると、症状として、不正出血や性交渉の際の出血などと書いてあるので、そういった症状はないから大丈夫と思う人もいらっしゃるのですが、基本的には症状がないうちから検診を受けていただき、26歳以下で今までHPVワクチンを接種していない方は必ず無料のHPVワクチンのキャッチアップ接種(※)を受けてもらいたいと思います。

※HPVワクチンのキャッチアップ接種(誕生日が1997年4月2日~2007年4月1日の女性)については、厚生労働省のHP等をご確認ください。

※厚生労働省「ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou/hpv_catch-up-vaccination.html

産婦人科を受診したことがない方に情報を届けたい

産婦人科を受診するようなヘルス・リテラシーが高い方たちは氷山の一角で、産婦人科に行った方が良いのかなと思いつつも、どうしたら良いのかわからないので行かないという方も多いと思っています。私がSNSで発信しているのも、まだ受診していない方に情報を届けるためです。

TikTokで情報発信していると、小中学生からも「生理痛があるけれども親に言えない」「親からは産婦人科は大人がいくところだから、まだ受診しなくていいと言われた」「性交経験がないのに内診しますか」など、10代前半の子たちからの質問もよく受けます。その場で診断などの医療行為としてはお答えできませんが、受診してくださいとは言えるので、まだ受診したことがない方に、「お腹の上からの超音波検査やお話だけすることもできますよ」と、産婦人科受診についての誤解を解くことや、受診の大切さを伝えることを大事にしています。

「動画を見て受診する決心がつきました」「検診を受けて早期発見できました」という声を聞くと、活動していて良かったなと感じますし、幅広い人に検診の大切さを伝えるという産婦人科医になったときに目標としていたことが実践できていると感じます。

知識不足のために命を亡くすというのはあってはならないことです。受診をしたことがある人にもない人にも知ってもらいたい検診やワクチンの話をSNSで発信し、産婦人科の敷居が低くなればと考えています。

また、私が取り組んでいる「やわらかっぷ」という月経カップのプロジェクトも、産婦人科の受診につなげることを目的としています。「やわらかっぷ」は自分の経血量を量れる月経カップです。生理用ナプキンでも前後の重さを量れば経血量がわかりますが、「やわらかっぷ」だと経血が何ミリ入っているかがすぐにわかるので、自分の身体について知ることのできるアイテムのひとつでもあります。

また「やわらかっぷ」には、産婦人科を受診する目安や、月経の基礎知識が学べる「月経ガイドブック」が付いているので、産婦人科を受診したことがない方も、過多月経や過少月経、過長月経などの月経不順の知識を得られ、異常があれば受診へとつなぐきっかけになっています。妊娠を希望していない方であれば、ピルを飲んだり、ホルモン治療を行ったりすることで経血量は少なくなります。
通常、生理ナプキンやタンポンには「これだけ量がおおければ産婦人科を受診しましょう」ということは書いてありません。経血量が多い人は、「多い日用」などの生理用品を使って、それでおしまいの人が多いです。
経血量がわかる月経カップを使って、このくらいの量があれば産婦人科を受診した方がよい、ということが分かれば、消費して終わりの生理用品から、自分の健康管理ができる生理用品になるだろうと考えました。
検診やワクチンについても記載があるので、ぜひ沢山の人に手に取ってもらいたいです。
産婦人科受診をしない人でも生理用品は手にとるので、そこから産婦人科受診をする人が増える事を願っています。

※やわらかっぷ紹介webページ(外部サイト):やわらかっぷ – UDM-urban dispensary market- (udm-tokyo.com)

気軽に相談できるかかりつけ医に

当院は渋谷のセンター街の中に位置しているため、初めて産婦人科を受診する10代や20代前半の方が多く訪れます。初めての受診では、内診台に上がる際の恰好やどこまで脱ぐべきかわからないことが多いため、「ゆっくりでいいですよ」と声をかけながら対応しています。

また、感染対策のために内診台のカーテンを短くしており、診察時には「器具を入れますよ」と声をかけたり、希望があれば器具を見せたりしながら患者さんとコミュニケーションを取っています。何が行われているのか分からないという不安を抱く方もいらっしゃると思うので、診察の内容や判断基準を患者さんにわかりやすく説明しながら進めています。

おりものの多さや臭いがきになって受診する方の中には、性病検査だけを希望する方も多いです。しかし、産婦人科への受診は勇気がいるものですので、来てくださったからには受診内容以外の情報も提供して、何か新たな知識を持って帰っていただきたいと考えています。

診療の際には、膣内にエコーを挿入している状態は不快なため、内診時間を短くするように心がけています。エコーを抜いてからもできる計測は内診台から降りてから行うようにし、患者さんが現在何をされているのかを把握できるように「器械が入ります」「おりもの検査をしています」「子宮の出口を確認しています」など、具体的に状況を伝えながら患者さんに安心感を与えるようにしています。

また、私自身が産婦人科受診で器具のガチャンという音に驚いてしまった経験がありますので、患者さんが恐怖心を抱かないように、器具の音が鳴らないように心がけており、スタッフにも常にこの配慮を共有して、細かい気遣いを大切にしています。

GYNメディカルグループの医院理念として、私たちは皆さんのかかりつけ医となり、気軽に何でも相談できる存在でありたいと考えています。例えば、生理の不調があった場合、まずはインターネットで情報を検索することから始まると思いますが、不安を感じて受診をためらうこともあるかもしれません。

産婦人科以外の膀胱炎やアレルギーの湿疹などの初期診療にも対応していますので、どこを受診すべきかわからない場合でも、どんなことでも相談してください。まずは患者さんの話をじっくり聞いた上で、必要に応じて短期間の処方や専門医への紹介を行います。

渋谷文化村通りレディスクリニック 受付

もっと自分の身体に目を向けてほしい

お腹が痛くなること以外にも、精神に不調をきたす月経困難の症状による経済損失は、労働損失と通院費や医薬品の費用も加えると、年間6800億円ぐらいだといわれています。仕事を休まなければいけないということは女性のQOLも下げてしまいます。生理休暇もありますが、本来は生理休暇がなくなることが必要であり、仕事が辛いぐらいの生理の症状がある場合は、産婦人科を受診して、必要であれば治療することが大事です。

日本の女性はまだまだ産婦人科の受診率も低いですし、生理を当たり前だと思っている方が多いと感じます。もっと自分の身体に敏感になって、お腹も痛いし、異常だよね、治療したほうがいいよねと、適切な治療を受けてQOLを高める方向に進んでいけばと思っています。

症状があれば、子宮頸がんの検査も1000円程度、エコーも1500円程度で行えるのですが、何万円もかかると思っていたという声もよく聞きますし、多くの人にとって産婦人科は敷居が高く、自分の意思で行く人が少ない診療科です。

企業の健康診断で婦人科検診まで含まれているケースは少なく、働いている企業から健康診断として婦人科検診に行ってくださいと言われる仕組みがあると、日本の女性の健康にも良い影響がありますし、結果的に企業の労働損失も少なくなるので、社会的にもよい循環が生まれると期待しています。

子宮頸がん検診とHPVワクチン接種を

20歳以上で性交渉のある方は、子宮頸がんの検診と超音波検査(エコー)は必ず行ってもらいたいです。超音波検査によって、子宮筋腫や卵巣腫瘍がわかり、手術や薬物治療が必要ないかを確認できます。子宮内膜症の腹膜病変は超音波検査だけだとわからないので月経困難症があれば超音波検査の所見に関わらず、すぐに妊娠を希望しない場合にはホルモン治療を検討します。

HPVワクチンを受けて子宮頸がんを予防し、検診で子宮頸がんの早期発見・早期治療、生理があり妊娠を希望していない間はピルを飲んだり、ホルモン治療をしたりして、排卵を止めることで卵巣がんや子宮内膜症の予防になります。

性交渉経験のない方の場合は、経膣エコーではなく、お腹の上から行うエコーや肛門から行う経直腸エコーなど行って内診は基本的には行いませんので、少しでも生理痛がある方は受診をしてもらいたいと思います。

月経困難症は救急車で運ばれるくらいの症状がなければ診断されないのではと思っている人もいますが、その人の主観で診断するので、憂鬱になる、毎回ナプキンでかぶれるなども月経時の不調と捉えられて月経困難症と診断されることもあります。産婦人科か内科か迷う場合にも、まずは行きやすいところで構わないので、ぜひ受診をするようにしてほしいですね。

※この記事は2023年6月のインタビューを元にしています。最新の情報はクリニックHPをご覧ください。

※渋谷文化村通りレディスクリニック公式HPはこちら:https://www.shibuya-bunkamuradori-ladies.jp/

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