卵子凍結について

バセドウ病でも妊娠できる!リスクとうまく付き合うポイントをチェック

バセドウ病は男女比1:3〜5といわれ、女性に多い病気です。

長く付き合わなければならないバセドウ病を患うことで妊娠や出産に対して心配な方もいるでしょう。

しかしバセドウ病でも妊娠や出産をすぐに諦めることはしないでください。

もちろん病気のためにリスクも生じますが妊娠出産が不可能ではありません。

今回はバセドウ病の特徴や治療法を確認しながら、バセドウ病と付き合いながら出産に臨む方法について解説します。

バセドウ病の特徴

バセドウ病とは自己免疫疾患のひとつです。

喉の下の方にハート形のような甲状腺という臓器があります。

バセドウ病は、自己抗体が作られることにより、甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンが過剰に産生されてしまう病気です。

甲状腺ホルモンは血液に乗って運ばれ、通常であれば体の成長を促したり、心臓、脳、肝臓、腎臓などと全身の臓器にまわり新陳代謝を活発にする働きがあります。

自己抗体が作られるきっかけについて明らかな原因は不明ですが、もともとの体質に加え、何らかのウイルス感染や強いストレス、妊娠出産によると考えられています。

バセドウ病の症状

新陳代謝を活発にする甲状腺ホルモンが過剰に出るということは、つまり脈拍数が増えて動悸が起きたり体温が上がって汗が多くなったり、よく食べるようになるのに痩せていったりするような症状が現れます。

その他、甲状腺(喉の下の方)の肥大や眼球突出、疲れやすいだるいといった特徴的で比較的気付きやすい症状が出ます。

バセドウ病の治療法

バセドウ病は甲状腺ホルモンの量を調整することで、代謝が活発になりすぎている甲状腺機能亢進状態を防ぐ必要があります。

甲状腺機能を正常化させるためには次のような治療法があります。

薬物治療

甲状腺ホルモンを作り出す作用を抑えて血液中の量を正常に保つことのできる薬として一般的なものにメルカゾールとチウラジールがあります。

多くの医療機関の外来で処方することができるのでまず選択されるのがこの方法です。

適切な量を服用すれば数ヶ月で効果が現れ、自覚症状も良くなります。

しかし、白血球の減少や肝機能の障害、発疹などの副作用が出やすいためこまめな受診が必要であることと、妊娠中は使用できない可能性があることに注意が必要です。

妊娠を考えている場合は医師にきちんと相談をしてください。

放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ治療)

薬物療法では効果がなく手術を希望しない場合や、薬による副作用が続いた場合には治療の変更が必要です。

アイソトープ治療とは、放射線のついたヨウ素を服用して、甲状腺の細胞を破壊し、その数を減らすことでホルモン産生量を低下させるものです。

限られた医療機関で行われているので手軽な方法ではありませんが薬よりも早く治る可能性のある治療法です。

しかし、妊娠の可能性がある場合、妊娠中、授乳中は行えませんので注意が必要です。

手術療法

甲状腺を切除し、甲状腺ホルモン過剰の状態を改善させる方法です。

バセドウ病が妊娠のリスクとなる理由5つ

月経不順や無月経が起こりやすい

バセドウ病は重症になった場合、月経周期が短い、量が少ないなどの月経不順の他、月経が止まってしまうこともあり、妊娠出産にもリスクになるといえます。

流産や早産確率が高い

バセドウ病を合併している妊婦は、そうでない妊婦よりも、流産や早産の確率が高くなるといわれています。

バセドウ病による薬が赤ちゃんに影響する

妊娠に気づいて服用を中止すれば異常は見られないこともわかっていますが、たとえば治療薬のメルカゾールでは、妊娠初期(15週位まで)の服用でさい腸管遺残やさい帯ヘルニア、頭皮の欠損などが増える可能性があるといわれています。

自己抗体が赤ちゃんに移行する可能性がある

妊娠中は、バセドウ病の原因となる自己抗体(TRAb)が、胎盤を通じて赤ちゃんに移行する可能性があり、母親のTRAbが高いと、新生児バセドウ病発症のリスクが高くなります。

出産後にバセドウ病の症状が悪化することもある

そもそもバセドウ病は妊娠出産をきっかけに発症することも少なくありません。

すでにバセドウ病である人にとっては出産が負担になり、出産後に甲状腺機能亢進症が発症したり、悪化する可能性があります。

また服用している薬が母乳を通じて赤ちゃんに移行する可能性もあるため、医師により授乳の制限が生じる場合もあります。

ただし、妊娠しても甲状腺機能が良好にコントロールできていれば出産は可能であるため、医師の指示通りに通院する事が重要です。

バセドウ病でも妊娠出産するために大事なポイント3つ

(妊娠前)バセドウ病に気が付くこと

もちろん甲状腺機能を改善させた状態で妊娠出産することが理想なので、妊娠前に気づくことが大切です。

バセドウ病の症状はひどく疲れやすい、動悸、異常な発汗などわかりやすいものが多いですが、なかには妊娠してからバセドウ病に気がつく人もいます。

妊娠出産の間は行えない治療法もあるため、事前に症状に気がついておくことが大事になります。

(妊娠前〜妊娠中)適切な治療を受けること

妊娠中は、体に負担となるので甲状腺機能のコントロールが不可欠です。

医師と相談して妊娠週数に応じた適切な治療を受けるようにしなければなりません。

妊娠中は生理的に甲状腺機能が高まる傾向があるため、妊娠前から服薬していたら量の調整も必要となります。

(妊娠中〜出産後)医師に相談すること

産後に甲状腺機能亢進症が発症したり、悪化する場合もあります。

治療内容によっては授乳制限が必要なケースもあるので、よく医師に相談することが大切です。

バセドウ病の人が、妊娠のために準備しておくべきこと

病気による不妊のリスクと、バセドウ病による不妊リスクと妊娠タイムリミットを知るための「AMH検査」が有効です。

さらに、体外受精が必要な場合に備える「卵子凍結保存」という選択肢もあります。

AMH検査

AMH検査とは、卵巣の中に今現在卵子がどれくらい残っているかを調べられる検査です。

AMHが高値で、卵子の数が多く残っていることは不妊治療などで有利になる場合があります。月経不順が続く場合には、より高度な不妊治療である体外受精などが必要になることもあるでしょう。

また、甲状腺機能亢進症を落ち着かせてから妊娠しようとなると妊娠する体の年齢や卵子の質のタイムリミットを考えた方が良いでしょう。

卵子凍結保存

バセドウ病のコントロールには時間がかかる場合があり、妊活の許可が起きるまでに卵子の数・質が低下するリスクがあります。

しかし、妊活の許可は下りなくても、卵子凍結であれば可能な場合もあります。

若いうちに卵子を凍結保存しておくと、将来の体外受精の成功確率が高くなる可能性があるのをご存知でしょうか。

※自社HPより内容抜粋(https://gracebank.jp/guide/#p_guide03

卵子が若ければ40代の体外受精による出産率は20代と大きく変わりません。(米CDC、2021)

若く妊孕性(妊娠する力)が高いうちに卵子を凍結保存しておくことで、将来年齢を重ねて子供がほしくなったときに、体外受精の成功率が高くなる可能性がでてきます。

AMH検査をした結果、卵子凍結を決めた体験談をご紹介します。

まとめ

バセドウ病は血液中の甲状腺ホルモンの量をコントロールし続けることが必要な病気です。

しかしコントロールが良好であれば、健康な妊婦さんと同様に出産することができます。

リスクを正しく理解した上で医師と相談を重ねて対応策を取っていきましょう。

しかし、そもそもバセドウ病は月経の異常を生じる可能性もあるため、妊娠を望むならば早めに、現状を知ることのできるAMH検査を行ったり、妊孕力の高い卵子を早めに凍結保管したりするのも選択肢として考えてみるのもいいでしょう。

皆様がご自身の赤ちゃんに会える日が来ることを応援しています。

監修者

名倉 優子 なぐら ゆうこ

日本産科婦人科学会専門医


グレイス杉山クリニックSHIBUYA (東京都渋谷区)

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