3月3日は日本では女の子の、すこやかな成長を願う桃の節句“ひな祭り”です。
世界では、3月は「女性史月間」にあたり、歴史上の出来事や社会の出来事に対して、女性の貢献を振り返る月になっています。
この時期に合わせて、女性に焦点を当てた多くの記事やレポートが出されていますが、今日は女性の健康をテクノロジーで解決する世界の「フェムテック」市場についてお伝えします。
2016年に生まれた「フェムテック」
「フェムテック」という言葉は、2016年に初めて作られました。
Female(女性)とTechnology(テクノロジー)を合わせた言葉で、デンマークの起業家、イダ・ティンさんが提唱したものです。
その頃はまだ小さな市場で、金融分野の解決に「フィンテック」、教育分野で「エドテック」といった言葉があったように、名前をつけることで新しいマーケットを作って、その存在感を上げようとした時代でした。
そこからわずか数年の間に、テクノロジーを使って女性の健康問題や悩みを解決するサービスや商品は、目に見えて増えてきました。
コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーは、2022年2月に最新の「フェムテック市場」のレポートを公開。
この調査によると、フェムテックの盛り上がりは加速していて、社会での認知がアップしているほか、フェムテックのスタートアップの数、そしてその資金調達の金額も急増しています。
拡大するフェムテック市場
フェムテックの現在の市場規模は、5億〜10億ドル(574億〜1140億円)と試算されています。(※テクノロジーに対応したフェムテック企業763社を分析。製薬や既存の医療機器、20年以上の歴史を持つ企業や、女性の健康に特化していない企業は除外)
生み出されるサービス・商品も様々で、月経にまつわる健康、骨盤と性の健康、妊婦・出産、不妊、更年期、避妊と多岐にわたって女性の体に起きる変化に対応しています。
その中でも、①妊娠の準備や妊婦の健康をサポートするもの、②月経などを管理するもの、③不妊治療におけるソリューションにサービスが集中していることが明らかになりました。(※グラフの中で最も色が濃くなっている部分)
企業が社員の福利厚生として提供する「不妊治療給付」を管理する「プロジニー(Progyny)」 は、2019年に10億ドルを超える評価額で上場し、現在の時価総額は約40億ドル(4592億円)になっています。
また、女性と家族の健康のためのオンライン診療を展開する「メイブン・クリニック(Maven Clinic)」は10億ドル以上の価値のある企業だと見られています。
生まれるスタートアップの種類
この分野で生まれているスタートアップの中には、すでにヘルスケア業界を大きく変えているものも目立ってきています。その一つが「診察の改善」です。
オンライン診療の「ティア(Tia)」、卵子凍結や不妊治療を行う「カインドボディ(kindbody)」などの革新的なクリニック、「ピルクラブ(The Pill Club)」のような消費者に処方箋をデリバリーするサービスです。
ピルをもらうために、わざわざ医師の診察を受けなければならかなったり、卵子凍結への金額を30%ほど抑えたサービスは、女性の負担や、煩わしい手間を一気に省くことに成功しました。
またセルフケアも、より簡単にできるようになっています。自宅でホルモン検査やアレルギー検査ができる「エヴァリーウェル(Everlywell)」や、卵巣の年齢を血液から測ることができる「モダン・ファティリティ(Modern Fertility)」は、女性が自分の体のデータを、より管理しやすくしました。
月経の吸収ショーツを開発する「シンクス(Thinx)」、性の健康の改善にとりくむ「ロージー・ウェルネス(Rosy Wellness)」、骨盤底筋をトレーニングする「膣トレ」の「エルビー(Elvie)」、更年期障害の診断とコミュニティを作る「エレクトラ・ヘルス(Elektra Health)」など、これまでタブー視されてきたトピックに正面から取り組む企業も出てきています。
また、文化や人種の違いに着目したソリューションも生まれています。
東アフリカの低・中所得国の女性の健康・美容のEコマース「カシャ(Kasha)」やLGBTQ+の人々を対象にオンライン診療と処方箋も出す「FOLX Health」、黒人の女性向けのオンライン診断の「ヘルス・イン・ハー・HUE(Health in Her HUE )」といった企業も今後、注目を集めそうです。